2024年11月23日( 土 )

違法薬物と学生競技者(1)日大アメフト部薬物使用の容疑など

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再建途上に影を落とす日大

イメージ    覚醒剤、コカイン、大麻…いわゆる違法薬物。「大麻は合法の国もある」と“正当性”を宣う面々も存在するが、日本では違法。流通、そして使用ともやってはいけない。昨今、競技者のこれら違法薬物の濫用─とくに大学生競技者におけるケースが多発している。

 8月5日に日本大学アメリカンフットボール部の寮で、7月に乾燥大麻と覚醒剤を所持したとして、大麻取締法違反(所持)と覚醒剤取締法違反(所持。後に合成麻薬と思っていたとして麻薬取締法違反に切り替え)の疑いで現役部員が逮捕された。さらに10月16日、麻薬特例法違反容疑で同部2人目の逮捕者が発生した。

 日本大学ホームページで8月30日に学長・酒井健夫氏の記名で公開された「在学生の皆さんにお願い」とするメッセージを、以下で原文のまま紹介する。

 「令和5年8月5日に大学ホームページにおいて公表しましたが、本学学生(アメリカンフットボール部)が覚醒剤取締法違反及び大麻取締法違反の疑いで警視庁に逮捕され、その後、麻薬及び向精神薬取締法違反で起訴されました。ニュースやSNSで事件を知り、在学生の皆さんは心を痛められていることと思います。

 本件につきましては、8月8日に記者会見を行い、大学ホームページにも経緯の説明を掲載し、私自身が把握している内容を全て報告いたしました。また8月14日の同ホームページに“本学学生の逮捕を受けて在学生の皆さんへ”を掲載し、学長としてお詫びをいたしました。

 近年、若い人の間で違法薬物の使用が広がりを見せているとの報道がなされておりますが、このことは学生の皆さんにとって決して遠くの出来事ではありません。違法薬物は、違法であることはもちろんのこと、摂取した場合、心身に影響を与え、皆さんがこれまで積み重ねてきた人生の努力を無に帰させ、保護者や周りの大切な方々を悲しませることになります。

 どうか皆さんは、違法薬物とは関わりを持たないという強い意志を持って、勉学に、スポーツに、文化・学術活動に取り組んでください。

 大麻にはテトラヒドロカンナビノール(THC)という脳に作用する成分が含まれており、使用すると依存性が生じ、学習能力やIQの低下を招きます。大麻は我が国では大麻取締法によって厳しく規制されていますが、茎から繊維を取ることを目的に、昔から栽培し利用されてきました。しかも、その際も都道府県知事の免許を受けた大麻取扱者のみが、大麻の栽培、所持、譲受や譲渡が認められていて、無許可の栽培は禁止されています。

 大学在学期間中は、学生の皆さんにとって、勉学に、スポーツに、文化・学術活動に全力で取り組み、人生の大切な時代を過ごし、社会に巣立つ準備をする重要な時期です。その大切な期間に、薬物乱用や闇アルバイトなど、法律に反することとは絶対に無縁であってください」

 同部は1940年(昭和15年)創部。“日本大学フェニックス”の愛称で、長年国内アメリカンフットボール界をリードした名門として名高い。大学王座である甲子園ボウルを21回、国内王座決定戦のライスボウルを4回、それぞれ制覇している。

 しかし2018年(平成30年)5月6日に開催された、関西学院大学との定期戦で“悪質タックル問題”が勃発した。その後、同学経営陣の不正疑惑など、学校法人そのもののガバナンス不全が、露呈した。まだ再建の道半ばである同学の運営。今回の違法薬物事件は再建に影を落とす。

 なお、同学アメリカンフットボール部の違法薬物事件だけでなく、今年に入り発覚した違法薬物をめぐる事件には、

  • 東京農業大学ボクシング部 7、8、9月に大麻取締法違反で計4名の現役部員逮捕
  • 京都成章高等学校ラグビー部 7月に大麻取締法違反で計3名の元部員(既卒)逮捕
  • 朝日大学ラグビー部 8月に大麻取締法違反で計3名の現役部員逮捕

 がある。日大の件含め、学生スポーツでの違法薬物の蔓延が深刻であるのが現状だ。

 世間では、再び日大のガバナンスを糾弾している。日大個別の問題はほかの報道関係に譲り、ここでは日大および今年発生した学生スポーツ界での“違法薬物”の本質を突きたい

【青木義彦】

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