【由布市問題(8)】地域住民の犠牲の上に「持続的成長」無し~地元紙が無視する現実
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全国に知られる温泉地であるとともに、今や海外からも多くの観光客が押し寄せる一大観光地となった大分県由布市の由布院。
だが、同地を代表する老舗高級旅館「玉の湯」と由布市役所が、「玉の湯」の新規施設の建設工事にあたって、地元住民の意向を無視して排水工事計画を進めている。当社はこの問題について9月下旬から記事を掲載し、問題認知の広がりに努めてきた次第だ。その結果、大分県を中心として多くの反響をいただいている。
観光業は地域経済にとってたしかに重要だ。ところが、オーバーツーリズム(観光公害)の発生を始めとして、地域住民の暮らしが犠牲になる事態もいたるところで報告されており、そのような問題を真摯に解決する姿勢が、企業と行政に求められつつある。
由布院における本件も、まさに観光優位、経済優位として地域の有力企業と行政が前のめりになるなかで、地域住民の暮らしを無視する現実が起きていることを伝え、ぜひ、地元メディアにも問題を真剣に取り上げてもらうことを願っている次第だ。
ところが、当社に次のような投稿があった。
本日(11月3日)の大分合同新聞11面の記事、何か忘れていませんか。
湯布院町民の犠牲の現状は? 不思議です。地元住民の犠牲を無視した
「(経済本位の)持続的成長」?地元の有力紙『大分合同新聞』11月3日付は、「温泉、自然活用し持続的成長目指す」と銘打った記事で、10月30日に由布市役所で行われた「サステナブルな由布市観光プロジェクト推進協議会」の設立総会の模様を伝えていた。大分銀行が県内各市町で進める地域課題解決や持続的成長に向けた取り組みの由布市編であるという。
記事によると、
「地域内資金循環の活性化」と、温泉や自然といった地域資源を最大限に活用した「稼ぐ力の増強」を柱とする活動計画案を承認した。
と伝え、それに続けて「資金循環」と「稼ぐ力」の方策を紹介している。
つまり、推進協議会は「サステナブル(持続的成長可能)」と「地域課題解決」をあくまでも「資金循環」と「稼ぐ力」の推進としてのみ捉えており、同紙もそれを追認した記事となっている。
日本国内でSDGsという言葉が盛んに喧伝され、ビジネスマンの誰も彼もがSDGsバッジをつけて闊歩するようになって久しいが、決してSDGsは経済至上主義のお墨付きではない。にもかかわらず、こうも明け透けに「サステナブル」と「地域課題解決」を「資金循環」と「稼ぐ力」に絞った課題設定を、しかも大分県の有力紙にして地元密着を掲げる大分合同新聞社が行っている。
なぜ同紙は、本件問題を認知しないかの如く、振舞うのであろうか? 認知を願う当社の記事発信力が地元有力紙・大分合同新聞社を振り向かせるにはまだ力不足ということか。あるいは、同紙の密着対象がそもそも地域住民ではないということであれば、これは当社の認識不足と言わねばならない。
ちなみに同紙記事では、「玉の湯」の社長で由布市まちづくり観光局の桑野和泉代表理事らの、協議会オブザーバー就任案も承認されたことも伝えている。
当社は当該問題について取材と情報発信を続けていく所存である。
【寺村朋輝】
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