2024年11月05日( 火 )

相次ぐアメリカの銀行破綻:SBI新生銀行の未来は?(中)

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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸

ニューヨーク イメージ    住む世界は違っていますが、ノーベル平和賞も受賞したヘンリー・キッシンジャー博士はさる5月27日に100歳の誕生日を迎え、ニューヨークで盛大な祝賀会が開かれたばかりです。ドイツ生まれで、ナチスの迫害を逃れてアメリカに移住し、アメリカ国籍を取得し、歴代の大統領の外交指南役として活躍。あまり知られていませんが、ホワイトハウスや政府とのコネを生かしたコンサル・ビジネスにおいては、誰も真似できない「キッシンジャー王国」を築いています。

 ニューヨークでも活躍したことのある北尾社長にとって、「自信をもって、わが道を進み、人知れず大富豪の仲間入りする」というキッシンジャー流の生き方は、大いに刺激材料となっているに違いありません。北尾社長の口癖は「強いリーダーシップが企業を成長させ、持続させることになる。トップの志は利己的なものを排し、公に仕える気概を大切にすること。他人の批判など気にしている暇はない」。

 そのうえで、「正しい倫理観」を標ぼうし、「儲かるから事業を行うわけではない。それをすることが社会正義に照らして正しいと自信をもって取り組めるかが鍵だ」との自説を繰り返しています。その延長線上で、新たな技術への関心を絶やさず、インターネット、バイオテクノロジー、AIなどを活用した新産業の創造、育成にも熱心に向き合っているようです。

 とはいえ、人間である限り、不老不死はもとより万能ということはありないこと。最近の国際情勢の不安定要因となっている「ロシアによるウクライナ侵攻」についても、北尾社長は大胆な発言を繰り出していますが、その現状認識には疑問符が付くものも多々あります。

 たとえば、SBIグループはロシア国内に「SBIBank」と称する商業銀行を保有しています。そこで、ロシアによるウクライナ侵攻の影響について問われると、「小さな銀行なので影響は極めて軽微だ」と応じています。

 また、国際銀行間の送金・決済システム「SWIFT」をめぐっては、仮想通貨リップルの運営に参画したときに「そもそもSWIFTに対する挑戦だった」とのエピソードを披露し、ロシアがSWIFTから排除されたことは問題視せず、「ロシアのみならず、中国へのけん制にもなる」との見方を披露。

 要は、欧米諸国がロシアや中国、はたまた北朝鮮に制裁を強化することがSBIにとってはプラス効果をもたらすと受け止めているわけです。そのうえで、プーチン大統領の人となりについても、突っ込んだ分析を加えています。「プーチンはどうかしちゃったのかな。的確な判断ができていないのではないか。心配になる。聞くところによると、これまでは自閉症やアスペルガー障害を患っていたようだが、このところはパーキンソン病になったらしい。本当のところは不明だが、いきなり戦争を仕掛けるとは尋常な沙汰とは思えない。このままでは、ロシア国内でも体制が崩壊する恐れがあるだろう」。

 これらはすべてアメリカ政府のプーチン評の受け売りとしか思えません。しかも、北尾氏は「ロシアが日本に北方領土4島を返還することはあり得ない。2島だって返ってこないだろう。日本に敵対するロシアに投資するのは危険極まりない。体制の転換を待つのがベストだろう」とも自説を強調。

 その一方で、北尾社長はロシア圏にあるウズベキスタンへの積極的な投資を展開しています。国営企業の民営化に舵を切ったウズベキスタンの長期計画を歓迎し、26年までに同国の金融市場に参入し、ウズベキスタン国営銀行や主要な民間金融機関への投資や買収を熱心に仕掛けているようです。すでに1,000社を超える国営企業が売りに出ており、SBIグループは選り取り見取りで触手を伸ばしています。

 北尾社長自らがウズベキスタンに乗り込み、情報、金融、医療分野のスタートアップ企業の選別に凄腕を発揮している模様。「ロシア国内の体制転換を待つ」と言いながら、実は、周辺国での有望株を見定め、本丸のロシア参入の機会を虎視眈々とうかがっていることは間違いありません。

(つづく)

浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
    国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。

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