2024年12月26日( 木 )

次なる時代を見据え、最も重視するのは「人材」

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(株)大藪組
代表取締役社長 小川 海志郎 氏

(株)大藪組

 今期、創業134周年を迎える(株)大藪組。老健施設や医療機関、教育機関などの民間建築を主体に、災害復旧工事や河川維持工事などの土木工事も手がける筑後地区でトップクラスのゼネコン。2021年6月に代表取締役社長に就任した小川海志郎氏に人材確保への取り組みや今後の展望について話を聞いた。

情報発信に力を入れ、建設業界のイメージ改善を図る

 ──代表取締役社長に就任され2年が経ちました。

 小川海志郎氏(以下、小川) 先代の石井正氏から2021年6月に代表取締役社長を引き継ぎ、私で8代目の代表となります。今期、創業134周年という長い歴史があり、基本的には先々代、先代の経営方針を踏襲しています。そのなかでも「人」を最も重視しています。現在、人手不足が深刻化しているなか、新入社員の獲得だけでなく、現在働いている社員を大切にしたいと考えています。

 社員教育についても、月に1回の全社員会議や部署ごとの研修などを定期的に行っています。また、建設業協会主催の研修会や消防署での救急救命の研修にも積極的に参加しています。多くの社員が資格取得への意欲をもっており、当社が建築工事と土木工事を手がけていることは、若手社員にとって魅力的な要素となっています。建築の資格を取得した後には土木の資格を取得したいという希望をもち、自身が活躍できる領域を広げようとする意欲を感じます。

 ──テレビCMが注目されていますね。

 小川 いまだに建設業界は3K(キツイ、汚い、危険)のイメージが根強く残っています。私は、そのイメージを変えたいという強い思いをもっています。近年、九州では工業高校生の大学や専門学校への進学率が50%を超えており、卒業生の採用が難しくなっています。この課題に対処するため、学生の保護者や高校・専門学校の先生方にアピールする1つの手段として活用しています。学生はもちろん、彼らを支える保護者や先生方に興味をもっていただき、安心して当社を勧めてもらえるようにと考えています。また、21年11月からは当社のメディア広報企画課が新たなサイト活動を開始し、社内の情報や現場レポート、分譲地販売会の開催通知、先輩社員のインタビューなどをブログやYouTubeで配信し、社内外に向けての情報発信にも力を入れています。

 ──24年4月から建設業にも時間外労働の罰則付き上限規制が適用されます。

 小川 働き方改革への対応は準備を進めています。今年6月から年間休日を100日確保するようにしました。これまでは88日だったため、そこで敬遠される方もいたのではないかと思います。求人票でも競争力のある基盤を整えました。また、新入社員の採用も大事ですが、同様に、現在の社員の定着も非常に大事です。今までは1日10~13時間働いていた人が、7.5時間勤務になると、それを補うためにはやはり人員が不可欠です。そのためにも、労働環境のさらなる向上に努めていきます。

女性社員の活躍に期待 職人も認めるオーヤブ女子

(株)大藪組 代表取締役社長 小川 海志郎 氏
(株)大藪組
代表取締役社長 小川 海志郎 氏

    ──貴社は積極的な女性社員の雇用を進めておられます。

 小川 先述の通り今期で134周年を迎えますが、過去、100年史を作成する際には男性社員と女性社員の割合を半々にしようという話が出ていました。100周年記念事業として、現在の本社社屋を新築した際には、女性専用のシャワー室やロッカー室などを設けました。先々代のころから女性社員の獲得には力を入れてきましたが、なかなか難しく、現在全社員71名のうち女性社員は17名で約4分の1です。

 ──オーヤブ女子という名称が聞こえてきます。

 小川 当社では、事務職のほか、営業や設計、現場監督から施工管理、コーディネートなど技術系でも多くの女性社員が活躍しています。男性中心の建設業界のなかで、女性ならではの柔軟な対応力や創意工夫、きめ細やかな気配りで、同業他社からも高い評価をいただいています。現場監督として招集依頼がかかることもあります。

 また、以前から女性社員が活躍できるように、育児休暇の取得など女性社員が働きやすい環境整備に力を注いできました。そのこともあり、育児休暇後に職場復帰していただく方も少なくありません。今後も、女性社員がキャリアアップできる機会を提供し、彼女たちの活躍を支援していく考えです。

持続可能な会社を目指し、次なる100年へ

 ──150周年、200周年に向けて、今後の大藪組についてお聞かせください。

 小川 これからの企業には、社会貢献および環境への配慮が求められていると考えています。大雨による水害などの自然災害が頻発している近年において、緊急支援活動は我々建設業がはたすべき社会的役割の1つと捉えています。ほかにもSDGsに資するさまざまな取り組みも行っています。たとえば、ジェンダー平等の実現や資格取得支援、資格手当の支給などといった社員への取り組みや、使用済み切手の寄付や筑後市奨学金への寄付など社会への貢献活動も行っています。環境に対しては、本社屋上と自社ビルに太陽光パネルの設置などを講じ、21年には環境マネジメントシステムISO14001認証を取得しました。また、4月14日に福岡県が初となるESG債(グリーンボンド)を発行することを発表しましたが、地球温暖化対策実行計画に基づく脱炭素化の取り組みについて、当社も賛同し参加をいたします。

 しかし、これらの取り組みには、「人」が不可欠だと考えています。持続可能な開発目標に向けて取り組むためには、会社が継続して存在し続けることが必要です。人員を増やし、受注高を拡大していくことでやっと現状維持が保てると考えています。そのためにも、建設業界のイメージを変えるために、積極的にアピールを続けていく予定です。

【内山 義之】

※ESG債(グリーンボンド)
 福岡県では、地球温暖化対策実行計画において、2050年までに温室効果ガス排出の実質ゼロを目指し、30年度の温室効果ガス排出量を、13年度と比べ46%削減する目標を掲げている。県、市町村、事業者、県民が一体となった脱炭素化の取り組みを進めており、そのための資金調達として発行する。発行額は200億円(予定)。 ^


<COMPANY INFORMATION>
代 表:小川 海志郎ほか2名
所在地:福岡県筑後市長浜2043-1
設 立:1945年12月
資本金:5,000万円
売上高:(22/5)57億2,459万円
URL:https://oh-yabu.co.jp/


小川 海志郎(おがわ・かいしろう)
1969年6月生まれ、福岡県八女市出身。八女高校、西南学院大学卒。99年に(株)大藪組に入社。2020年6月に代表取締役副社長に就任。21年6月に代表取締役社長に就任した。趣味は読書など。