2024年07月16日( 火 )

韓国不動産業界を揺るがす不動産プロジェクトファイナンス(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

プロジェクトファイナンスとは

韓国不動産 イメージ    金利が上がることによって不動産市場が急速に冷え込み、建設会社や不動産会社が破綻に追い込まれるのではないかと韓国では懸念されている。韓国では中堅の建設会社だけでなく、大手建設会社も資金の流動性が悪化していて、韓国政府も推移を注意深く見守っている。不動産の場合、大規模開発プロジェクトは金融機関から資金の融資を受けて事業を進めることが多い。

 不動産プロジェクトファイナンス(PF)とは、企業の業績とは別に、不動産案件ごとに完成した暁にはこれだけのキャッシュフローが得られるといった、将来の入金予想を基にお金を調達する仕組みのことだ。

 建設会社は不動産PFで工事費などを確保し、後に物件の販売代金から返済することになる。開発主体は建設会社の債務保証をもらって銀行からブリッジローンと呼ばれる金利の高い資金を調達する。その資金で土地を購入し、事業計画の承認を得て、金利の高いブリッジローンは返済し、建設工事費を調達するためのメインPFを行う。

 メインPFではSPC(特別目的会社)を設立してABCP(Asset-backed Commercial Paper、資産担保コマーシャルペーパー)などを発行して資金を調達する。不動産PFの規模は1つのプロジェクトに数百億ウォンから、規模が大きいものでは数千億ウォンなどさまざまである。

 景気が良い時には、資金調達がしやすいが、景気が低迷しているときには収益が悪化する恐れがあるので、資金調達が難しくなる。金融機関からすれば、プロジェクトファイナンスはリスクが高い分、収益が高くなるので、収益性にメリットを感じて融資をする。

 しかし、予想通り分譲がうまくいかなかったり、開発した箱モノに予測どおりお客さんが来なかったりすると、貸し出した資金が償還されなくなるリスクがある。米国発の高金利の影響で、韓国では昨年から不動産PFからの資金調達はほぼ難しくなっている。

韓国不動産ファイナンスの特徴

 韓国の不動産開発会社は資金力が脆弱で、ブリッジローンで土地を購入しメインPFでブリッジローンを返済する。また、建設費用もメインPFや分譲契約金などで賄う。メインPFの資金は建設費用だけでなく、ブリッジローンの返済にも使われるため、メインPF資金調達の負担が大きくなる。

 韓国の大規模マンション団地などの場合、工事着工前に契約金を、着工後に中途金をもらうことになるが、その相当額が事業費として使われることになる。従って、住宅価格の下落が予想される時期になると、住宅の販売が滞り、事業費の調達にも支障を来たしたり、分譲率が低調な場合には、工事が中断することもあり得る。

 韓国不動産開発業界のもう1つの特徴は、建設会社が完工するまで責任をもつという保証をして初めて、プロジェクトファイナンスが成立すること。景気が悪化すると、建設会社は販売不振に苦しむだけでなく、資金負担まで負う二重苦に晒される。

(つづく)

(後)

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