暗雲が立ち込めている世界経済と韓国の現状(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏コロナも終わり、世界経済は好転するはずだったが
2023年5月11日、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は新型コロナの収束宣言をした。コロナ感染から約3年4カ月ぶりのことである。コロナ感染による隔離や外出などの各種規制はなくなり、日常生活は少しずつ平常に戻ってきた。仁川空港は再び海外旅行に出かける人々で賑わい、活気を取り戻した。ソウルで最も人気の高い観光スポットである明洞(ミョンドン)もコロナ期間中は閑散としていたが、現在は再び戻ってきた外国人観光客でごった返している。ホテル・レストラン・空港など、旅行業界はコロナ以前と比べると、8割がたは回復していると感じる。
しかし、長期化しているウクライナ戦争やパレスチナ問題、米中覇権争いなどは、サプライチェーンに亀裂を生じさせ、原材料価格の高騰をもたらした。何よりも米連邦準備制度理事会(FRB)の急速な利上げは不動産を始め、各分野の景気を冷え込ませた。米国の利上げで資金は高い金利を求めて米国に流れるようになり、開発途上国などでは投資が減少しただけでなく資金流出に見舞われ、景気は失速している。先進国もコロナ期に景気浮揚策を取ったために負債が膨らみ、高金利の時代で金利の負担が重くのしかかっている。格付け会社S&Pによると、全世界のGDP対比の負債比率は約350%を超えていて、2030年には400%になることが予想されている。コロナ期間中に各国政府が景気を刺激するために大量の資金を供給したことで、市中の資金は豊富な状態だ。インフレを抑制するため、米政府も市場の資金を回収する緊縮政策と、利上げをして資金を回収する利上げ政策を実施した。
凋落する韓国経済への懸念
国家が成長するためには、国土や資源、人口、技術力が必要になる。韓国は国土が狭く、人口も少ないため、国内だけでは市場が小さすぎる。資源にも恵まれておらず、出生率も世界で最低の水準であり、人口の減少スピードも速い。となると韓国が頼れるのは技術力だけであり、その技術力に頼って今まで経済成長を遂げてきた。朝鮮戦争で廃墟になった当時の韓国の国民1人あたりのGDPは65ドルで、北朝鮮やフィリピンよりも貧しい時期もあった。国連から援助を受けた国が他国を援助する側になったケースは韓国が初めてだという。
当時、韓国は何もない状況のなか、資源を輸入してそれを加工して輸出する輸出主導型の経済成長モデルを採用せざるを得なかった。しかし、現在はサプライチェーンが崩壊し、世界はグローバル化から逆行し始めている。韓国の最大の輸出相手国は隣の中国で、中国への輸出は輸出の約4分1を占めていた。稼ぎ頭は半導体で全体の20%ほどを占めていたが、米中摩擦が激化するなか、米国が中国の半導体産業に対して各種規制を課したため、韓国はその影響をもろに受けている。影響はもちろん米国の規制だけではない。中国は韓国から中間財を輸入してそれを組み立てして輸出してきたが、半導体以外の分野、たとえばディスプレイ、車載電池などの分野では、技術の発達が著しく、韓国からの輸入が段々減少している。むしろ人工知能や自律走行、ロボット、ドローンなどの分野でリードしているのは韓国ではなく中国だ。
(つづく)
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