2024年11月23日( 土 )

時代の変化に対応した技術革新を生かして、人と人との絆を強くする企業を目指す

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(株)ウチヤマホールディングス

地域に根差した介護事業展開

(株)ウチヤマホールディングス 山本武博社長
(株)ウチヤマホールディングス
山本 武博 社長

    (株)ウチヤマホールディングスは1971年創業。現会長・内山文治氏が内山ビル(株)(現(株)ボナー)を設立したのが始まりだ。2014年には東証一部への上場をはたした。創業から50周年の節目となる21年に山本武博氏が2代目社長に就任した。現在、介護(121施設)、カラオケ(80店)、飲食(10店)を全国に展開している。グループの柱となっているカラオケ部門の「コロッケ倶楽部」は多くの人が利用したことがあるだろう。

 03年から始めた介護事業では、「さわやか倶楽部」を展開し、北は北海道から南は大分県まで、介護付有料老人ホームや住宅型有料老人ホーム、さらには、デイサービスやショートステイも併設するなど、多様な介護ニーズにきめ細やかに対応している。

 当初は、ドミナント戦略を軸に地元福岡県を中心に積極的に介護付き有料老人ホームを展開していたが、06年の改正介護保険法の施行により、新規の施設開設に総量規制がかかるようになり、それ以降は全国の自治体による公募に応募するかたちで事業展開を進めていった。

 山本社長は「全国展開を始めた当初は、九州から施設長など責任者を各地の事業所に派遣していましたが、今は各地で施設長を育てています。また、地域に複数の施設を展開しており、異動も行うことでアンバランスな状況は改善されています」と語る。

    外国人人材の受け入れにも積極的で、インドネシアで日本語教育に特化した職業訓練校を開校し、技能実習生制度や特定技能制度を活用しての受け入れも行ってきた。22年8月に特定技能外国人材の支援業務の委託を受けることができる登録支援機関として出入国在留管理庁長官の登録も受け、さらに同年12月に「有料職業紹介事業」の許可を取得し、人材紹介業務を開始した。これによって同社のみならず、全国のさまざまな業種における人材不足を鑑み、登録支援機関として優秀な海外の若者が日本国内で円滑に働くことができるように支援が可能となった。

 山本社長社長は「さわやか倶楽部では、インドネシアに合弁会社『PT・Sawayaka Fujindo Indonesia』を18年7月に設立し、ジャカルタに全寮制の学校を開設して日本語教育を行っています。そこでの実習を終えた方々が来日して、各地の施設で働いてもらっています。コロナ禍の影響で一時的に入国ができず足止めされていたのがようやく緩和され、私たちの事業所だけで140人のインドネシア人を受け入れましたが、高齢者の方々に非常にやさしく、コミュニケーション能力が高いと評判が良いです」と手応えを語る。

 有料老人ホームなどでは、コロナ禍の行動制限解除にともない、家族との面会を再開させた。入居者の表情が家族との対面を通じて明るくなった。ただ、日常が戻り安心した一方で、やるせない思いも残った。「無症状で入院できなかった陽性の入居者の方が、約10日間の隔離生活中に嚥下障害となり、肺炎で亡くなったケースもありました。何かできなかったのかという痛恨の思いがあります」(山本社長)。

 昨年からは、増え続ける介護需要と供給量の需給バランスに対応した業界の取り組みを支援するべく、SOMPOホールディングス(株)と介護領域のデータを利用しての協業をスタートさせた。もともと九州工業大学などとの産学連携による介護職員のオペレーション効率化を17年から進めており、介護の質向上のための研究を行ってきた。その研究成果により、スマートフォンと行動センサーを組み合わせたアプリを開発し、手書きで記録していた書類がスマートフォンやタブレットで入力可能となった。以前は同一内容を複数の様式の書類に記載する必要があったが、スマホで入力すればクラウド上で保存され、職員間の共有も容易になった。この作業の効率化により入居者への対応時間の確保が可能となり、介護サービスの向上にもつながっている。

利用者の信頼感を高める動画発信

    昨年からYouTubeでの情報発信も開始し、入居者の出演も行っている。「テレビに出るのは一大イベントでしたが、今はYouTubeで手軽に発信できます。撮影した動画を活用し、公開も自分たちのペースで行うことができますし、編集も自社で行っています」(山本社長)。

 家族はYouTubeを通じて入居者の生活の様子を見ることができて安心し、職員に対する信頼感は格段に向上する。同社は方針として日本古来の人と人とのつながりを大切にしてきており、新しい技術を積極的に活用しながら人と人との絆を強めている。

 同社は高齢者施設だけでなく、障がい者支援事業も手がけており、障がいを持つ生徒・児童を対象とした放課後などデイサービス「さわやか愛の家」を展開している。6歳から18歳までの障がいを持つ子どもたちを対象とした通所支援事業で、放課後や休日、それぞれの個性や発達段階に応じた支援を行っている。現在、全国で25施設、福岡県では最多となる13施設を開設。全国の自治体から注目を集めている。

 現在の事業構成は介護70%、カラオケ20%強、飲食5%、不動産1%未満となっている。コロナ禍でグループの事業中核の1つであるカラオケや飲食事業は大きな影響を受けた。繁華街の店舗では2次会需要が大きいが、コロナ禍で1次会自体が自粛されたことによるものだ。

 「新型コロナによって、カラオケと飲食は大きな打撃を受けましたが、行動制限解除にともない、会社員を中心として回復に向かっています。ただ、リモートワークの定着もあり、夜の街に繰り出す層が減っていて、東京や沖縄などまだ回復が遅れている地域もあります」(山本社長)。

 こうした状況のなか、同社はどのような人材を求めているのか。山本社長は、「新卒、中途どちらも積極的に採用していますが、事業内容で年齢構成には違いがあります。カラオケや飲食は20代から30代が活躍しており、介護事業では30代から50代の方々が主力となっています。私は2代目ですが、現在20代の社員が20年後には会社の中心になるでしょう。現場経験を積んでもらいながら、将来、経営を担う幹部候補の育成に力を入れています」と語る。

 同社が創業以来手がけてきた事業はいずれも、人の生活に密着したものである。人と人とのコミュニケーションが希薄といわれる時代だからこそ、最先端の情報技術を駆使しながらも、ぬくもりを大切にした企業づくりを何よりも重視してきた。

 同社は北九州市に地盤をもちながら全国に事業展開する上場企業として、幅広く人材を育成し、活躍の場をさらに広げ、社会貢献できる企業を目指して今後も邁進していく。


<COMPANY INFORMATION> 
代 表:山本 武博
所在地:北九州市小倉北区熊本2-10-10
設 立:2006年10月
資本金:22億2,293万5,560円
TEL:093-551-0002
URL:http://www.uchiyama-gr.jp


<プロフィール> 
山本 武博
(やまもと・たけひろ)
1971年生まれ、山口県出身。北九州大学(現・北九州市立大学)卒業後、94年に(有)サイトウ(現・(株)ボナー)入社。ボナー専務、(株)ウチヤマホールディングス代表取締役専務、(株)さわやか倶楽部代表取締役専務などを経て、2021年4月にウチヤマホールディングスおよびさわやか倶楽部の代表取締役社長に就任。

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