違法薬物と学生競技者(4)日大アメフト部薬物使用の容疑など
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前出元暴力団関係者は続けて次のように語る。
「競技者が試合に挑む際、覚醒剤を使用することで、身体の機能が高まり体力も増強される。そして精神的に充実感がもたらされ、周囲そして自身が求める成果、それ以上の成果を上げられると……確かに使用することで、保有能力の数倍もの力を発揮し、結果が出る場合はあるでしょう。しかし、それらはすべて“ごまかし”となり、後々取り返しのつかない副作用に冒されることになります。以前プロ野球界での覚醒剤使用がクローズアップされました。周囲やファンの目、結果を求められる、第一線で出場し続けること、自身の将来など……プレッシャーとの戦いによる恐怖や不安などを解消するため、覚醒剤を使ってしまう。罪悪感との葛藤のなか、手を出してしまうケースです。
裏社会の関係者は、アスリートや芸能人は、簡単に手なづける上顧客に仕立てるのです。“大丈夫です。世間がいうほど依存性などありません。すぐに止められます。少しならばれませんよ”などの言葉で、心の隙間に入っていくのです。心身に悪であることはわかっていても、プレッシャーの恐怖や不安を一掃して戦いに挑みたいと。
しかし、実際には覚醒剤など使っても“張りぼて”であること。つまり、現実逃避しているだけなのです。しかし、覚醒剤常用者は何もかもがマヒし、求め続ける。ある程度稼いで経済的にゆとりのあるアスリートは、湯水のごとくカネを使います。稼ぎがギリギリのアスリートも、借金をしてまで覚醒剤につぎ込みます」
そして学生競技者──日本大学アメリカンフットボール部での違法薬物使用の容疑。罪状が切り替わったものの、一時は覚醒剤取締法違反で検挙された。
学生競技者においてもプレッシャーとの戦い──スポーツ特待生入学での周囲の期待、公式戦出場できるか否か、強豪校・伝統校ゆえの結果を求められるなど、それぞれがプレッシャーという恐怖と不安を抱えて活動している。
「プロのアスリート同様、学生の競技者の皆さんが覚醒剤のターゲットになることは、必然です。覚醒剤より依存性・常習性が緩いといえども、精神的恐怖や不安から解放され、結果を出したい一心で大麻を使用する。“もっと効果が出る薬物あるよ”と近づかれて、覚醒剤に手を染める。大麻より高価なので、自らも売り子となって資金を得ながら、裏社会の資金調達に利用させるという負のスパイラルに陥ります。
学生競技者は、純粋な心を持つ人々が少なくないので、現実逃避に流され違法薬物にのめり込んでしまうのです。チームや競技団体や地域の警察などが、“違法薬物は使うな”の啓発活動を行うのは評価できます。しかし、啓発活動も学生競技者全員に伝えるには限界があり、チームマネジメント側が常時監視することも困難です。今後も“イタチごっこ”が続くでしょう」(同)
上記の証言にもある通り、学生競技者における違法薬物撲滅の有効な方策は、見い出せないのが現状だ。
違法薬物を使うことで、一時的な“効果”を求める。そして安直な金もうけをもくろむ。
競技者が覚醒剤や大麻など違法薬物使用しての活動は、何ら実りがない。人生を台無しにする。そして違法薬物の流通に関わることは、裏社会=暴力団の資金調達を手助けするだけだ。学生競技者は、社会に羽ばたく大切な準備の時期である。今ある立場は、各人それぞれである。競技活動でのプレッシャーもそれぞれだ。どの競技者も大なり小なりプレッシャーは抱えているものであり、それは違法薬物を使っていい理由には決してならない。「腹が減ったが一文なしなので、無銭飲食する」というレベルの話となる。違法薬物は、現実逃避に過ぎないのである。
競技には常に勝負がついてまわる。競技者は永遠に勝ち続けることはできない。学生競技の勝ち・負けともに人生の経験だということを受け入れる精神的な成長をもスポーツを通して目指して欲しい。短絡的に違法薬物に手を染めることなく、「競技での真剣勝負を通じて、豊かな学びを実行し、社会に羽ばたいていただきたい」──日大はじめ学生の違法薬物使用の事件を通じて、改めて痛感した。
(了)
【青木義彦】
法人名
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