船出する日銀植田丸航路情勢
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は、日銀の新体制についての紹介と駐豪銀行トップに求められる資質について述べた4月27日付の記事を紹介する。
日銀の新体制が始動し、初めての政策決定会合が開かれている。日銀の新総裁には植田和男氏、副総裁には氷見野良三氏、内田真一氏が起用された。氷見野氏は元金融庁長官、内田氏は日銀理事を務めていた。氷見野氏は私と同年次。大蔵省当時の親交があるが、極めて温厚で学識が深い。
日銀総裁を含めて中央銀行トップに求められる資質は以下の3点。
第1は、高度の専門能力。金融政策、マクロ経済学の専門家であることが必要な資質である。
第2は、現実の経済・金融情勢を的確に把握する現実分析能力。優れた学者が高い現実分析能力を備えているとは限らない。中央銀行トップは現実の経済と対峙する。現実の経済金融変動について洞察する実学としての洞察能力が求められる。
中央銀行出身の理論的エキスパートであっても、現実の情勢判断を誤り、時期尚早の金融引き締め策を強行して失敗した中央銀行トップも少なからず存在する。
第3は、市場との対話、政治過程との対応における高度な対応能力。金融政策運営には政治からの強い風圧がかかる。政治からの風圧で政策対応を誤った中央銀行トップは枚挙に暇がない。
中央銀行トップは金融市場と適切な対話能力をもつことを求められる。金融市場に的確なメッセージを提供し、政策変化を円滑に金融市場に吸収させることが重要。「サプライズ」が必要な局面がないとはいえないが、いたずらに金融市場を混乱に陥れることは回避されるべきだ。
とりわけ、金融市場が警戒する政策運営については、比較的早い段階で方向を金融市場に示唆して、現実の政策実行の段階での市場大波乱を回避することが望ましい。あらかじめ金融市場に金融政策運営の見通しに関する必要な情報を提供することを「フォワード・ガイダンス」と表現されるが、この提供を円滑に実行することが重要になる。
この基準に照らして考えるとき、3つの要件を完全に満たしているのが米国FRBのイエレン前議長やパウエル現議長。適切なFRB議長人事が米国経済運営を支えてきた点での両者の貢献度は極めて大きい。
日本においてこの3つの要件を満たしていた中央銀行トップの筆頭は福井俊彦氏。白川方明氏は高度な専門能力を有し、優れた現実分析能力を有していたが、政治からの風圧をかわす点で万全とはいえない面があった。
過去の経過を見るならば、日銀出身の総裁が成功し、大蔵省出身の総裁が失敗したとは言い切れない。日銀出身の佐々木直氏がインフレへの対応に失敗し、後任の大蔵省出身の森永貞一郎氏がインフレへの対応に成功を収めたことは特記に値する。
※続きは4月27日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「船出する日銀植田丸航路情勢」で。
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