マイナンバー「消費税還付案」迷走、あなたの会社の備えは?(前)
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普通の市民には「便利にならない」「得なことはない」と言われるマイナンバー制度が動き始めた。マイナンバー(個人番号)の通知カードが10月から全国民に送付される。対策に追われる企業、自治体を尻目に、個人番号カードを利用した消費税2%分還付案の迷走をはじめ、政府の手前勝手が目立つ。国民生活が丸裸になる恐れがあるとの指摘があるなか、マイナンバー制度は順当にスタートできるのか。
社会保障、税、災害対策…行政のために、国民が協力する制度
マイナンバー制度は、社会保障、税、災害対策の3分野の行政手続きでマイナンバーの記載を義務付けるもので、行政が情報を効率的に管理し、国民の所得を容易に把握し、行政事務を簡素化するものだ。分かりやすく言えば、行政が、国民一人一人のお金の流れをマイナンバーで紐付けて把握するのが目的である。あくまで「行政のための制度」であり、国民・企業にとって、一方的に行政に協力させられる内容で、国民の利便性は主眼ではない。「得なことはないので、なぜこんな面倒なことをさせられるのだ」という怨嗟の声が出るのは必然的だ。
財務省「還付案」迷走、公明反対
消費税還付案は、財務省が9月10日開催の与党税制協議会の検討委員会に示し、一気に批判の火がついた。買い物の都度、個人番号カードをレジで読み込む方式に、カード携帯の強制への批判や個人情報漏洩の不安が噴き出したからだ。
この問題が、国民の関心の高い政策問題だということを、自民党もよく承知している。同党のホームページの政策のコーナーでは、普段はもっぱら最終報告や発表した提言が公開されているなかで、協議中の財務省案が同検討委員会の資料として公開されているからだ。麻生太郎財務相は「(マイナンバー)カードを持ちたくなければ、減税がないだけ」と開き直っていたが、9月25日の与党協議で、公明党が反対を表明し、欧州型の軽減税率導入を主張し、還付案の雲行きがあやしくなった。自民党は、還付案を進める意向で、両党の調整が続く見通しだ。
国民の不便は、買い物での個人番号カードの携帯だけではない。
カードを読み取るカードリーダー端末を全国の小売店に備え付けるためにかかる費用は、数百億~数千億円とも言われ、端末を無料で提供することまで検討されていると報じられている。また、財務省案では、全国民の買い物情報を集約し、消費税2%分の還付を行う「還付ポイント事務センター」を新たに設置する。これらが、行政の効率化と言えるのか、官僚の新たな天下り先になるのではないか、カードリーダー端末などの利権が生まれるのではないかなどの疑問が出ている。(つづく)
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