2024年11月05日( 火 )

車載電池リサイクル事業に続々参入(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

カーボンニュートラルの要請でEVの普及が加速

電気自動車 イメージ    全世界的な電気自動車(EV)シフトの背景には、カーボンニュートラルを推進する世界的な情勢がある。各国の政府や企業が脱炭素による電化を加速させているため、世界のEV市場も急速に拡大しつつある。その一方で、EVの中核部品である車載電池は、7~10年間使用すると蓄電量が著しく減少するため交換せざるを得ない。よって今後大量のEVが生産されればされるほど、大量の使用済み車載電池が発生することが予想される。それで、韓国では、EV普及とともに増加が見込まれる使用済み車載電池の循環利用に対する関心が高まりつつある。

EV普及の壁になるリチウムやコバルトなど

 リチウムは車載電池の原価の40%を占めている鉱物で 「白い石油」とも呼ばれている。リチウム電池の開発には4~7年かかり、需要があってもすぐ対応できるような原料ではない。SNEリサーチによると、車載電池向けのリチウム需要は22年が52万9,000t(LCE※から30年には273万9,000t(LCE)に伸びることが予想されている。米国地質調査所(USGS)の報告によると、世界のリチウム埋蔵量は1,400万トンで、現在の消費ペースで使用すると、400年は採掘できるという。しかし、増加のペースによっては話は違ってくる。もう1つの懸念はリチウムの主導権は中国が握っていることだ。世界各国で採掘されたリチウムは、中国に運ばれ、中国でリチウム化合物に精錬されている。中国はコストが安く、環境規制が緩いからだ。その結果中国のリチウム精錬・加工のシェアは全世界の65%程を占めている。リチウムは需要の増加とともに、価格も高騰している。20年にはkg当たり38元だったリチウムは昨年11月には590元に暴騰したが、現在は世界経済の低迷で価格がずっと下落している。

※LCE:炭酸リチウム換算のこと。1tのリチウムは約5.3tの炭酸リチウムとなる。 ^

 また車載電池の原料のなかでとくに不足しているはコバルトである。米国地質調査所(USGS)の報告によると、埋蔵量は710万トン(2017年の調査)で、年間の採掘量が10万トン前後なので、単純に計算すると50〜60年で枯渇するようだ。なので、EV普及に壁になるのはこのような鉱物かもしれない。

大きな市場となるリサイクル事業

 EVが普及し、車載電池の寿命が来れば、今後市場に出回る車載電池を効率的に回収し効果的に利用する循環システムの構築が大事になってくる。使用済み車載電池の活用法としては、使用済み車載電池をESS(電力貯蔵システム)やUPS(無停電電源装置)などの他の用途で使用するリユース(再使用)と、使用済み車載電池を分解して、リチウム、ニッケル、コバルトなどの希少金属を取り出し、新たな車載電池の製造に活用するリサイクル(再活用)という2種類がある。

 2種類のなかで、電池のリサイクルは、コスト面の課題が多く、リユースが現実的かもしれない。リユースは安全で、コスト削減につながるものの、不良モジュールとセルを選別したうえで、用途に合わせてESSを最適化しないといけないので、時間とコストがかかる。車載電池のリサイクル事業は、原材料が高騰したり、環境規制が厳しくなったり、戦争でサプライチェーンに異常が発生した時などに備える良い方法である。とくに韓国はこれらの主要原料のほぼ全量を輸入に頼っているので、中国への依存度を下げる意味合いも大きいだろう。それに、韓国で主に生産される三元系リチウムイオン電池は、製造原価が高いため、リサイクルの経済的メリットが大きいようだ。

(つづく)

(後)

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