ロバート・ケネディJrは大統領の座を射止められるのか?(前)
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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸2024年11月、アメリカ大統領選挙を迎える。通常であれば現職大統領は2期目を目指すが、バイデンの再選可能性は揺らいでいる。そんな中、トランプや共和党候補者、民主党を割って出馬の意欲を示すR・ケネディJrの動向に注目が集まっている。
バイデン大統領再選に黄色信号
アメリカの大統領選挙は波乱万丈の様相を呈しています。現職のバイデン大統領は再選を目指していますが、最新の世論調査ではトランプ前大統領に10ポイント以上の差をつけられており、前途多難です。80歳という年齢のせいもあり、言動の危うさは日ごとに深刻化しています。
少し前までは孫の数や名前が出てきませんでしたが、最近ではジル夫人が誰なのか識別できず、別の女性の手を平気で握っている有り様です。これにはトランプ氏のみならず、身内の民主党の幹部や大口の献金者からも「ヤバい」との声が大きくなりつつあります。
バイデン大統領自身は「大丈夫だ。史上最高齢の大統領の記録を更新できる」と高を括っているように見えます。しかし、「次の大統領はトランプかも」と、うっかり口を滑らす有り様で、周囲は気が気でないようです。
有権者の半分以上は「バイデン氏は引退すべき」と考えているようですが、これといった後継者がいません。副大統領のインド系の女性カマラ・ハリスさんも人気も支持も低迷したままで、盛り上がりに欠けます。
共和党候補者選もトランプ中心
一方の共和党ですが、これまで4回開催された大統領候補者による公開討論会は毎回、互いの非難合戦で終わりました。これではトランプ前大統領が「俺は顔を出さない。時間とエネルギーの無駄だ」と言って、参加を辞退したのもうなずけるというもの。圧倒的な存在感を見せるトランプ前大統領ですが、相変わらずの「自己中オーラ」を振りまいています。
最近の集会でも「自分がホワイトハウスにカムバックすれば、その日のうちに、ウクライナ戦争を終わりにしてみせる」と、根拠なき発言を連発。しかも、同じ共和党のフロリダ州のデサンティス知事について、「あいつは俺のおかげで州知事になれた。選挙に出ると決めたとき、お金がないので、俺のところに選挙資金を無心に来やがった。かわいそうなので、支援してやったものだ。まだまだ俺の足元にもおよばない」と、ライバルの蹴落としにも力が入っています。
トランプ大統領のときに、国連大使を務めたニッキ・ヘイリーは女性候補として名乗りを上げていますが、ロシアが占領するウクライナの地名を思い出せず、支持率は頭打ちで、トランプとタッグを組んで副大統領の座を狙っているとのウワサが専らです。
要は、バイデンもトランプも年齢問題に加えて、バイデンは息子のラップトップ疑惑、トランプはポルノ女優口止め料疑惑と、スキャンダル満載の有り様。とても超大国アメリカを指導するには無理があるとしか思えません。
共和党候補ラマスワミの発言を読む
とはいえ、トランプ氏以外の候補者がどのような発言を繰り出したのかを知ることは、アメリカの有権者のみならず、アメリカの行方に関心を持つ海外ウオッチャーにとっても貴重な機会だと思います。
これまでの討論テーマはウクライナ、中国、起訴されたトランプへの対応が主なものでした。参加者のうち、際立った存在感を見せたのはインド系アメリカ人にして、ITベンチャーで大成功しているラマスワミ氏だけです。そのため、議論の流れは「政治家vs起業家」といった雰囲気でした。ラマスワミ候補は「自分は政治家ではありません。しかし、アメリカをより強い国家として蘇らせるには、アメリカが国家的な危機に直面していることに真摯に向き合うことが大事だと思います」と述べ、「経済格差がアメリカを分断国家に追いやっている」と危機感を露にしたものです。
すると、ペンス前副大統領は「アメリカは偉大で、多くの国民は真面目で、分裂など起きていない」と反論。ラマスワミ氏に対しては、他の候補者からも「まるでチャットGPTのようだ」とか「政治のアマチュアでオバマと同じじゃないか」、そして「外交のド素人には任せられない」と非難の嵐でした。
とはいえ、この自称「アマチュア政治家」への期待や支持が急速に高まっているのも事実です。そのことは政治献金額の伸び方に如実に反映されています。ペンス前副大統領やヘイリー元国連大使ら、著名な政治家を押さえて、ラマスワミ氏はトランプ氏に次ぐ資金調達力を見せているのです。
しかも、他の候補者は共和党系の保守的なメディアにしか登場しませんが、起業家であるラマスワミ氏は民主党系のメディアからの取材やインタビューにも積極的に応じています。さらには、民主党の候補者であったロバート・ケネディ・ジュニアとも連携する可能性まで述べています。
また、「ウクライナや台湾支援よりもアメリカ国内の経済活性化に予算を投じるべき」と主張し、「トランプ起訴は間違いで、自分が大統領に当選した暁にはすぐさま恩赦を与える」とトランプ支持者へのアピールも忘れません。相次ぐ起訴を受け、トランプ氏が立候補を断念せざるを得ない場合もあり得るとの計算高さをうかがわせる発言です。この38歳のインド系アメリカ人による大番狂わせに注目が集まっています。結果的に、支持率も資金集めも伸び悩んだペンス元副大統領は指名争いレースから離脱しました。
(つづく)
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。関連キーワード
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