波紋が広がっている韓国株価操作事件（前）

日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

市場経済の要は資本市場

    株式会社は株式を市場で自由に譲渡できるようにすることによって、不特定多数の投資家から資金を集め、事業を運営する。一方、投資家は事業に必要な資金を提供する代わりに、その見返りとして配当を受けたり、株価の上昇によるキャピタルゲインを得たりして、利益を確保する。

　市場経済の要は資本市場。お金が供給されないと市場は機能しなくなる。株式市場はそのような意味において、一国の経済に欠かすことのできない最も重要なシステムと言っても過言ではない。韓国証券取引所では毎日約120兆ウォン以上の資金が取引されている。

　KOSPI市場の取引金額は1日約80兆ウォンで、KOSDAQ市場の取引金額は1日40兆ウォンほどである。株式取引はゼロサームゲームなので、誰かが稼ぐと、誰かは損をする。株式市場で勝つために、激しい攻防戦が毎日広げられている。

　ところが、財産上の利益を得る目的で、株価を吊り上げようとする勢力も株式市場には過去いろいろあった。ところが、資本市場の機能を麻痺させるこのような行為は、10年以下の懲役など、重罰に処せられることになる。

　しかし、それでも株価を人為的に操作して一儲けしようとする企ては止まっていない。韓国ではそのような人たちを「作戦勢力」と呼んでいるが、株価を吊り上げる資金は貸金業者の資金が使われたりした。不動産は投資の回収に長い時間を要する反面、株式の場合、早ければ数日内にも利益を出すこともできるので、貸金業者の資金は徐々に株式市場に流れてきた。

　株式投資の基本は安く買って高く売ることだが、それは口でいうほど簡単ではない。安く買ったとしても、高値で大量に売ろとしたら、売れないこともあるし、監督当局の厳しい監視の目もあって、簡単に株価が操作できるわけでもない。それで、韓国では資本金が少なく、売買で価格が変動しやすい中小企業の株が株価操作の対象になることが多い。

　実際株価操作にうまく成功すると、彼らには大きな利益が手に入ることになる。それで、株式市場では急に株価が変動するような異常な取引はないのか、常にモニタリングされている。しかし、それにも関わらず、株価操作は規模の大小の違いはあっても、常に存在している。

　株価のつり上げにつられて株を買った少額投資家は、勢力に株を売り浴びせられ、株価が暴落し、被害を見ることになる。株式市場において価格形成を人為的にゆがめる行為は、結果的に被害者を出すことになるので、処罰の対象になるが、それでもその誘惑にかられる人は多い。

　最近芸能人を巻き込んだ株価操作と疑われる事件があり、韓国では毎日マスコミを賑わしている。本人は株価操作については知らず投資し、被害を受けたと強く訴えているが、本当のことはこれから解明されるだろう。自分も被害者だというものの、株価操作に協力したのではないかという証言や証拠もいくつか出ている。

　今回の株価操作と関連のあるソウルガス、大成ホールディングス、善光などの3つの銘柄は、先月の24日から27日まで4日連続最安値を記録している。先週一週間だけで8つの銘柄の時価総額は何と8兆ウォンほど、消え、被害者が続出している。

（つづく）