2024年11月22日( 金 )

八女市 甚大な被害のなか、議会は災害対策本部を設置せず

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 7月10日の豪雨災害は、福岡県内各地に甚大な被害をもたらした。県南の八女市上陽町でも、道路の崩壊などによる集落の孤立が発生したが、本来なら市と連携して災害対策に取り組むべき市議会は対策本部をつくらず、批判の声が挙がっている。

八女市内でも大雨で孤立世帯

 九州北部を襲った7月10日の大雨で、福岡県内各地も甚大な被害を受けた。久留米市の田主丸町では、降り始めからの雨量が600ミリを超え、土石流が発生。男性1人が亡くなったほか、多くの住宅が床上浸水の被害にあった。現地ではいまも復旧作業が進められている。

    田主丸町と耳納山系を隔てて反対側に位置する八女市上陽町でも、福岡県道70号田主丸黒木線が大雨による倒木や道路の崩壊によって寸断され、孤立した集落が発生した。田主丸黒木線は目下、久留米市田主丸町と八女市上陽町をまたぐかんかけ峠周辺と、八女市上陽町上横山地域の数カ所で、通行止めとなっている。

被災した旧上陽町の道路
被災した旧上陽町の道路

    現在、迂回路を通ることで八女市内に抜けることが可能になったが、「狭隘な山道であり、街灯もなく、夜間の車の通行が不安」との地元住民の声が挙がっている。

 八女市は面積が482.4km²あり、北九州市の492 km²に次いで広い。西は筑後市と接する地区から、東は大分県日田市と接する地区まで、幅広いエリアをカバーし、平野部と山間部では様相が大きく異なる。今回被災した上陽町上横山地区は山間部にあり、公共交通機関は1日往復2本の路線バスのみ。周辺にはコンビニエンスストアや病院などもなく、買い物の際は、車で30分以上かけて、八女市中心部にあるスーパーへ行く必要がある。また、高齢者の世帯が多く、携帯電話の電波がつながりにくい状況もあるという。

災害対策本部を不要とした市議会議長

 被災からここまでの八女市上陽町の状況について、八女市や地元県議、市議などに話を聞いた。

 「市は、気象庁が福岡県に大雨特別警報を発令した直後に警戒本部を発足させ、その後正式に災害対策本部を立ち上げた。被害状況の調査は、市の上陽支所を中心に行っている。」(八女市防災安全課)。

 「数日に分けて現地に入ったが、まだすべての被災地域をまわることができていない。上陽町内部では、上横山〜下横山で特に被害が大きい。現場の生の声を聞き、被災者の皆さまにお見舞いを申し上げるため、連日足を運んでいる。メディアもなかなか報道していただけないが、被害の甚大さを知っていただきたい。」(栗原悠次・福岡県議会議員)。

 しかし、取材を進めるなか、行政は災害対策本部を発足させたが市議会はこれを設置しなかったとの情報が伝わってきた。そこで、議会事務局に確認を行った。議会事務局の説明は次の通りである。

 「10日の午前中に、正副議長、総務文教・厚生・建設経済の3つの常任委員会の各委員長、議会運営委員会委員長の、6名の議員が集まり、検討がなされました。その結果、議員各人が対応することとし、災害対策本部はつくらないということになりました。」

 つまり、議会としては正式に災害対策本部をつくらないと、結論したわけである。今日になって、建設経済委員会が現地視察を行っているが、八女市議会が下した判断は、地元住民の心情に寄り添った対応とは到底いえないのではないか。

被災した旧上陽町の道路
被災した旧上陽町の道路

    自身も上陽町下横山地域の被災状況を視察した牛島孝之・八女市議会議員は、「本来、執行部、市当局が災害対策本部を立ち上げた時点で、議会側もこれに連携し災害対策本部をつくってしかるべきです。八女市は2012年の九州豪雨災害など、これまで何度も甚大な被害を受けています。今回も災害発生が想定されたにもかかわらず、対策本部を設置しようという気がまったくありませんでした」と述べつつ、議会の姿勢を批判している。

 我が国は、台風や豪雨による風水害など、自然災害が多い。地方自治体は、日本国として災害にどのように対応するのかを定めた災害対策基本法に基づき、地域防災計画を策定することが義務づけられている。

 自治体は二元代表制であり、行政と議会は緊密に連携を取るべきである。災害対策本部をつくらなかったことについて、八女市議会にも言い分はあるかもしれないが、携帯電話も通じず、道路も寸断された状況下、不安のなかで過ごした住民の思いが軽視されているのではないだろうか。

【近藤 将勝】

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