2024年12月22日( 日 )

【福大朔独裁政権崩壊(5)】朔学長落選の内幕と福大をめぐる今後の苦難(前)

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 福岡大学の学長選が17日行われた。下馬評では現学長・朔啓二郎氏の優位が伝えられていたが、投票の結果、理学部教授の永田潔文氏が新学長に内定した。永田氏は、信任投票、理事会の承認などを経て、正式に就任する見通しだ。予想外ともいえる選挙結果に、「正義は勝った」として、わざわざメールを寄越してきた福大教授もいた。

 朔学長には就任当初、福大出身者として初、医学部出身者として初の学長として、期待を寄せる向きもあった。しかし、学長就任後は自分の都合の良いように物事を進める「我田引水」の姿勢、部下や後輩、敵対者に対するパワハラ気質が変わらないままで、内部からの批判の声が大きかったことを改めて裏付けた。

 朔学長の敗因を一言でいえば、あまりにも「学長の資質」に欠けていたことなのではないか。学校教育法に基づく省令「大学設置基準」の第十三条の二(学長の資格)には、「学長となることのできる者は、人格が高潔で、学識が優れ、かつ、大学運営に関し識見を有すると認められる者とする」とある。研究業績の水増しですっかり有名になった朔学長は、お気に入りを周囲に集めて、批判する者を排除していった。

 菅義偉・前首相は著書『政治家の覚悟』で、「人事権はむやみに行使するものではありませんし、感情に左右されてはなりません」と恣意的な人事を戒めているが、朔学長は読んでいなかったに違いない。「高潔な人格で、学識が優れ」とは思えない言動が目立ち、人格的にも疑問符が多い。加えて自慢話の挨拶がお得意という医師の再選を阻止できたことは、福大の先生方がやっと「良識」をみせてくれたと、ひとまず評価したい。

 ここで、朔学長の経歴を確認しておきたい。1972年、新設されたばかりの福大医学部に入学した。九州大学医学部卒業の父親のように旧帝国大学に進学できなかったことが、あまりにも恥ずかしかったらしく、さまざまな場で、福大に進学せざるを得なかった無念さを語っている。考えてみれば、「自らが恥だ」と思う大学で、医学部長、学長を務めていたことになる。

 「福大入学」という複雑な思いのせいか、医学部の教授選考にあたり、「九大出身者はとらない」と公言したり、取り巻きの福大出身者、自らの医局出身者を優遇したりする姿勢を続けてきた。学会報告と称したご当地グルメ記やブログ日記のような雑文、学報の人事欄や広報パンフ記事のたぐい、自分の執筆物ではないものまで自身の「論文」と称して公表。研究者としての良心はまったく垣間見えなかった。当社を含めたメディアに「論文不正」と指摘を受けたためか、2,283本もあったホームページの論文数は8月末の時点で439本に減っている。

 朔学長は、医学部の内規に従い、医学部心臓・血管内科学講座主任教授を65歳で降りたが、学長に就任したことで、定年(70歳)を超えても学内にとどまることができたが、今回の落選で、大学を去ることになるだろう。

 朔学長の4年間について、医学部教授の1人は「朔学長は、自らの派閥を維持することだけに明け暮れ、学長としては、何もしなかったのではないか」と振り返る。前回の学長選では、「福大出身の学長を」と支援した同窓会「有信会」も今回は、応援を手控えたようだ。

 今回の学長選では、朔学長の再選が確実と言われていた。お得意の裏工作で票集めをし、1回目の投票での勝利を目指していたようだが、過半数に数票、およばなかったという。

 関係者によると、1回目の票数は、朔学長が79票、永田氏が46票、山下恭弘氏(法学部)38票 中川誠士氏(商学部)3票、小野寺一浩氏(法学部)0票だったとみられる。小野寺氏は現在、副学長。同じ法学部の山下氏を牽制するために出馬したのではないか、と囁かれており、0票という数字が噂の信憑性を物語っているのではないだろうか。

 上位2人の決戦投票では、朔学長に反発するグループが「勝てる」と判断したのだろう。足並みをそろえて、永田氏に投票。結果は永田氏88票、朔学長77票だった、とみられる。朔再選は難しいと考え、離脱した「朔派」もいたようだ。

 投票の直前、当社では、福大医学部の第一期生の高木忠博氏(医学部同窓会「烏帽子会」前会長)が、朔学長が学長就任後、自分の腹心に同窓会長を譲るように迫り、無理やり退陣させたことを、NetIB-NEWSで再放送した。一緒に酒を酌み交わし、遊んだ同期生の赤裸々な証言の反響は大きかった。朔学長落選の最大の功労者は高木氏だったかもしれない。

 今後のスケジュールについて、最多得票の「学長最終候補者」になった永田氏の信任投票が行われる。投票権をもつのは、一定の勤続年数や資格をもつ「信任投票有資格者」だが、棄権しても「信任した」ことになる仕組みなので、不信任票が過半数に達しない限り、信任されたものとみなされる。信任された「学長最終候補者」は、理事会で承認を受け、晴れて学長に就任する。

(つづく)

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