2024年11月23日( 土 )

【先進人(5)】ガザの人々の日常を映画で伝える ヒューマニズムからの和平交渉を(後)

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ユナイテッドピープル(株)
代表取締役 関根 健次 氏

 10月7日に始まったハマス・イスラエル戦争により、双方が被害を受けている。攻撃による目に見える被害も甚大だが、イスラエルがパレスチナ・ガザ地区を完全封鎖したことにより水・電気・通信などのライフラインが寸断され、ガザに住む人々さえも状況を飲みこめないまま、被害が拡大していくことが懸念される。映画配信事業を行うユナイテッドピープル(株)代表取締役・関根健次氏は、ガザ地区のドキュメンタリー映画の上映・配信により私たちがより関心をもつよう働きかけるとともに、日本政府こそ第3国として和平交渉を進めるべきと訴えている。

日本にできることは

 ──関根さんはこうした活動を通して、イスラエル・パレスチナ問題に関わる多くの方々と接しています。

 関根 80年弱続いているイスラエル・パレスチナ問題について日本が何をできるのかは、今日も過去も未来も大きな課題です。我々が今回真っ先にすべきことは命を救うこと、戦争を止めることだと思っています。第三国である、地理的にも宗教的にも遠い日本だからこそ、和平交渉のために両者の間に立つことができます。現在カタールやアメリカが交渉で動いていますが、日本は戦争の痛みを知っている平和主義国として積極的に行動してほしいと願い、署名活動なども行っています。

 イスラエルの現職の文化遺産大臣がガザ地区に原爆投下をすることも選択肢と発言をしています。広島、長崎の次にガザ地区に原爆が投下されることを、私たちは、日本政府は、そして岸田文雄総理は容認できるのか、問いたいです。容認できないでしょう。そうであれば、日本政府が状況を収めるために外交・和平交渉をしっかりと行うよう、私たちは声を挙げるべきべきです。

 ──福岡という地方で生活をする私たちに何ができるでしょうか。

 関根 まずは何が起きているかを知り、関心をもってもらいたいと思います。停戦を実現させるためには、有権者として地元の国会議員に声を伝えていく必要があります。その声を福岡、九州から、そして日本の隅々から上げていくことは非常に重要です。これらの声が政府に届き、日本の世論として世界に届けば、国際的な世論形成にもつながっていくでしょう。

 第3国の役割に関する良い事例が1993年のオスロ合意で、ホワイトハウスでPLO(パレスチナ解放機構)のアラファト議長とイスラエルのラビン首相がクリントン米大統領の前で握手してサインをしました。PLOはかつてハマスと同じようにテロリストと言われており、これはイスラエルとパレスチナが、お互いの存在を認め合い、共存していくという歴史的な合意です。これをお膳立てしたのがノルウェーの外交官です。パレスチナとイスラエルの若者が戦争によって青春時代を奪われていることに心を痛め、平和な中東をつくりたいと政府を動かし、政府が両者をオスロに招待して秘密裏に和平交渉会議を開催しました。これこそが日本ができることだと思うのです。

 戦争を助長するのとは異なります。たとえば日本はウクライナに対して装備品を送っていますが、一方に支援するのでは戦争を助長することになってしまいます。日本には仲裁役としてどちら側にも武器を送ることはせず、両者が共存の道を模索するビジョンを示し、和平交渉を進めて欲しいです。もし日本が実際に和平の実現に貢献できれば、中東諸国から非常に評価されます。原油を中東に依存している日本にとって、非常に意義があります。

ガザ地区の子どもたち
ガザ地区の子どもたち

    どうしたら平和に導くことができるのか、1人ひとりが考え行動していく必要があります。僕自身は傷ついている人たちの命を救いたいというヒューマニズムの視点に立って行動することを心がけています。どちら側に立つかという問題ではありません。たとえば形勢が逆転して、ハマスがイスラエルに再び侵入して攻撃し続けるなら、僕はハマスを批判し、イスラエルの人々に寄り添うために訴えかけると思います。仮に誰かが目の前で交通事故に遭って、血だらけになっていたら、国籍、宗教を聞いて、それ次第で助けるかどうかを決めるなんてことはやらないでしょう。目の前で倒れている人がいたら助けるのが人間だと思います。今回の戦争でも、たまたま同じ時代に、同じ地球に生きる1人の人間として人道的な立場から問題に向き合っていきます。

(了)

【文・構成:茅野 雅弘】


<プロフィール>
関根 健次
(せきね・けんじ)
ユナイテッドピープル(株)代表取締役、(一社)国際平和映像祭 代表理事。ベロイト大学経済学部卒。大学の卒業旅行の途中、偶然訪れた紛争地で世界の現実を知り、後に平和実現が人生のミッションとなる。2002年、世界の課題解決を事業目的とするユナイテッドピープル(株)を創業。09年から映画事業を開始、多くのドキュメンタリー映画を配信している。14年より誰でも社会課題・SDGsがテーマの映画上映会を開催できる「cinemo(シネモ)」を運営開始。21年9月21日、ピースデーにワイン事業「ユナイテッドピープルワイン」を開業。

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