メガネスーパーお家騒動 「再生請負人」星崎尚彦・前社長は何に躓いたのか(後)
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「再生請負人」として経済メディアの寵児になった人物がいる。眼鏡チェーン「メガネスーパー」を展開しているビジョナリーホールディングス(VH、東証スタンダード上場)の前社長・星崎尚彦氏である。メガネスーパーのV字回復の立役者と絶賛されたこともあったが、今や、石もて追われる身となった。何に躓いたのか?
アドバンテッジからエムスリーに
筆頭株主が交代株主構成が大きく変更した。19年7月、資金支援してきたアドバンテッジパートナーズが出資分を返済して撤退。代わって19年12月、インターネットを活用した各種医療関連サービスを手がけているエムスリーに第三者割当増資を実施した。エムスリーの持ち株比率は33.09%の筆頭株主となる。資金調達額は約42億円だ。
エムスリー(東証プライム上場)は、日本の医師の32万人以上、世界650万人以上の医師が登録する医療従事者専門サイト「m3.com」を運営しているほか、製薬業者向けマーケティング支援サービスなどの国内外の医療分野に広範なネットワークを有している。
創業社長は谷村格氏。マッキンゼー・アンド・カンパニー出身で、2000年にエムスリーを創業。創業当時からソニーが出資。現在、ソニーグループが33.94%を保有(23年3月期末時点)し、持分法適用会社になっている。
筆頭株主が交代して、当然のことながら、新しいオーナー企業の圧力が強まる。ここからさまざまなトラブルが噴出する。
監査法人に寄せられた内部通報
VHの20年4月期決算は11億円の最終赤字に転落。22年には9,500万円の送金詐欺に遭い、22年4月期は16億円の最終赤字を計上した。業績が悪化するなか、前出のダイヤモンドオンラインは、星崎氏が突然失脚する転換点をこう報じた。
〈22年12月19日、プロ経営者としての星崎氏のキャリアが突然暗転する。この日、VHの会計監査人だったPwCあらた監査法人が設置するホットラインに、匿名の通報が寄せられたのだ。
この通報を受けて23年1月10日、VHの監査等委員会が調査開始を決議し、事前調査委員会が発足。さらに3月7日、外部弁護士による第三者委員会が発足し、星崎氏は同日付で辞任。そして5月31日、第三者委員会による調査報告書が公表された〉
星崎氏が行ったことのなかでもとくに問題視されているのが、メガネスーパーが運営していた店舗を自分自身が関与する会社に譲渡したことだ。
調査報告書によると、
〈星崎氏は「CI社」(注エムスリー)からの圧力により、業績低迷で解任されるとの危機感を抱くようになりました。そこで退任に備えて眼鏡事業を行う会社を設立しました。メガネスーパーの永福町店と千歳船橋店を譲受したのです〉
調査報告書に基づき、VH社は星崎氏らに損害賠償請求など法的措置を取る。星崎氏は徹底抗戦の構えだ。
それに追い打ちをかけるように、生活保護受給者を対象にした眼鏡代を自治体に過大請求していたことが明らかになる。過大請求の合計は166件、44万円あった。
「再生請負人」は株主が交代するとき、退くべきだ。色気を出して居座ったため、「プロ経営者」の名声は大きく傷ついた。
(了)
【森村 和男】
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