2024年12月22日( 日 )

人類と世界の未来を左右する欧米投資ファンドのパワー(3)

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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

 NPO法人日本バイオベンチャー推進協会(JBDA; 理事長 松島綱治氏)が主催する第42回JBDAバイオベンチャーフォーラムが5月9日、東京大学(東京都文京区)で開催された。国際政治経済学者の浜田和幸氏が、「人類と世界の未来を左右する欧米投資ファンドのパワー」をテーマに同フォーラムで講演した。浜田氏の講演内容を紹介する。

ウクライナの有名な闇市場

国際政治経済学者 浜田和幸氏
国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

    ウクライナが厳しい状況に置かれているなか、ゼレンスキー大統領はイタリア、フランス、米国にリゾートマンションを購入しています。その購入費用をどうやって調達したのでしょうか。

 その1つとして挙げられるのが、ウクライナに有名な闇市場があることです。欧米から提供された武器やミサイルの半分以上は、ウクライナの闇市場を通して、中東やアフリカのテロリスト組織に流れています。ウクライナのミサイル開発技術は、北朝鮮のミサイル開発にも使われています。今まではあまり問題になりませんでしたが、米国議会でもメスを入れる動きに変わってきました。しかし真実はなかなか公になりません。

 ゼレンスキー大統領が闇市場で儲けることを後押ししているのは、ウクライナに影響力を行使しているブラックロックなどの米国企業です。日本人は人が良いため、ロシアが悪いという世論ですが、一方的な見方でしか現実を見ていません。世界の真実を見極める努力が求められています。

米国で民間の刑務所運営ビジネスが拡大

 米国では、約1億2,000万人の国民が今日や明日の食べるものに不自由するほどに、貧富の格差が進んでいます。また、2021年には、約4万8,000人の米国人が、銃が原因で死亡しました。しかし、銃の規制をしても効果がありません。銃のビジネスが利権を握り、米国議会にロビー活動をしているためです。

 米国では、民間の刑務所の運営ビジネスが急成長を遂げています。米国では、200万人以上が刑務所で服役中です。しかし国の刑務所は満杯で受入れができないため、民間の刑務所の運営会社が大きく伸びています。

 米国人が自分や家族、仲間の身を守るために銃が増えるという悪循環が起こっています。米国では、精神を病んでいる人が増えています。銃の乱射事件の多くが、精神異常が原因です。トヨタや日産、ホンダは防弾ガラス付の自動車を米国で販売しています。このような状況では、防弾ガラス付の自動車がなければ米国で生きていけません。「リスクをチャンスに変える」という考え方から、コロナ禍やウクライナ戦争の対応策を提供することはそれなりに意味のあることですが、米国は世界に誇る民主主義的な国の在り方から真逆の方向に進んでいます。

中国による米国企業の買収

 米国の有名企業は、中国企業に次々と買収されています。エジソンが創業したGEはハイアールに買収され、自動車メーカーのGMは上海汽車、IBMはレノボに買収されました。ヒルトンホテルグループや全米最大手のAMCシアターズも中国企業の傘下です。米国の経済は、中国の影響を抜きにしては語れません。

 シリコンバレー銀行などの地方銀行が次々と倒産しています。これらの倒産した銀行は、米国に進出している中国の企業に大半の資金を貸し出していました。世界最大級の米国投資ファンド、ブラックロックも中国と手を結んでいます。米国は空洞化が日に日に進んでおり、中国の技術や資金に依存しています。

 共和党も民主党も、中国から米国経済を守らなければいけないこと、中国は東シナ海で軍事的な脅威となっていること、中国はロシアと組んで米国に戦いを挑もうとしていることを主張しています。また、米国空軍のマイク・ミニハン大将は、2025年までに中国が台湾に軍事侵攻し、米中間で戦争が起きる可能性があるという認識を示しました。しかし、これらの発言は中国への対抗心をあおっているとしか思えません。

 米国の企業約100万社が中国でビジネスを展開しています。米国政府が中国を警戒して、米国企業に中国から撤退してほしいと言ってもまったく効果がありません。投資ファンドをはじめとする民間サイドには、米中の対立はどこ吹く風です。

 5月19日からG7広島サミットが開催されます。岸田首相は、広島にゆかりのある首相として世界平和を訴えると発言しています。しかし、米国、欧州、日本から構成されるG7がどれだけの力をもっているのかが疑問視されています。G7を構成する7カ国の人口やGDPをすべて合わせても、BRICKSの5カ国におよびません。南の国々が力をもってきています。

 米国は、岸田首相をおだてて、平和を守るには抑止力が必要だから米国の武器をもっと購入しなさいと促しています。このように軍需産業に資金を流す働きかけをしているのが、ブラックロックなどの投資ファンドです。

(つづく)

【文・構成:石井 ゆかり】


<プロフィール>
浜田 和幸
(はまだ・かずゆき)
 1953年、鳥取県生まれ。国際政治経済学者。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。国際未来科学研究所主宰。清華大学国家戦略研究院在外研究員。新日本製鐵、米国戦略国際問題研究所、議会調査局を経て、参議院議員に当選。総務大臣政務官、外務大臣政務官、2020東京オリンピック招致委員などを歴任。アルベルト・シュバイツアー国際貢献賞受賞(オーストリア・シュバイツアー協会)。アラブ諸国友好功労賞受賞(在京アラブ外交団)。日中ブロックチェーン協会理事長。著書多数。最新作は『世界のトップを操る“ディープレディ”たち!』(ワック)。趣味の書道を通じて日中の文化芸術交流に尽力。全日中展顧問。23年5月、旭日中綬章を受賞。

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