「政治ってこれでいいの?国民が答える番だ」~フツーの若者の安保法案反対(後)
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安保法案は、その内容の違憲性、国民多数の反対、不十分な国会審議…。廃案か撤回しかないと、「結論」は出ている。
だが、若者たちの視線は、法案の問題点だけを見ているのではない。平和をめぐる根源的な問題を考えている。「FYM」に参加する大学4年生の興津ゆりえさん(22)はこう語っていた。「平和のつくり方が(私たちと安倍さんとは)違う。武力で平和は築けない。武力ではなく、対話で解決するのが正しい外交だと思う。人間だから、新しい平和のつくり方を実現できる」。
「FYM」の姉妹グループと言える「FYM kita9」の若者からも同じような発言が聞かれる。「FYM kita9」は、北九州市の若者有志でつくったもので、「憲法9条の内容を時の政権が解釈で勝手に変更するのは絶対許せない」と北九州の「九」と憲法9条の「9」を掛けて、民主主義、立憲主義の破壊に抗議する意味を込めている。スタートは4人。「若者の行動を東京だけのものにしたくない」という思いもあった。
「FYM kita9」のメンバーの1人、大学3年生の崔春海さん(20)は「他者を犠牲にした平和は本当の平和と言えるのか」と問いかける。
古代ローマ時代から続く根源的な問いに対する彼の答えは、こうだ。「今の政府は、特定の国を脅威だとして抑止力を持たないといけないと言っている。人間を記号に置き換えるのはあぶない。他者を記号としてとらえて、生身の人間として考えることをやめたとき、平和が崩れて、争いや戦争、差別が起きる。会ってみて、仲良くなって、疑問を語り合う、普通の国民のレベルで対話を広げ、下からの平和が重要だと僕は考えている」。若者たちの発言の多くが、国民主権という「人類普遍の原理」や、基本的人権という「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意」した日本国憲法の精神と共鳴する。
若者たちが「人類普遍の原理」を捨てない限り、その行動は、もはや一過性のものにとどまることはできない。
崔春海さんはこう語った。「9月で終わるのではなく、息の長い活動にしていく。戦後の転換点を言われる。ただその状況を受け入れて、あきらめ、絶望するのではなく、それを逆にチャンスだととらえて、若者こそが集まって、声を発して、話し合って、学んで、未来をつくる、という気持ちで活動していく。次の世代に、戦争の影に脅えてもらいたくない。他者を他者として認め合える社会をめざして活動していきたい」
「FYM」中心メンバーの大学3年生、後藤宏基さん(22)は集会のスピーチで、こんなエピソードを紹介した。「大人からいじめを受けるんです。『可決されたら活動やめるんでしょう』と。僕はやめません!」。
後藤さんは8月28日には、SEALDsの国会前行動でスピーチした。生まれて初めての国会。「僕自身が抑止力になる。抑止力に武力なんて必要ない」とのスピーチは、ネットを通じて拡散した。その後藤さんも「特定の団体に染まりそうで、(デモには)参加しない人」だった。
FYMを立ち上げたのは、「衆院強行採決に背筋が凍った」からだ。そこには民主主義そのものへの危機感があった。そして、「次の日、大学の先生たちが声明を出し集会を開いたのを知った。大人たちが頑張るなら、僕らが頑張らないといけない」と。
「憲法を守らないといけない。解釈で変えられないものだ。米国から押し付けられたものだとしても、憲法があったから70年間、戦争を起こさなかった」。安保法案成立後も、「自分の頭で考え、行動する。そういう場をFYMがつくっていきたい」と語る。安保法案という「戦争と平和」の問題から、政治と民主主義について考えるようになった。「国民は、政治ってこれでいいのかと問われてきた」と、後藤さんは考えている。
「この国に国民主権と民主主義が生きている限り、その問いにずっと関わらないといけない。僕ら国民が政治に対して答える番だ」。(了)
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