【徹底告発/福岡大・朔学長の裏面史(番外編)】 「子ども病院跡地活用事業」にただよう暗雲(後)
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フタを開けて仰天!総額60億円のはずが100億円超?!
福大の朔執行部は、そもそも「こども病院跡地活用事業」応募を学内で承認させた際、予算として土地取得費用30億円、建物建設費用30億円の合計60億円を示していた。ところが、特別取材班が入手した内部文書では、その金額が大幅に膨れ上がっていた。
文書中では「西新病院移転建替事業」という名で示されているが、7月21日の報道で読者諸兄姉も今やご存知の通り、これは積水とともに札束を積んで落札した「こども病院跡地活用事業」のことである。これについて、土地取得費用42億5,000万円、建物建設51億円、医療設備9億6,500万円の、合計103億1,500万円もの予算を計上するというのだ。当初予算と比べ、なんと40億円以上もの超過である。福大関係者の間ではかねてより、「フタを開けたらびっくり仰天となるのではないか」と囁かれていたが、案の定である。それどころか、計画全体がまったくの別物に化けたといっても過言ではない。
もちろん予算案の段階から計画の妥当性は疑問視され、理事や評議員からは承認反対の声が挙がっていたが、朔執行部はそうした声にまったく取り合わず、なし崩し的に承認を取り付けていったようだ。その後の経緯をみるに、当初予算案の「60億円」とは「学内向けのダミーの数字」(福大現役教授A氏)にすぎず、その後の予算膨張は彼らのなかで初めから織り込み済みだったのではと疑われる。
「朔氏(さくし)はまことに策士(さくし)よのう」と、寒いギャグとともに笑って済ませられる話ではない。福大OBの経営者で、内部事情に詳しいある人物は、履き捨てるごとく次のように言う。「結局のところ、新病院というレガシーにこだわる朔学長の野望の表れですよ。今年行われる学長選で再選する気まんまんですし。要するに、この話は、採算性などはなから考えていないんです。福大にとって決してプラスになりません」。
実際、この案件に対する朔執行部の姿勢は実に無責任なものだ。たとえば、「病床数117床」とは最も経営が難しいとされる病院規模である。それも「内科総合病院」にするとのことであるが、山王病院、福岡記念病院、九州医療センターといった、診療科目もスタッフも設備も充実している大病院が近辺に林立するなか、こんな中途半端な病院を新設して103億円もの投資を回収できる算段はあるのか。
これについて、朔学長の後輩でもある役職員の1人――学長就任をはたした朔氏の「推薦」によって、その資格も満たさぬまま、大学附属病院の1つの院長ポストを手に入れた人物である――が、「『周囲の病院とは得意分野が違いますから、かえって大丈夫ですよ。土地も値上がりするでしょうし、そうなれば含み資産が増えます』などと、まるで不動産事業者みたいな口調で役員たちに説明していたらしい」(福大関係者B氏)とのこと。朔学長の取り巻きらのこのお気楽さ、いい加減さからは、大学の資金で朔学長の「業績」づくりができる機会としてしか、「こども病院跡地活用事業」のことを考えていないことがよく見て取れる。
福大は朔学長の虚栄心につけ込まれ、大学資産を失っていくのか
繰り返すように、こども病院跡地事業で福大が担当する病院棟建設は、採算の取れない西新病院の「新築移転」という意義づけで進められているが、同病院は朔学長の後輩医師の就職先として使われ、いまや“循環器内科専門病院”とみまがう様相を呈している。今回の新病院建設計画に「自分の植民地を新しくしたいという朔学長の個人的野望」(福大現役教授C氏)を感じ取る関係者は少なくない。
積水は福大学長のそうした虚栄心を見抜いたうえで手を組もうともちかけ、計画を立てて優先交渉権獲得につなげたのではないか──。そう推測する関係者もいる。土地取得費用が当初予算の30億円から42億5,000万円に膨れ上がったのも、優れたビジネス感覚をもつ積水にうまく利用された結果ではないかとさえ、指摘する向きもある。福大の内部事情にも詳しいある建設業関係者はこう話す。
「積水ハウスとしては、最適な規模の土地だけを確保して、2棟・合計222戸の分譲マンションを売り切りたいでしょう。上物と違って土地は、ともすれば事業の足枷になりかねませんから。だから、余分な土地はパートナーである福大に引き受けてもらい、新しい病院が人々に与える安心感とか広々とした空間とか、マンション販売にとっての良い“背景”となってほしいと考えるのは、ディベロッパーとして自然なことですよね。」
要は、福大は積水との協議の過程で、余計な土地まで買わされたのではないかというわけだ。真相はあくまで闇のなかだが、先に触れた福大役職員の、素人丸出しの無邪気な口上も考え合わせると、この関係者談は不気味なまでの説得力を帯びてくるのではないだろうか。また、関係者の間で囁かれている、積水は福岡大学・高宮グラウンド(南区大楠)の取得も狙っているのではないかという憶測も、あながち的外れとは思えなくなる。
福大は朔学長の虚栄心につけ込まれ、大学資産を失っていくのか
高宮グラウンドはかつて商学部二部の高宮校舎があった土地で、現在は附属高校の部活動に利用されている。西鉄大牟田線の線路沿い、平尾駅と高宮駅の中間あたりに位置する、敷地面積1.2haの広いグラウンドだ。子ども病院跡地と同様のマンション適地を求め、日々かけずり回っているディベロッパーにとって、まさに喉から手が出るほどの一等地といっても過言ではない。積水ハウスはこれの取得まで見越したうえで、こども病院跡地事業で福大とタッグを組んだのではないかというわけだ。
そこへもってきての、福大サイドによる病院棟の「計画見直し」および「建設コンペのやり直し」の情報である。設計事務所やゼネコンなどが建設費を福大側に改めて提示を行ったうえでの、再入札が行われる可能性があるといい、つまりは建物に関し、まったく基本的な部分からの再スタートになる可能性が浮上しているのである。
建設・不動産業界の事情に詳しいある関係者は、「優先交渉権が決定した後に計画見直しが行われるなど異例のことです。再入札なんて聞いたこともない」と驚きをもって話す。それも51億円もの案件の見直しだ。これだけ大幅な予算の見直しが行われるのは、まさに「異例中の異例」だという。
巨額の公的資金を私物化させるな!
朔学長は「リーダーシップ」と「前例やぶりをものともしないこと」とを混同しているふしがある。定年退職した後輩の前副学長に対する名誉教授授与拒否事件しかり、大学附属病院長人事しかり、基本設計まで完了していた「文系学部棟」建設計画の白紙撤回および清水建設との随意契約での医学部地区「多目的棟」としての付け替えしかり。そして、それらはいずれも、福大全体の利益と発展に資するというより、まずは朔学長の個人的利益に直結することだった。
福大には毎年、国から私学助成金やコロナ助成金など、巨額の補助金が注ぎ込まれている。それは学生と彼らの未来の社会のためのものであり、朔学長とその取り巻きたちのために注がれているわけではない。福大の、とくに毎年巨額の赤字を垂れ流すメディカル部門の財政改善を掲げるなら、ある教授も指摘する通り、「拡張にではなく、既存の体制・設備の改善と新たな道筋を考えることにリソースを振り向けるのが筋」ではないか。
しかも、建設業界は目下、資材価格がうなぎ登りに高騰しており、人手不足から人件費も高止まりしている。建設中の福岡大学病院新本館がそうであるように、今回の「こども病院跡地」での新病院棟建設についても追加予算云々という話になり、再入札のあかつきには、またもや「ふたを開けたらびっくり仰天」の事態に陥ることは想像にかたくない。血税が、そして学生とその父兄が納付する高い学費が無駄にならぬためにも、福大の動きには今後も引き続き注視する必要があろう。
こども病院跡地再開発は福岡市においては、大変注目度が高いプロジェクトである。その優先交渉権者となった積水ハウスは国内トップクラスのハウスメーカーで、福岡市においてはアイランドシティ開発、さらには高付加価値マンションのディベロッパーなどとしても知名度が高い。福大は地元を代表する私大で、これまで医療分野でも多くの貢献をしてきた。その2者がタッグを組んだのだから、子ども病院跡地開発は問題なく進むだろう、と一般的には理解されているかもしれない。
しかし、事がそううまく運ぶとは到底思えない。ここまで指摘してきたように、福大のこの事業への取り組み姿勢やその意思決定のプロセスには、数々の不審点がある。仮に市政も巻き込んだ一大スキャンダルでも出てこようものなら、「成長都市・福岡」のイメージを脅かす事態になりかねず、それは多くの人々にとって到底看過できるものではなくなるはずだ。
(了)
【特別取材班】
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