ニトリ社長に似鳥氏が復帰 創業者が終身社長にこだわるワケ(中)
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忍法に「分身の術」がある。1人が複数人いるかのように見せかける術のこと。実業の世界でも「分身の術」がある。創業者が、これぞと思う人物に事業を託す。だが、創業者とその「分身」である後継者との関係性が微妙になり、経営がぐらつく。創業者として実績があるゆえに、「自分ならもっとうまくやれる」と考えて、社長として現場に舞い戻る。
似鳥氏は安倍首相とゴルフに興じる「アベ友」
首相動静によると、13年11月4日と14年4月6日、神奈川県茅ヶ崎市のゴルフ場「スリーハンドレッドクラブ」で、安倍首相は似鳥氏とゴルフをしている。
〈似鳥氏は安倍政権への大口献金者である。アジアプレス・ネットワーク(16年6月21日付)は、「ニトリグループが、この4年間に、安倍首相を筆頭に安倍政権の閣僚6人に2,170万円政治献金していた。(中略)安倍総理は2011年から毎年献金を受け取っており、額が多かったのは2014年で、480万円に上る」と報じた〉(前出「ビジネスジャーナル」)
お付き合いの範囲を超える多額の金額を、多数の政治家に献金していた。そして、今回の安倍首相との会食だ。安倍首相と親密な財界人である似鳥氏に、どんな狙いがあるのか、憶測を呼んだのである。
強烈な円安の逆風で巨額の為替差損を計上
北海道を代表する「アベ友」財界人として頭角を現した似鳥氏が政治家のパトロン稼業から足を洗い、経営者として現場に戻ってきた。なぜか。
ビジネス情報サイト「東洋経済ONLINE」は、『ニトリ「79歳創業者」が10年ぶり社長復帰の深い訳』(24年1月22日付)と報じた。
似鳥氏が社長に復帰したのは、一言でいえば、業績が悪化したからだ。ニトリHDの24年3月期第2四半期決算(23年4月~9月)は減収減益だった。売上高は前年同期比1.5%減の4,168億円、似鳥氏が最も重視する経常利益は同19.2%減の569億円となり、24年3月期の34期連続での経常増益達成が厳しくなっていた。
ニトリの業績に直結するのが為替だ。商品の9割以上を海外で生産するニトリでは、対ドル1円の円安で年間20億円の利益が吹き飛ぶ。24年3月期は1ドル=130円前提で会社計画を立てていたため、強烈な円安の逆風を受けて、減益要因となった。
増益の決め手は「1ドル=155円」の円安でも利益が出る商品開発
功成り名を遂げて政治家のパトロンという役割に「現実逃避」していた創業者の似鳥氏が事業子会社の社長に復帰するのは、増益路線に戻すためだ。
24年3月期の連結決算は売上高が前期比1.7%減の9,320億円と減収の見込みだが、経常利益は2%増の1,470億円と増益を予想している。34期連続の経常増益は達成できる。「1ドル=155円」の円安でも利益が出る商品開発を進めてきたからである。
ニトリHDの32年の目標は売上3兆円、世界店舗数3,000店(現在981店舗)を掲げる。現在中国、台湾、マレーシアなどアジアで148店舗を展開している。
似鳥氏は「ユニクロさんは海外の店舗数が国内の2倍になっている。うちもユニクロさんを目指して海外の店を増やしたい」とビジョンを語る(東洋経済ONLINE)。その目標を達成するために、ニトリ社長だった武田政則氏を海外事業に起用したわけだ。
似鳥氏が事業を託せる「分身」としているのが、今回の人事でニトリ取締役専務に就任して国内事業を管掌する永井弘氏。永井氏は15年9月に入社する以前は、トヨタ自動車でマーケティング担当を経て、ファーストリテイリング執行役員として、ユニクロのグローバルでのマーケティングの責任者を務めてきた経歴をもつ。似鳥氏は「事業会社の後継社長は1年で永井氏にバトンタッチする」と明言している。
(つづく)
【森村 和男】
法人名
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