韓国経済ウォッチ~激化する3次元フラッシュメモリ開発競争(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
フラッシュメモリとは、電源を切っても内容が保存される不揮発性のメモリのことである。DRAMは電源を切ると、情報が消えてしまうが、フラッシュメモリはDRAMのようにデータを失われることもなく、またハードディスクに比べて書き込みスピードも速いので、スマホ、デジカメ、タブレットなどの携帯情報端末には欠かせない存在になっている。
フラッシュメモリのメリットは、既存の記憶装置であるHDD(ハードディスクドライブ)に比べて読み書きスピードが早いことと、軽量で発熱が少なく、衝撃に強い点などである。
フラッシュメモリのデメリットとしては、寿命に限界があって、データ保存期間に制限があることと、まだ価格が高いことである。
フラッシュメモリが一番多く使われている製品は、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)とUSBメモリなどである。SSDとは、最近パソコンでHDDの代わりに使われているストレージである。SSDは標準のHDDより約30%起動時間が短く、静かなのが特徴である。このような特徴を持っているフラッシュメモリであるが、フラッシュメモリには2種類ある。回路構造が直列である「NAND型フラッシュメモリ」と、回路が並列構造である「NOR型フラッシュメモリ」である。NAND型フラッシュメモリは価格とデータの書き込みが重視される場合に多く使われて、NOR型フラッシュメモリはファームウェアのように読み出しに重点が置かれている用途に使われることが多い。
NAND型フラッシュの世界的なメーカーとしては、サムスン電子(韓国)、東芝(日本)、サンディスク(米国)、マイクロン(米国)、SKハイニックス(韓国)などがある。フラッシュメモリを大容量化するために、セルを微細化する技術の競争が繰り広げられていたが、微細化ではこれ以上大容量化が難しいということがわかってきた。半導体の世界では、10ナノの微細工程があるほどだ。しかし、微細化していくと、セルとセルが近すぎて干渉現象が起こり、セルが不安定になったり、データの読み間違いが発生するようになっているとのことだ。
サムスン電子は、微細化の技術の限度を乗り越えるため、研究開発を重ねた結果垂直構造(Vertical NAND)の3次元NAND型フラッシュメモリの開発および生産に、世界で初めて成功した。この開発に、サムスン電子は今までどの開発よりも多くの人材と長い開発期間をかけたらしい。サムスン電子は2013年に、世界で初めて3次元フラッシュメモリの開発に成功している。従来のフラッシュメモリを開発する方法から発想を変えて、回路を積み上げる方法をとったのだ。以前のフラッシュメモリを平屋だとしたら、3次元NAND型フラッシュメモリは48階建てのマンションのようなものだ。マンションの場合、同じ土地面積に多くの人が住めるように、3次元フラッシュメモリも同じ面積に大容量のデータが保存できるという原理である。
3次元NAND型フラッシュメモリは、大容量の実現だけでなく、既存のNAND型フラッシュメモリに比べて電力消費量においても約40%少なくなっている。それに、フラッシュメモリの弱点の1つである寿命も、最大で10倍長くなった。さらに、データの書き込み速度まで2倍ほど早くなった。同じ容量を実現するのに、材料(ウェハー)も半分で済むようになり、原価コストを下げている。
今後、3次元フラッシュメモリは高速サーバなどに採用が見込まれていると、サムスン電子では明らかにしている。(つづく)
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