2024年12月23日( 月 )

違法薬物と学生競技者(2)日大アメフト部薬物使用の容疑など

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罪悪感が低い大麻使用

 覚醒剤や大麻など違法薬物での逮捕は、薬物そのものを使用する、流通させる、あるいは両方のケースがある。日本大学アメリカンフットボール部など学生スポーツチームからの逮捕者のケースは、それぞれが混在しているという特徴がある。

 日大に限らず、連載(1)で掲載した学生スポーツ界の違法薬物による刑事事件が勃発している。

「これは、氷山の一角で、まだ明るみに出ていない案件が潜んでいることはたしか」とコメントするのは元暴力団組織に属した人物。「とくに大麻使用および流通させる面々は、『何が悪いの?』と罪悪感の低い人物が大半です。よって根絶させることは困難ですね」(同)

 違法薬物については以下のように話す。

「いわゆるナチュラル系とケミカル系の2つに分けられます。ナチュラル系の代表は大麻です。日本での大麻は、都道府県知事許可の大麻取扱者免許保有者以外の人物は、大麻取締法違反で検挙されます。他方で、オランダやアメリカの一部では合法です。かつては、ゴールデントライアングルと呼ばれたタイ、ラオス、ミャンマーの国境が接する地帯では、違法麻薬の密造が横行していました。現在は、タイの治安当局の努力により減少傾向にあります。しかし、まだ壊滅に至っていません。

 そのようななか、日本では主にゴールデントライアングルからオランダなど大麻合法国家のルートを経て調達されています。とくにオランダ産の大麻は、品種改良が頻繁に実施され、愛好家には高い評価を受けています。大麻そのものを日本国内へ持ち込むことはご法度ですので、大麻の種を持ち込みます。

 大麻の種でも、持ち込みが発覚すれば当然税関で摘発されます。ではどうするのか? 避妊具に仕込んで、飲み込み日本へ入国後、排せつ物から取り出す。もう1つはお尻の穴に隠して持ち込む方法です。一方で、法的規制が厳しく品質も低いとされる日本国内での調達はほぼ皆無です」(同)

 大麻と心身の影響については次のように話す。

「厚生労働省など関係機関から、『脳の知的機能や記憶の形成をつかさどる部位(海馬ほか)に悪影響をおよぼすなど、さまざまな不具合を引き起こす違法な薬物。大麻を乱用すると知覚が変化し、集中力がなくなり、情緒が不安定になる。また、大麻を乱用し続けることによって何もやる気がしない状態(無動機症候群)や、知的機能の低下、大麻精神障害などが引き起こされる』、といった旨の情報が発信されています。

 一方で、『食欲増進が促され、多幸感が高まり、うつが改善される』とする内容のレポートも存在する。大麻の常習性はひとそれぞれで、しかし覚醒剤ほどの極めて高い常習性はありません。何よりも大麻は、とくに20代前後の若年層からおしゃれ、格好いい、健康的というイメージがあります。最近は、大麻を加工品と混合させた合成物などが出回っていますが、ほとんどは乾燥した葉を吸います。

 つまりタバコの延長線上ですね。価格は日本で流通させた場合、原価の10倍が末端価格で取引されています。原価は1グラム400~500円が相場ですが、なかには2,000円前後の大麻もあります。流通経路で変動があります。1回使用で0.5グラムです。大麻1回あたりの吸引は、2,000円~1万円前後。決して安いものではありませんが、手が届かないわけでもありません」

格好の餌食となる学生競技者

 上述した大麻の効能は、競技者にとって大変心強い味方になるという。とくに大きな試合の前になると、心身のコンディションのコントロールがつらくなる。プレッシャーからの食欲不振、不安定な心理状態、睡眠不足などになる状況下で、「大麻を使用することで、精神的プレッシャーから解放され、食欲が増し、士気が高揚し、よく眠れるという理由から、若年(学生)競技者が使用するケースが広まっていますね。『割の良いアルバイトがあるよ』といわゆる大麻バイヤーが学生競技者に近づきます。SNSや盛り場などあらゆるルートからです。大麻を右から左にするだけで、一般のアルバイトより短時間で5~10倍の報酬を得られることとなります。

 さらに『使ってみては? 心身のコンディションが充実するよ』とそそのかされて、自らも使ってしまうのです。もちろん使用者側は違法であることを分かって流通、使用を実施しています。使ってみると、世間が警笛を鳴らすほど、身体への悪影響がない。常習する傾向にあるものの、タバコの変わりであるという位置づけで、精神的な負担も感じられないのです。

 学生競技者は、大麻を流通させながら、自らも使用するパターンが数多く見られます。暴力団や半グレ集団などは、学生競技者にアプローチして、罪悪感を払拭させ大麻の流通に利用する。また、個人輸入もネットなどで簡単にできるのが大麻。何にせよ、裏社会の餌食となっているのが学生競技者です」(同)とのことだ。

 大麻の格好の餌食となっている学生競技者たち。大麻はゲートウェイドラッグと称されるように、違法薬物の入り口。大麻を常習することで現状に満足できなくなり、さらに刺激の強い違法薬物へとはまっていくという。

【青木義彦】

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