相次ぐアメリカの銀行破綻:SBI新生銀行の未来は?(後)
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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸さて、借入金の上限引き上げ問題で、右往左往するアメリカですが、何とか与野党の合意ができつつあり、最悪のデフォルトは回避できそうですが、安心はできません。思い起こせば、2008年に証券大手のリーマン・ブラザーズが経営破綻し、世界的な金融危機が発生しました。「その再来になりかねない」と新たな懸念が世界に広がっています。
当然でしょうが、事態を重視した米財務省と連邦準備制度理事会(FRB)は「すべての預金を保護する」と発表しました。バイデン大統領も緊急声明を発表し「アメリカの金融システムは盤石だ」と強調。しかし、盤石なら連鎖倒産など起きないはず。背景にあるのはFRBの急速な利上げと言われています。市場金利が急上昇し、債権価格が急落したことは否めません。
実は、シリコンバレー銀行もシグネチャー銀行も融資先の大半は新興IT企業です。しかも、その大部分を占めているのは中国企業に他なりません。そのためか、中国系のメディアによれば、「中国のスタートアップ企業やベンチャーキャピタルの間ではパニックが起きている」との報道が相次いでいます。
言い換えれば、今回破綻したアメリカの銀行は米中間の金融橋渡しの役目を担っていたわけです。FRBが「預金の保護」という措置に踏み切ったのも、バイデン大統領が3期目に突入した中国の習近平国家主席との首脳会談に意欲を見せていることが影響したと思われます。
一方、水面下では中国との利害関係をめぐって民主党と共和党の間でせめぎ合いが続いています。バイデン大統領とすれば、アメリカ進出を加速させる中国のIT企業を救済するための措置を取らざるを得なかったのかも知れませんが、共和党からすれば「バイデン一家は中国マネーに毒されている」との立場を補強する新たな攻撃材料を手にしたことにもなりそうです。
富士山の地下のマグマと同じように、アメリカ政界の深層部でも「中国マグマ」が火を噴く可能性が高まっています。先に広島で開催されたG7サミットにも、バイデン大統領は対面での参加がぎりぎりまで危ぶまれていたものです。
バイデン政権は上限を外さなければ、アメリカは債務不履行(デフォルト)に陥りかねないと危機感を露にしました。他方、共和党は歳出削減を優先すべきで、現状のような無制限の借り入れを認めてしまえば、アメリカ経済は破綻し、世界から信用されなくなる、との立場です。
もし「デフォルト」となれば、信用不安が巻き起こり、アメリカの国債やドルの価値が失われることを意味します。そのため、世界の投資家の間では、ドルを手放し、金や銀、あるいはレアメタルや不動産など現物への乗り換えを加速する動きが見られようになってきました。北尾社長がロシアにもウズベキスタンにも目を光らせている理由も、そこにあります。何しろ、ロシアも中央アジア諸国もエネルギー資源大国ですから。
もちろん、アメリカがただちに国家破綻するわけではありませんが、アメリカの金融政策に不信感や不安感が広がり始めていることは間違いありません。アメリカの表向きの財政赤字は32兆ドルと言われていますが、実際には200兆ドルを突破している模様です。
連邦議会予算局の見通しでは、40年までに税収の100%が高齢者向けの社会福祉に向けられることになるとのこと。ということは、40年までにアメリカは国家破綻という危機的状況に直面するということに他なりません。
万が一、債務不履行に陥れば、アメリカ国内では連邦政府職員の給与が払えなくなり、福祉手当なども支払いがストップします。長期的にはアメリカ経済は景気後退の局面に陥り、その影響で失業率が上昇し、治安の悪化も加速するはずです。アメリカの天下は終わりを迎えるはず。
連銀は今後も金融引き締め策を取るでしょうが、この先にも継続しそうな財政ピンチを回避する方策が財務省保有の金の評価額を現在の1オンス42ドルから実勢価格の2,000ドルに変更することにあるとの見方が急浮上してきました。いずれにせよ、金価格が上昇する流れはまだまだ続くと思われます。北尾社長もそうした「ポスト・ドル時代」を見据え、「金やレアメタルの裏付けのあるデジタル通貨時代」の勝者を目指しているに違いありません。
そんななか、5月19日に中国の山東省で同国最大規模の金の鉱山が発見されたとの報道がありました。中国の古典をこよなく愛する北尾社長ですが、実は中国の公的機関である「中国投資協会」の戦略投資高級顧問に就任しています。北尾社長が次に姿を見せるのは山東省かも知れません。
(了)
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。法人名
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