【福大朔独裁政権崩壊(4)】福大朔政権の崩壊に思う
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作家 金堀 豊
福岡大学の学長選挙があり、再選を目指していた朔啓二郎が負けたと聞いた。私個人は「どうせまた朔が勝つんだろう、福大の体質なんてそんなものだ」とタカをくくっていたのだが、それを見事に裏切って朔の落選となったのである。「福大、意外にやるではないか」と一瞬思った。
しかし、「福大の快挙」と喜びたくても、手放しで喜んでいいものかどうかわからない。今回の選挙を動かした人々の心情を知らずにいる私であるから、勝手なことをいうことになるのだが、そういう外野の声も福大内部の人にとどけば何らかの意味があろうかと思って筆をとる。
今回の選挙を、Net-IB Newsのニュースでは福大の「自浄作用」の結果だとしている。それはその通りだろうと言いたくもなるが、あえて疑義を呈してみると、はたしてその自浄作用なるもの、どのレベルで、どのようなかたちではたらいたのだろうか。もしかすると、外部の人間の思い込みにすぎないのではないか。
私などからすれば、今回の選挙はNet-IB Newsなど外部からの攻撃によって、内部の人間に「福大このままではまずい」という思いが生まれた結果であるように思える。朔体制に恨みを抱いている人が多くいるにしても、それがそのまま選挙に反映したとは考えにくい。これを言い換えれば、たとえ選挙で朔体制が崩れたとて、それで将来がすぐに明るくなるわけではないということだ。
1つの体制というものは、それがたとえ独裁的な権力のもとで構築されたとしても、その体制によって甘い汁を吸う人があってこそ成り立つものだ。新体制で上層部の役員が入れ替わったとしても、旧体制に馴染んでいる多くの教職員がすぐに発想転換するわけではない。いつまでも朔体制の名残が大学のあちこちに見え隠れするはずで、抜本的な大学改革とはならないのである。
とはいえ、新しい学長・永田潔文氏が理学部の人間だということは大いに評価したい。理学部と人文学部はその性格上、金もうけに直結せず、きちんとした論理に基づかない不誠実なやり方に抵抗を示すタイプの人間が多いのである。そういう学部の代表格が学長になれば、いわゆる「大学らしさ」が多少は戻ってくると期待できる。
もっとも、理学部や人文学部のまじめな人間が、こと大学経営になると必ずしも有能でないことも事実だ。ただし、だからいって新学長が事務方のいうなりになることもないだろうし、金もうけとつながる学部の人間に対して低姿勢になるとも思えない。国公立と比べ、私学の場合は金に物を言わせるというところがどの大学にもあるが、そうであっても、学長が毅然としていれば、新体制はうまく維持できると思われる。
それに、朔啓二郎ほど悪評の高かった学長は、全国を見渡してもそうはいない。だから当分の間、福大全体が自粛すると考えることもできる。自粛とは自浄と同じではないが、少なくとも波風の立たないよう大学全体が新体制を支えるのではないか。そこに期待したい。
しかし、問題はもっと根深い。福大の問題は、肥満体になり過ぎて「大学とは何か」を忘れたことにあるからだ。少子化で入学定員の確保が難しくなるとわかっていたのに、肥満体質を改善せずに何とかやり過ごそうとした結果が、金もうけに直接つながる医学部への依存となったのである。朔体制が生まれたのはその結果であって、朔1人を悪者にはできない。だが、そのことを、どれほどの福大の中枢が自覚しているだろう。
以前、私は「朔啓二郎は福大のノイズである」と書いた。その思いは今も同じだ。ノイズがなくなったからとて、システムを再点検しなくては再びノイズが発生する。そのノイズが医学部から出てくるとは限らないのだ。
つまり、システムの総点検が必要なのだが、そんな点検など誰がするだろう。大学の先生はみなそれぞれの専門研究で忙しく、そのほかに授業や学生指導がある。では、事務職員はというと、大学全体のシステムの点検となれば、それ相応の専門知識が必要だ。外部からそれにふさわしい人材を招き、しっかり点検してもらうのが一番であろう。
「大学人全員が今回の選挙を機に自覚し、福大をもっとよい大学にしようと思わねばならない」。そのような理想論は現実からあまりにもかけ離れている。大学人は研究者であり、教育者であって、それ以外ではないのだ。大学経営にはそれなりの見識をもったプロが取り組むべきで、そうしないからこそ、大学全体がおかしな方向に行ってしまうのだ。私立大学の経営は経営のプロが携わるべきで、その経営の仕方が研究や教育に悪影響をおよぼさないように、お目付役として大学人による審査機関を用意すべきである。これが私の提言で、これを実行するのは、それほど難しいことではない。
福岡大学の人間でもないのに余計なお世話だ、と切り捨てられては困る。外部の人間であればこそ、見える部分もあることをお見知りおきいただきたい。
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