女川原発の再稼働差し止め訴訟、住民の訴えを認めず
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女川原発の広域避難計画に不備
東北電力の女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働に関して、原告である地元の石巻市住民17名が、原発に重大な事故が起きたときの「広域避難計画」に実効性がないとして差し止めを求めていた裁判について、仙台地方裁判所は5月24日、原告の住民の訴えを棄却するという判決を出した。原告側の住民は訴えを認めない判決は不当であるとして控訴し、上級裁判所に再審査を求めることを発表している。
原告である地元住民は、石巻市が策定した広域避難計画に不備があり、女川原発の事故が起こったときに地域住民が計画通りに避難できないことを争点にして、女川原発の再稼働の差し止めを求めてきた。
原告は地元住民に危険がおよぶリスクを指摘
広域避難計画とは、2011年の福島第一原発事故を機に、原発から30km圏内にある自治体に策定が義務付けられたもので、原発事故が起こった際の住民の避難先や避難経路、避難手段などを定めるように規定されている。
石巻市は、女川原発で事故が起こった際の発電所から30km圏内の住民の避難計画を発表している。石巻市の広域避難計画によると、原発から30km圏内の避難対象となる住民は約15万人。5km圏内の住民は直ちに避難し、5~30km圏内の住民は屋内退避の後に避難する。基本的には自家用車で避難し、自家用車を利用できない場合は自治体などが確保した避難搬送用バスなどを用いるとしている。
しかし、普段ならまったく渋滞しない道路でも、大地震や原発事故などの災害が起こって避難指示が出ると、道路が車で渋滞するなどの事態が発生する。このことから原告の地元住民は、自治体の計画通りには近隣住民が30km圏内から脱出することはできず、放射能で被爆し身体に危険がおよぶ可能性があるとして、広域避難計画の不備を指摘してきた。また、自家用車が利用できない住民は、避難用のバスが確保されないなどにより、避難所まですぐにたどり着けない可能性があるという。
一方、仙台地裁は今回の判決で、広域避難計画の実効性に関して、住民側が重大な(原発)事故が起こる具体的な危険性を立証していないとして、原発の再稼働の危険性を主張する地元住民の訴えを退けた。今回の裁判では、住民側は避難計画の不備を争点に訴えてきた。しかし、仙台地裁が判決で広域避難計画の内容に触れなかったことは問題だ。
水戸地裁は、21年に避難計画不備を理由に運転差し止めを認める
女川原発2号機の再稼働に関しては、地元では反対の声が多い。再稼働に関する県民投票を実現するために18年に行われた署名活動では、制度上必要とされる数を大幅に上回る11万筆の署名が集まっている。19年3月15日に宮城県議会で行われた県民投票条例案の採決の結果は否決となったものの、署名活動の結果は、多くの地元住民が再稼働を望んでいないことを表している。
一方、東海第二原発(茨城県)の再稼働の問題では、水戸地裁が21年3月に避難計画の不備を理由として運転差し止めを求める原告の訴えを認めた。女川原発は20年11月に宮城県知事らが再稼働に合意しており、今回の地元住民による裁判が原発の再稼働を止める砦になるだろう。
【石井 ゆかり】
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