2024年11月14日( 木 )

元総合商社駐在員・中川十郎氏の履歴書・ニューヨーク編(5)

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日本ビジネスインテリジェンス協会
理事長 中川 十郎 氏

米国競争情報専門家協会とのご縁

翻訳 イメージ    1989年10月、NYでの米国競争情報専門家協会(SCIP)会議で、日本総合商社の情報収集、活用について発表したことは前回報告した。ご縁とは誠に不思議なものだ。その際、同じく講師として参加していた米ラトガース大学経営大学院准教授・ベンジャミン・ギラード博士より、同氏の情報研究著作、The Business Intelligence Systemの日本語への翻訳を依頼された。Herbert E.MeyerのReal World Intelligenceの翻訳中であったので、翻訳には時間がかかるがそれでも良いかと打診したところ、時間はかかっても良い、日本での翻訳出版を強く希望するとのことだった。

 筆者1人での翻訳ではさらに時間がかかることが危惧されたため、情報研究に熱心な友人で、伊藤忠、日揮、日本鋼管に勤務した経歴を持ち、ハーバード大ビジネススクールへの留学経験もある尾本泰造氏(BIS顧問)と、NYで懇意にしていたNTT理事・NTTラーニングシステム常務で米ビスコンシン大学経営大学院MBAの香取一昭氏(BIS副会長)と筆者の3人で共訳することにした。出版はBIS理事のエルコ出版社・横山秀男社長が引き受けてくれた。

 だが、元イスラエル警察インテリジェンス部門責任者のギラード博士の英語はなかなか難解で、翻訳完了に時間がかかり、『グローバル企業の情報組織戦略』出版は1996年11月にずれ込んだ。日本におけるビジネスインテリジェンス関連翻訳としては、H E.マイヤー氏の『CIA流戦略情報読本』(ダイヤモンド社、1990年)に続く2冊目の翻訳出版となった。3冊目の翻訳出版『成功企業のIT戦略』(米コロンビア大学教授、ウイリアム・ラップ著)は、BIS顧問の柳沢亨、長島敏雄氏、筆者の共訳で、日経BP社から2003年12月に出版された。

 上記NY会議でのご縁による筆者の英文出版は、SCIP(米国競争情報専門家協会)の要請でGlobal Perspectives on Competitive Intelligence(Alexandria、USA、1993年)に欧米の情報研究者と共著で執筆した“Intelligence in Japan”、さらに筆者の情報研究の恩師であるスエーデン・ルンド大学Stevan Dejier博士の生誕80周年記念論文集The Intelligent Corporation, Taylor Graham, London, 1991に寄稿した“Intelligence, Trade and Industry”、BIS創設20周年記念に石川昭BIS顧問・青山学院大学名誉教授と共編著で2013年にシンガポールのWorld Scientificから出版したAn Introduction to Knowledge Information Strategy:from Business Intelligence to Knowledge Science(邦訳、『知識情報戦略』、税務経理協会、2008年)などがある。この本はいまだに購入される方がおり、半年に1回、著作料がシンガポールから送金されてくる。かくも外国の情報研究者から注目されていることは、うれしい限りである。

 だが、BISが長年情報研究でご指導をいただいた共編者の石川名誉教授は先年逝去され、国際的な情報研究の先達を失ったことは、フランス情報関連でお世話になった橋田久仁雄BIS顧問のご逝去と合わせ、BISにとり大きな損失で、誠に残念である。謹んで深甚の感謝を捧げご冥福を祈る次第である。

(つづく)


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)。

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