「人材育成」から「人材確保」へ 技能実習制度の見直し
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技能実習制度は、途上国に技術や知識を伝える目的で1993年に導入された制度だ。しかし、現在の技能実習制度の目的と実態は、乖離していることが指摘されている。「外国人が低賃金で働かされる」「外国人実習生に対する暴力や賃金未払い」「来日を斡旋する悪質な業者に、実習生が高額の借金を背負わされる」「劣悪な労働条件などを理由に逃げることがないように、職場などにパスポートを取り上げられる」──こういった問題が、制度の維持を困難にしているのだ。5月11日、法務大臣に提出された「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」の中間報告書についてまとめた。
技能実習制度の廃止、新たな制度に移行へ
2022年12月から7回にわたり開催された政府の有識者会議での議論を踏まえ、「外国人技能実習制度を廃止し新たな制度への移行を求める」中間報告が5月11日、関係閣僚会議の共同議長である法務大臣に提出された。
新たな制度は、人材育成だけではなく人材確保を主な目的とし、少子高齢化による労働者不足に対応する狙いがある。会議では、「実態に合わせて廃止したうえで、国内産業の人材確保の制度として再出発することが必要だ」などの意見が出た。また、これまでは原則できなかった「転籍」といわれる勤務先企業の変更も従来に比べて緩和し、一定程度認めるとしている。一部の委員からは、「一般的な労働者と同様に自由な転職を認めるべき」という意見が出る一方で、「都市部に人材が偏るのでは。地方を重視してもらわないと困る」「仮に転籍が自由になった場合に、イニシャルコストの問題が現状のままでは企業側は受け入れ難い」などの意見が出た。
今秋には中間報告書で示した検討の方向性に沿って、具体的な制度設計について議論を行ったうえで、最終報告を政府に提出するとしている。政府は、早ければ24年の通常国会での法改正を目指すという。
在留期限迫る特定技能1号、永住可能な特定技能2号へ
19年に開始された特定技能制度では、「日本人の無資格者と同等」の給与水準が示されたことに加え、コロナ禍による帰国困難も重なり、多くの技能実習生が特定技能に移行した。
特定技能の「特定技能1号」と「特定技能2号」は、外国人労働者の受入拡大を目的として、19年に創設された在留資格だ。「特定技能1号」は、介護や農業、自動車整備分野などの12分野、在留期間は通算5年間と定められている。「特定技能2号」は、建設と造船・船舶工業の2分野のみで、資格取得者には熟練した技能が求められる。在留期間に制限はなく、更新することで事実上の永住が可能となり、家族を呼び寄せることもできる資格だが、中間報告では、特定技能2号についても対象分野の追加を検討すべきだとしている。
日本は少子高齢化が進み、慢性的な人手不足に直面している。今回見直しが検討された大きな理由は、特定技能1号(在留期間5年間)で働く多くの外国人労働者が、24年4月以降に在留期限を迎えるため、特定業種での労働者不足が深刻化する恐れがあるからだ。
日本で働きたいという外国人を安定的に受け入れるためには、「外国人に日本で働いてみたいと感じてもらえること」「日本で得た経験や知識、スキルを生かせること」「経済的にも十分な報酬を得て満足を得られていること」といったことが必要となる。22年末時点で、在留資格を持つ外国人は307万5,213人で、そのうち技能実習生は32万4,940人(10.6%)。特定技能1号は13万915人(23年3月末は15万4,864人)、特定技能2号は8人(同11人)と、特定技能2号の資格取得者は圧倒的に少なく、多くが最長5年までしか就労が認められない特定技能1号となっている(出典:出入国在留管理庁)。
最終報告書の取りまとめに向けて、人材確保を目的とする新たな制度と特定技能制度において、国内の人手不足状況に対して的確に対応するために、労使団体などのさまざまな関係者の意見やエビデンスを踏まえつつ判断がされる仕組みとするなど、透明性や予見可能性を高める方向で具体的に議論していくこととするとしている。
【内山 義之】
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