2024年12月22日( 日 )

【福大朔独裁政権崩壊(6)】朔学長落選の内幕と福大をめぐる今後の苦難(後)

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 周囲の度重なる指摘を無視、朔学長が「専横」を続けることができたのは、理事会が事実上、形骸化していたのも一因と言える。私立大学の運営は、理事長をトップとする学校法人が経営を担い、教育・研究は学長が責任を持つという体制が一般的。福岡大学も同様だ。

 私立学校法では、理事会は、学校法人の最高意思決定機関であり、理事会が、所属する理事の監督機関でもあるということを明記し、理事会の責任の大きさを指摘しているが、福大の理事長は、福岡財界の有力者が、言わば名誉職のような形で引き受けてきた。「理事長が大学に来るのは、入学式、卒業式ぐらい」「学校法人理事長として決裁が必要な時には、職員が理事長の会社に出向いていた」こともあったという。

 福大では「教学主導」の名の下に、学長以下の執行部が、理事会の動向をほとんど気にせずに運営してきた。学長以下の執行部に問題があれば、きちんと指導しなければならない理事会が、事実上の「機能不全」の状態に陥ってきた。「専横」の学長にとっては、願ってもない環境だったと言えるかもしれない。

 大学理事会の「機能不全」の事例は、福大に限らない。先ごろ、アメリカンフットボール部員の薬物事件で揺れる日本大学の記者会見が開かれたが、林真理子理事長に、薬物所持の報告があったのは1週間も後だったことが明らかになった。作家の林理事長は2022年7月、「膿を出し切る」という強い決意で、理事長に就任したが、重要な情報もすぐに報告してもらえない「お飾り理事長」だったと言えるだろう。「日大の隠蔽体質は変わっていない」と批判の声も聞こえてくる。

 福大のみならず、大学は取り巻く情勢は厳しい。1992年度に205万人だった18歳人口は、2023年度までに4割以上減った。この間、国公私立大を合わせた大学数は1.5倍の計810校に増え、23年度には私立大の半数超が定員割れしている。

 一方、コロナ禍もあって、22年の出生数は77万人台にとどまり、1899年の統計開始以降、初めて80万人を割り込んだ。厚生労働省の6月の人口動態統計の速報値によると、今年1~6月の出生数は前年同期比3.6%減の37万1052人(外国人を含む)。7~12月も同じと考えると、75万人を割ることになる。近年、4年制大学への進学率は、50%を少し上回る程度で推移しており、この数字を当てはめると、18年後の大学入学者は40万人前後になる計算になる。

 私立大の収入は約8割を入学金や授業料などに頼っているため、学生の減少は経営に直結する。とりわけ、定員割れが続く弱小の私立大は存亡の危機を迎えている。過疎化で、地域の存続が難しい「限界集落」ならぬ、存続が難しい「限界大学」という言葉も登場しているほどだ。

 後継者を育てようとする意欲の乏しい教員、「定年までは大丈夫。退職金もらって逃げ切れば、あとはどうなろうと関係ない」とうそぶくような年配の教授もいるかもしれないが、ここ数年の出生数の減少は「大学の倒産、待ったなし」の状況になっている。受験生が減れば、さほど経費もかからず、「濡れ手に粟」の受験料収入も減ってしまう。

 朔体制で混乱した福大。立て直しに向け、永田・新学長に期待される役割は大きい。朔学長時代に業者に違約金を払ってまで建設中止を決めた文系学部棟をどうするのか、医学部重視の改編された事務局をこのまま継続するのか、えこひいきで役職に就けた教員の処遇をどうするのか。難題は山積している。

 とりわけ、情実人事で崩壊状態にある、医学部、病院をどう差配していくのかは喫緊の課題だろう。福大では、医学部を卒業した医師が医局に残らない科も少なくない。「このままでは、地方の医療機関への医師を送り込むどころか、当直体制も組めなくなる」「医局員の多い九大に頭を下げ、医師を派遣してもらう時代が来るかもしれない」とぼやく医学部教授もいる。業績があまりなくても、ゴマすりの上手な医師を、教授にしていったことから、医学部の人材不足は否めない。病院担当の副学長、医学部長、病院長の人選は、理学部の永田氏にとっては難題となるかもしれない。

 9学部31学科、在学者数約2万人を擁する、西日本有数の総合大学は、どこに向かうのか。目を離せない状況が続く。

(了)

【T・T】

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