株安、中国ショックなのか安倍ショックなのか
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日経平均株価が暴落して1万7,000円を割った余波は消えない。中国経済の減速懸念をきっかけに、リスク株を中心に持ち株減らし、利益確定売りの動きと言われ、「市場の反応は過剰」との意見もあるが、中国ショックは収まりそうもない。
兜町(経済)から見ると、中国の景気減速が発信源なのは、間違いないのだろうが、永田町(政治)から見ると、安倍一強政治が日本経済にもたらす影響が一番の気がかりだ。安倍首相は、安保法制を成立させた直後の9月24日、アベノミクスの第2ステージとして2020年に向けた「新3本の矢」を掲げ、「1億総活躍」社会を打ち出した。「新3本の矢」は、名目GDP600兆円(希望を生み出す強い経済)、出生率1.8(夢を紡ぐ子育て支援)、介護離職ゼロ(安心につながる社会保障)で、下落する支持率を挽回するためのとはいえ、来年夏の参院選挙対策というのが透けて見える。
アベノミクスが当初掲げた成長戦略は具体像が見えないまま、子育てや社会保障にすり替わって、600兆円という数字目標だけ残っている。実行性も財源も不透明だ。
アベノミクスで掲げたデフレ脱却は「もう目の前だ」と述べたが、その翌日発表された8月の消費者物価指数は0.1%下落。第2ステージを打ち出す前に、第1ステージの「3本の矢」の達成が危ぶまれている。安倍首相は、祖父の岸信介氏の悲願だった集団的自衛権の行使をやり遂げ、所得倍増計画の池田勇人氏を超えようとしているように見える。「新3本の矢」を発表した会見では、「自民党は立党以来、憲法改正を党是としている」として、来年夏の参院選挙で、「(憲法改正を)公約として掲げることになる」と、意欲を示した。
安保と経済で歴史に名を残す政治家の姿を思い描き、酔いしれているのかもしれないが、その眼には、安保法案に反対した若者の姿も、アベノミクスの効果が波及していない地方、中小企業、勤労者の姿も見えているのか疑問だ。「新3本の矢」の名目GDP600兆円の「矢」には、経済界からも早々と批判が出ている。490兆円(2014年度)を約5年間で110兆円増やすとなれば、毎年、名目成長率3%が必要だ。最近の実質成長率(13年度2.1%、14年度マイナス0.9%)から考えると、空想的な目標だ。
高度成長前の「所得倍増」は、日本人に夢を与えたかもしれない。600兆円という夢物語で、安保法制強行で失った国民の支持を買い取ろうというのだろうか。国会前や全国各地で「民主主義ってこれだ」と叫んだSEALDs、ミドルズ、オールドはもう黙らない。「参院選まで忘れない」「(安保法)賛成議員を落選させよう」の声は止まりそうもない。【秋山 広】
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