2024年11月22日( 金 )

労働条件明示のルール改正

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岡本弁護士
岡本弁護士

    労働契約の締結時に、使用者は労働者に対して労働条件を明らかにしなければいけません。

 2024年4月から労働基準法施行規則が改正され、現在使用者側に義務付けられている明示項目に、新たに4項目が追加されます。これは、勤務地限定正社員や職務限定正社員といった「多様な正社員」の雇用ルールの明確化と、有期契約労働者の無期転換をめぐるトラブルを未然に防ぐことを目的としています。

 具体的には次の4項目です。

(1)就業場所・業務の変更の範囲の明示
(2)更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容の明示
(3)無期転換申込機会の明示
(4)無期転換後の労働条件の明示

 (1)はすべての労働者に対する明示事項、(2)~(4)は有期契約労働者に対する明示事項であり、契約時以外にも明示が必要になる事項になります。また、(1)および(2)については、労働者の募集を行う場合などにも明示が必要です。以下、それぞれの項目を見ていきましょう。

(1)就業場所・業務の変更の範囲の明示

 従来も、「就業の場所」「従事すべき業務の内容」は明示事項でしたが、雇入れ直後の就業場所と業務内容について明示することとされていました。この点、新ルールでは、将来の配置転換などによって変更され得る就業場所や業務内容の変更の範囲まで、記載することになります。

(2)更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容の明示

 従来も、有期労働契約の締結・更新時には「契約期間」「契約更新の有無」「契約更新の判断基準」が明示事項でしたが、これに加えて「更新上限の有無」、上限がある場合の「更新回数または通算契約期間の上限」を記載することになります。また、最初の労働契約の締結より後に更新上限を新設・短縮する場合は、その理由を労働者にあらかじめ説明することが必要になります。

 更新上限の有無が不明確な場合は、労働者が契約更新や無期転換の期待を抱く可能性があり、労使の認識の相違からトラブルが生じやすく、また更新上限を新設する場合には、更新の期待を有する労働者に不利益をもたらすことから、更新条件に関する労使間のトラブルを避けるための改正となります。

(3)無期転換申込機会の明示

 無期転換とは、同一の使用者との間で有期労働契約が5年を超えて更新された場合、有期契約労働者からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換される(有期契約労働者が申込みをした場合は断ることができません)ルールです。

 しかし、無期転換ルールの認知度が低いことから、無期転換申込権を行使しない労働者の割合が高いのが現状です。そこで、労働者がルールを知ったうえで主体的に判断できることが紛争予防につながるとして改正されました。

(4)無期転換後の労働条件の明示

 無期転換後の労働条件がわからなければ、有期契約労働者は無期転換するかどうかを決めることができません。労働者が適切に権利を行使できるように、使用者は「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換後の労働条件を明示することが必要になります。また、無期転換後について、契約期間以外の労働条件については原則として直前の有期労働契約と同一として問題ありませんが、条件決定にあたって、他の通常の労働者(正社員等のいわゆる正規型の労働者および無期雇用フルタイム労働者)とのバランスを考慮した事項(業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)について、有期契約労働者に説明するよう努めることとされています。


<INFORMATION>
岡本綜合法律事務所

所在地:福岡市中央区天神3-3-5 天神大産ビル6F
TEL:092-718-1580
URL: https://okamoto-law.com/


<プロフィール>
岡本  成史
(おかもと・しげふみ)
弁護士・税理士
岡本綜合法律事務所 代表
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。ケア・イノベーション事業協同組合理事。

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