フジテック騒動、外資ファンド「オアシス」の正体と目的(前)
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ちょうど1年前、エレベーター・エスカレーターの製造・メンテナンスの国内大手、フジテック(株)(滋賀県彦根市)の株主総会で突如勃発した創業家出身の内山高一氏(当時社長)と、大株主の投資ファンド「オアシス」との騒動。今年も来る6月21日の定時株主総会を控えて、騒動が再燃している。外資ファンドの狙いは一時的に株価を吊り上げての売却益狙いといわれるが、今回の「オアシス」の狙いもそれだけなのか。オアシスの正体とは何者なのか。外資ファンドの動きと複雑化する利害関係を探る。
創業家・内山氏vsオアシスの経緯おさらい
翌月にフジテックの株主総会を控えた2022年5月、突如、「PROTECT FUJITEC」というサイトが出現、創業家出身社長・内山氏に対するネガティブキャンペーンが始まった。サイトを立ち上げたのは、フジテックの株式を議決権ベースで17%超保有する最大株主で投資ファンドのオアシス・マネジメント・カンパニー(以下、オアシス)。
オアシスはPROTECT FUJITEC上で、内山氏が別途経営する会社ならびに内山氏の親族に対してフジテックから不当な利益供与にかかわる取引行為があったと主張、それに対してフジテック側は当初、「ガバナンスに問題はない」と回答していた。しかし、アメリカの議決権行使助言会社であるISSとグラスルイスもオアシスの主張に組するかたちで、6月の株主総会における内山氏の取締役再任案への反対を推奨した。
6月23日の株主総会では、旗色が悪いと見た内山氏側が予定されていた内山氏の取締役再任議案を総会の1時間前に急遽撤回。その後、内山氏は取締役でも執行役員でもない「会長」に就任した。
23年2月、オアシスの要求により臨時株主総会が開催。現職取締役3人が解任、1人は総会直前に辞任。一方、オアシス提案の取締役4人が選任された。3月28日、取締役会は内山氏の会長職の解任を決議した。
一方、内山氏側もFREE FUJITECというサイトを立ち上げて反撃を始める。4月25日、内山氏の会社でフジテックの議決権6%超を有する(株)ウチヤマ・インターナショナルが4月25日付けで株主提案を提出。社外取締役の総入替えによる経営の正常化を狙う。5月9日、内山氏は、昨年5月からのネガティブキャンペーンなどに対してオアシスなどを名誉棄損で提訴したと発表した。5月23日、現状ではオアシスの影響下にあるフジテック取締役会は、ウチヤマ・インターナショナルの株主提案に対して取締役会としてすべての議案への反対を表明した。
いよいよ迫る6月21日の株主総会を前に、両者は真っ向対立、ネット上での記事乱立を含めて争いは熾烈になっている。
オアシスの正体は?
オアシスは、香港を拠点とするヘッジファンド。法人登記はケイマン諸島。イスラエル人のセス・フィッシャー氏によって02年に設立された。香港の他、東京、テキサス州オースティンに拠点をもち、45名以上のプロフェッショナル職員を擁する。運用資産の大半を日本株に投資しているとされる。フィッシャー氏はニューヨークの正統派ユダヤ教のイェシーバー大学で政治学士を取得、その後、イスラエル空軍に入隊し諜報部隊に所属していたと見られる。
オアシスが日本企業に対する投資を始めたのは15年ころ、「日本版スチュワードシップ・コード」が導入され、「コーポレートガバナンス・コード」が策定された時期である。20年7月には、日本法人を東京に設立した。
(つづく)
【寺村朋輝】
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