2024年12月23日( 月 )

日本ゴルフツアー機構のクーデター劇の顛末 主役はABCマート創業者(前)

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 今春、男子ゴルフのプロツアーを統括している(一社)日本ゴルフツアー機構(JGTO)で内紛劇があった。

 ゴルフファンの注目を集めたのが、靴小売最大手エービーシー・マート(以下ABCマート)。男子ゴルフ界のスーパースターである青木功会長を追い落とすために、副会長でABCマートの創業者・三木正浩氏がクーデターを仕掛けたからだ。三木氏が退任したことでひとまず決着した。男子ゴルフ界を揺るがしたクーデター劇を振り返ってみよう。

「デイリー新潮」がスクープした
日本ゴルフ機構のクーデター劇

 『「青木功会長が泣き出してしまい・・・」日本ゴルフツアー機構で”クーデター”が、資産4,000億円の大富豪副会長と対立』

 『デイリー新潮』(23年3月1日付)が、こういう見出しの記事をスクープ報道した。

 〈2016年から日本ゴルフツアー機構(JGTO)の会長を務める、青木功氏(80)。就任以来、男子ゴルフ界の立て直しを行ってきた“救世主”ともいえる存在だが、副会長を務める「ABCマート」創業者によるクーデターが・・・。青木会長は周囲に辞任を示唆している。その原因は、副会長である三木正浩氏(67)にあるという〉

 JGTOの内情に詳しい、ベテランゴルフ記者はこう解説している。

 〈JGTOでは昨年来、会長の青木さんと、副会長の「ABCマート」創業者・三木さんの対立が深まっていました。2人の関係は今やもう修復不可能で、人を介さないと会話ができないほど。青木さんは周囲に“三木さんとはもう一緒にできない”“三木さんが辞めないなら自分が辞める”とこぼしています〉

 三木氏は、一代で靴の小売大手「ABCマート」を築いた新興財界人で、資産4,000億円を超える大富豪としても知られる。

谷原選手会長が三木氏を副会長に押し込む

 〈異変があったのは昨年1月、谷原秀人選手が選手会の会長に就任してからだという。谷原氏は三木氏を理事に入れ、副会長に就任させるよう強引に要求。同年3月、実際に三木氏は副会長に就任した〉
(前出『デイリー新潮』)

 当時の報道を調べてみた。ゴルフ専門動画サービス『ALBATV』(22年3月25日配信)は3月25日開催のJGTOの定時社員総会で、青木功会長の4期目の再任が決定したと報じた。女子人気に押されがちな男子ゴルフツアーの”人気復活”のためのキーマンになりそうな3名の新理事の名前があった。

 1人は副会長に就任した三木正浩氏。靴小売「ABCマート」の創業者で、現在最高顧問。佐藤信人広報担当理事はその経緯をこう説明する。

〈今年、谷原(秀人)選手が選手会長になり、選手会からの要望で三木さんを理事に入れてほしいと要望がありました〉

 三木副会長は、テレビ業界やゴルフ業界にさまざまなパイプをもっているという。

 〈男子ツアーをテレビの露出やニュースでもっと取り扱ってもらえるように、三木さんのパイプ、お力をお借りしたいと思っています〉

 三木副会長のほか、国内男子ツアーの「マイナビABCチャンピオンシップ」の冠スポンサーを務めるマイナビ会長・中川信行氏、国内女子ツアーの「アース・モンダミンカップ」の冠スポンサーを務めるアース製薬会長・大塚達也氏も新理事となった。

三木副会長は青木会長体制を攻撃

 JGTOは、三木氏に男子ツアーをもっと放映してくれるようテレビ局に働きかけることを期待したが、三木氏はJGTOの運営を問題にした。

 〈「副会長になるや、三木さんはJGTOの運営に批判的な言動を繰り返すようになったんです。それも、理事に直接ではなく、事務局のスタッフや選手に対してです。いわく“青木体制ではダメだ””自分に仕切らせたらツアーは5試合以上は増える”“俺の言うことを聞かないとクビだぞ””理事の人数が多すぎる”といった具合に」(ベテランのゴルフ記者)

 さらには、専務理事である上田昌孝氏を名指しで誹謗することもあり、青木会長は板挟みの状態になっていたのだ〉
(前出『デイリー新潮』)

 だが、三木氏が仕掛けたクーデターは不発で終わる。三木副会長による青木会長追い落としのクーデターが報じられると、男子ツアーのスポンサーが反発。スポンサーから降りる動きを見せる。

 三木氏の言動を問題視したJGTOの執行部は、2月22日に開く理事会で三木氏の解任議案を出す運びであったが、直前に三木氏が副会長と理事を辞任。かくして3月22日開催の社員総会で、青木会長が任期満了まで続投することで決着した。

    もとはといえば、女子ゴルフの人気が高まる一方で、男子ゴルフはジリ貧状態にあることが主因。このままで男子ツアー数が減り、生活が立ち行かなくなりそうな選手も出てきた。男子ツアーをいかにして女子ツアーの人気まで高めるかで、内紛が生じた。

 男子ゴルフの人気回復策や執行部と選手会との対立などの深刻な問題は何1つ解決していない。内紛が再燃するのは避けられないだろう。

【森村 和男】

(後)

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