2024年11月14日( 木 )

誠実で地道な経営を貫く、幅広い電気設備工事を請け負うプロ集団

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(株)電究社

異業種からの代表就任
地道な社内環境の整備が大きな結果へ

 2023年9月に創業40年を迎える(株)電究社。福岡市南区を拠点に、ビル・マンション・ホテル・商業施設店舗・各種施設、注文住宅など、さまざまの電気設備工事全般を手がけている。

新本社にて直塚和知社長
新本社にて直塚和知社長

    4代目代表取締役社長・直塚和知氏は先代である父親から事業を受け継いで9年。高校・大学でデザインを学び、卒業後はグラフィックデザイナーとして活躍していた。もともとは後を継ぐという意識はなく、父の誘いで異業種から飛び込むことになったが、クリエイティブな業界で培った経験や発想力も活かしながら、会社を大きく成長させてきた。

 直塚社長は現場から経営に立ち位置を変えたとき、まずは社内情報の共有化、デジタル化を急いだ。全スタッフがモバイル端末をもち、端末上で情報共有する習慣をつくると、作業効率が格段に良くなった。これらが後に、コロナ禍での緊急事態宣言発出時期にテレワークへの円滑な移行から現場管理業務、打ち合わせや設計、見積もりまでほぼ支障なく行えたという結果につながったことはいうまでもないだろう。誰もが働きやすい環境を整えるべく、残業時間の削減、有給取得率100%の実現、福利厚生の充実、旅行やバーベキューなど社員と楽しむイベントの開催など、次々と手を打った。

 同社は世界がSDGsを推進する10年以上前から、地球温暖化を抑止するためにLEDを積極的に取り入れ、無駄な仕入れをせず極力ゴミを出さない工夫をするなど、環境対策に取り組んできた。

 「社内制度も国の方針に沿って、常にアップデートしています。それはこの国で働く以上、避けては通れません。早めに準備しなければ間に合わないので、とくに労務に関する制度化の情報にはアンテナを張っています」という直塚社長。社会情勢を正確に分析し、迅速な対応で会社を引率している。代表就任以来社内環境の整備を努めてきた結果、企業の健康度を測る指標である自己資本比率も向上し、業績を伸ばし続けている。

本社移転で心機一転
社員一丸となってコロナ後の変化を乗り切る

4月に営業を開始した新本社
4月に営業を開始した新本社

    同社は23年4月に本社を移転した。以前の所在地からほど近い場所で、面積は従来の倍となり、駐車場も広くした。デザイナーでもある社長がこだわり抜いた、明るく開放的な空間となっている。「やはり、建物の外観や清潔さは重要です。とくに今の若い人たちは、住居や学校、さまざまな生活施設まで、きれいな環境で過ごしてそれに慣れていますから。オフィス環境の整備は、採用面でも重要な意味をもつと考えています」と語る直塚社長。現在社員は12名(23年4月時点)、今後さらに増員して規模を拡大する予定にしており、本社移転はその大きな一歩となった。

 ようやくコロナが落ち着いてきて、2~3月は例年以上に多忙を極めたという。もともと年度末は繁忙期であり、コロナで動きを止めていた経済が、一斉に稼働を始めた影響のようだ。またここ数年、コロナの影響で新卒に人気の業種に変化があったことにも着目すべきだろう。コロナ前は、旅行・ホテル・ブライダルの人気が高い傾向があったが、コロナ禍では電子コミックやゲームなどの自宅で楽しめるエンタメの需要が伸びたことから、出版社やゲーム関連会社の人気が高まった。

 インフラ整備業は若干順位を上げたが、今後は採用を控えていたホテルや航空会社などが動き出すので、先の予測は難しい。学生の傾向として、専門分野に特化して勉強してきた学生とそれ以外の学生とに二分化しているようだ。23年度は新卒の取り合いという状況下で、同社は1名の採用を決めている。HPなどで会社情報をよく見て応募してきたという印象を受けており、社内の雰囲気が掴めるようにと、社員紹介やブログなども意欲的に発信してきたことがよかったのかもしれない、と直塚社長は語る。

 スタッフを効率的に配置することで、幅広い電気設備工事の現場に対応できることが強みという同社。社員全員が心を合わせて、アフターコロナも含めた今後の変化を、力強く乗り切っていくだろう。

労働環境をデザインする
社員教育と組織づくりが成長の基盤

 「人手不足と人材育成はやはり課題です。どれだけ育てていけるか、辞めずに定着していくか」と直塚社長。技術者として一人前といえるようになるには通常5年ほど必要だそうだ。その間にどれだけの経験を積めるかがカギとなるが、働き方改革が進んだことで残業時間が減り、労働時間自体も減少している。となると、短い時間に量を詰め込まなければいけない。当然、詰め込むだけではなく、そのやり方も工夫が必要になる。

 社長が語る成長のポイントは「気づきの数」だという。電気工事だけをみている人と、そこに関わる他業種や必要な事務作業全般までみる人とでは、経験値に大きな差がつく。「これには育った環境や性格も影響しています。とはいえ、ルールが多いと人はやる気が下がるので、ルール化が必要なことでもありません。能力も個人差があります。まずはいろいろなモノの見方をする意識をして気づきの数を増やしていくことが大切だと思います」と直塚社長。同社の方針には「行(考)動」という言葉が出てくる。自ら考えて動く自立した人間の集団であるべきというものだ。

 近年は社員の成長を可視化するため、人事考課制度も整えた。まず幹部で年間計画を立てて共有し、マインドをそろえている。そのうえで社員1人ひとりと面談を行い、個人目標を設定して、実践をしてもらうのだ。今では社員全員がどうしたら自己成長ができ給料が上がるのかを理解して、目標に向かって邁進するようになったという。

 現在、毎期5億円程度の売上高を安定的に計上している同社。今後さらに上を目指すにあたって、時間をかけて企業としての力をつけるため、経営計画書の策定などに着手した。材料費や輸送費の高騰が続き、売上が増えても利益は大きく増えないという厳しい状況だが、「とにかく誠実に地道にやることです。一攫千金みたいなやり方は好きじゃない。最後は人と人のつながりですから」と堅実な姿勢を貫く同社の今後の展開に、目が離せない。


<COMPANY INFORMATION> 
代 表:直塚 和知
所在地:福岡市南区寺塚1-16-9
設 立:1983年9月
資本金:1,000万円
TEL:092-511-7773
URL:https://www.denkyusha.co.jp/

<RECRUIT> 
募集職種:電気施工管理士、電気工事士
応募資格:普通自動車運転免許
採用実績:2022年度/1人
採用予定:若干名
問合せ先:092-511-7773


<プロフィール> 
直塚 和知
(なおつか・かずとも)
1976年福岡市生まれ。近畿大学九州工学部産業デザイン科卒業。グラフィックデザイナーとしてデザイン事務所、印刷会社で勤務後、(株)電究社に入社。現場経験を経て2014年に代表取締役就任。趣味はルアーフィッシング。

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