2024年12月23日( 月 )

日大フェニックス、不死鳥といかず~日大アメフト部の廃部

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日大そしてスポーツの地位失墜

アメフト イメージ    11月29日、フェニックスの愛称で親しまれた日本大学アメリカンフットボール部の廃部が、明らかになった。併せて林真理子理事長の減俸50%(6カ月)、酒井健夫学長の辞任(2024年3月31日付)、澤田康広副学長の辞任(23年12月31日付)とする処遇が、同日開催された日大臨時理事会で決定した。

 一部関係者より「同好会で再スタートする」旨のコメントが散見させるが、未知数だ。「11月27日に違法薬物購入などで、3人目の逮捕者が出たのが致命的」として、日大はアメフト部の廃部へ舵を切ったとする関係者。

 今回の同学アメフト部廃部について学内外や世論は、賛否が二分している。いずれにせよ、日大、アメリカンフットボールそして学生スポーツそのものの地位が失墜してしまったことは明らかだ。

口を閉ざす大学とアメフト関係者

 今回の日大フェニックス廃部について取材を進めたが、日大そしてアメリカンフットボール業界関係者は、一様に口を閉ざして「取材は勘弁してください」とコメント。アメリカンフットボール業界をよく知る関係者は「自身でも、日大以外のアメフト関係者にそれとなく今回の廃部の件を聞いてみました。しかしほとんどの方が、コメントを避けるか沈痛な表情を浮かべて話題を逸らしていました。そのようななかで、一部日大に近い関係者が少し話してくれました。廃部について、アメフト部の監督をはじめとした幹部および学生たちは寝耳に水であり、今も内部で混乱が続いていて、幹部・学生とも困惑している状況のようです。そして、来年度スポーツ推薦での入学が決定している現高校3年生の今後について、どのようにフォローしリカバリーするのかなど問題が山積しているようです」。関係者以外が想像する以上に、深い闇に入ったと推察される。

廃部で問題が解決するのか?

 日大フェニックスの廃部によって、違法薬物疑惑をめぐる諸問題は、本当に解決するのだろうか。長年ライバル校として雌雄を決してきた、関西学院大学アメリカンフットボール部をはじめ業界内では激震が走っている。業界内外では廃部撤回を求める動きが、起こっている。

 日大フェニックスは、日本アメリカンフットボール界をけん引し、競技力向上など多大な貢献は明らか。一方で、一部選手による大麻をはじめとした違法薬物疑惑により、日大そして同大アメフト部が、長年築き上げた伝統を汚した。逮捕された者は、心より猛省し償わなければならない。

 急転直下の日大フェニックス廃部、なぜなのか?以下の理由は、筆者の推論だ。

(1)日大経営陣の権力闘争の口実
(2)国の補助金全額不交付のダメージ
(3)まだ表沙汰になっていないフェニックス内部の違法薬物蔓延のもみ消し

 とくに国からの補助金全額不交付は、3年連続。さらに不交付が続く事態となると、大学をはじめ付属高校、中等教育学校、付属中学校、小学校、幼稚園、認定こども園、専門学校の運営の屋台骨が揺らいでしまう危機が潜む。危機を回避するために、日大フェニックスを畳み、文部科学省など国へ厳しい姿勢を見せるためであろうか。

 大学スポーツのマネジメントで10年以上の経験のある指導者からコメントが寄せられた。「大麻など違法薬物に関わることは、言語道断です。逮捕者ら当事者は、相応に罰せられるべきです。他方で、真面目にアメリカンフットボールに取り組み、向き合っている学生たちがいるのも事実です。つまり、真摯に活動している学生が、ほとんどです。アメリカンフットボールに真摯な学生の将来を、奪ってもいいのでしょうか?奪ってはいけません。日大フェニックスの廃部は、回避してほしいです。日大のガバナンスと違法薬物疑惑の因果関係は不明瞭ですが、アメリカンフットボールとは関係ありません。学校法人運営やガバナンスは、経営陣の問題です。真面目に取り組んでいる学生たちが、アメリカンフットボールでフィールドに立てるために、大人たちが矢面に立って、問題を解決できるようリードすべきです。矢面とは、経営陣が逃げずに非難・批判を浴びながら、前面で再建をリードすること、そして学生=部員の話を、自ら歩み寄り聴くことではないでしょうか」。

 このまま日大フェニックス廃部が実行されたら、日大スポーツのみならず大学スポーツそのものに大きな影を落とす。日大は正念場を迎えた。

【青木 義彦】

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