「品質」「安心安全」「地元」にこだわる100年企業 5代目社長によるリーダーシップ育成論とは
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有澤建設(株)
手がける物件はクリニックから住居まで
制限を特長に変えるオーダーメイド建築創業107年を迎えた有澤建設(株)が掲げるモットーは、「品質へのこだわり」「安心・安全へのこだわり」「地元へのこだわり」の3つ。同社では、良質な建物を提供するため、少しの妥協も許さないというプライドが社員に根付いており、それが顧客からの高い評価につながっている。
有澤建設が手がける建築物は、店舗ビルやクリニックビル、保育園のほか、工場やオフィスビル、賃貸マンション、分譲マンションと幅広い。こういった用途の異なる建築物を毎年のように竣工できるのが、設計施工も手がける同社の強みとなっている。オーダーメイドに強みがあるといってもいいだろう。
この点について、同社の5代目社長・木下英資氏は次のように話す。「敷地の形状や方角、法令上の制限など、物件ごとに異なる条件を生かした提案を心がけています。見ようによっては弱点となる制限が、工夫次第でその物件にしか出せない特長となる可能性もあります。もちろん、請負の範疇を超えないように気をつけていますが、お客さまの求めるものをかたちにできるように、設計や工務はもちろん、営業や事務スタッフ全員で知恵を出し合っています」。
協力業者との連携にも十分に気を配る。それをうかがわせるのが、現場から挙がる声だ。「こだわりが強くて難航しそうな案件でも柔軟に、迅速に対応してくれる」「毎日の工程管理をしっかりとしてくれるので働きやすい」「無理難題は言わない。変更や追加工事にも嫌な顔をせずに対応してくれる」「同じ立ち位置で接してくれるので本音で話ができる」など、関係者への配慮が徹底されていることが紹介やリピートにつながっている。施主からの要望にも柔軟に対応できるのは、協力業者と信頼関係をしっかりと構築できているともいえよう。
建設業界の「3K」イメージ払拭へ
「っぽくない」ショートムービー制作「事業や技能の継承」「若年層の人材確保」などの課題が顕在化する建設業界に身を置く同社では、業界につきまとう「3K(きつい、汚い、危険)」のイメージ刷新のため、知人などを頼ってYouTube動画の制作を行った。「3Kの本当の意味って知ってる?」というタイトルで制作されたショートムービーには、「有澤建設」も「建設業」も出てこない。第一線で活躍する監督や俳優が参加し、まるで映画の予告編のようにつくり込まれた高いクオリティが特徴となっている。木下社長は、「福岡のゼネコンが面白い動画をつくることで、業界のイメージ向上に少しでもつながれば」としながらも、「イメージも大事ですが、待遇向上が最優先だと思っています。『大手じゃないから』と言い訳せず、まずは当社内で実現してまいります」と続けた。補助金(J-LOD※)を受けて制作されたこの動画は、令和2年度の採択事例としても選出された。
※企業や地方公共団体等のブランディングのために、自社等の姿勢や理念に対する顧客の共感を呼ぶストーリー性のある映像(ブランデッドコンテンツ)を制作する事業について、映像制作・発信、効果検証などに必要な経費の一部を支援するもの。
潜在ニーズを正確に捉える人材育成へ
高校生と取り組む産学連携プロジェクト同社ではSDGsにも積極的に取り組んでいる。本社で使用する電力を100%自然由来エネルギーに切り替えるなど、地道なSDGs推進活動を続けてきた。さらに特筆すべきは、学生との連携プロジェクトだ。地域の課題を考えた高校生が、地域に根付いた企業を訪問し解決策を探すという、探求型フィールドスタディが高校の授業として行われているが、有澤建設は受け入れ企業として2020年から参加。21年は地元の高校7校を受け入れ、建設業のサプライチェーンに関する座学だけでなく、実際の工事現場を現場監督の解説付きで見学するなどの取り組みを行っている。
そのほかにも、マンションリノベーション研修では、平尾地区の管理物件を対象に、学生と有澤建設選抜メンバーがリノベーションの提案を行ったほか、九州産業大学からインターンシップを受け入れ、現場体験や竣工物件めぐり、営業の企画提案から受注、着工の流れを説明するなど、学生たちとの接点づくりにも注力している。
産学連携プロジェクトは、自分自身の意思をもち、顧客の潜在的なニーズを正確に捉える人材を育てる効果もあるようだ。「学生ならではのフレッシュな発想は、社員たちに良い刺激を与えてくれると思います。SDGsに関しても長期的に社内に浸透させていきたいと考えていますので、こういった取り組みで社員たちから自発的に意見が出るようになれば」(木下社長)とプロジェクトの狙いについて話す。さらに「基本的に私は報告を受けるだけで口を挟まないようにしています。それが学生や社員たちの成長につながると考えています」(木下社長)と言い、人材育成への効果も期待しているようだ。
有澤建設を「会社」に 10年かけて結実も間近
こういった取り組みは、「有澤建設を『会社』にすることにこだわってきた」という木下社長の組織力強化策でもある。木下社長は、ワンマン社長がいなくなったら、会社が回らなくなるような組織であってはならないという思いから、10年の社長就任以来、人材育成を目的に社内の権限移譲、そして社員が働きやすい環境を整えてきた。もちろん、円滑な人材育成のためでもある。木下社長は、「正解がわからない時代だからこそ主体的に考え、道なき道を開拓し組織を導くリーダーシップが必要です。それは社員全員がもつべきだと考えています」と話す。SDGsや産学連携といった正解がわかりにくいことに取り組むことで、同社の自主性が育まれていったようだ。
10年8月期に18億円だった同社の売上高は、13年8月期には28億円、16年8月期には56億円にまで増加。その後は安定して50億円以上の売上高を計上する体制となった。先述の「制限を特長に変えるオーダーメイド建築」とそれをかたちにする「徹底した顧客目線」「社員の自主性」が、有澤建設を「会社」にしていったといってもいいだろう。
木下社長は最後に、次代の有澤建設についても話してくれた。「20~30年後の道筋をつけるのが私の役目。そのために、社内体制を整え、強くするために権限移譲を進めてきました。次は100億円という壁を超えていきたい。次の世代にどうバトンタッチしていくべきか、この10年考え続けてきましたが、6代目社長には有澤建設をもう一皮剥けさせてくれる人材に担ってほしいと考えています」。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:木下 英資
所在地:福岡市博多区博多駅南4-4-12
設 立:1967年9月
資本金:9,000万円
TEL:092-433-1811
URL:https://arisawa.jp<RECRUIT>
募集職種:建築施工管理職
応募資格:短大/専門/大学 卒業見込みの方
問合せ先:092-433-1811
<プロフィール>
木下 英資(きのした・えいすけ)
1971年7月、福岡県生まれ。95年に早稲田大学を卒業後、西日本旅客鉄道(株)(JR西日本)に入社。2000年10月に有澤建設(株)に取締役社長室長として入社。05年に常務取締役などを経て、10年10月に代表取締役社長に就任した。趣味はゴルフ。法人名
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