2024年12月23日( 月 )

正念場を迎えた歯科大学経営

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(学)福岡学園

 国家試験の合格率が全国最低レベルであり、定員割れが続く福岡歯科大学。その経営を行う(学)福岡学園では学生確保に向けたテコ入れ策を展開してきたが、芳しい成果が得られていない。2022年に50周年を迎えた同学園は今、経営の正念場を迎えている。

3期連続で最終赤字

 (学)福岡学園は福岡歯科大学、同大学付属の医科歯科総合病院、福岡看護大学、福岡医療短期大学、ぺんぎん保育園、介護老人保健施設「サンシャインシティ」、特別養護老人ホーム「サンシャインプラザ」、同「サンシャインセンター」を運営している学校法人だ。福岡市早良区田村一帯とその周辺部にこれらの施設が集まっており、とくに福岡歯科大学の9階建の本館をはじめとする施設群は、低層の住宅などが建ち並ぶなかで一際の存在感を放っている。2022年7月に創立50周年を迎えるにあたり、20年9月には総合病院の建替えが完了。その跡地に約550名収容の大ホールなどを設けた記念講堂も完成した。

 学園の経営は21年3月期から3期連続の最終赤字となっている。その要因だが、総合病院完成にあたっての医療経費の増大、50周年事業に向けた記念講堂の新設などにともなう経費増加などがある。また、教育活動収支差額が慢性的な赤字で、これは23年3月期の全支出約84億円のうち約44億円と52.2%を占めている人件費の高さが影響している。純資産は574億4,284万円と潤沢ではあるが、現状のような状況が続くことは決して好ましくない。

全国最低レベルの国家試験合格率

福岡歯科大学    学園においてとくに懸念されるのが、経営の根幹をなす福岡歯科大学の学生数が減少傾向であることだ。23年5月1日現在の在学者数は520人(ほかに大学院37人)で、定員充足率は83.3%。問題は新入学生の減少で、23年度の入学者数は70人と、募集定員の96人を下回っている。20年度に120人だった募集定員を減員したにも関わらずである。定員割れが続いている要因として、高額な学生納付金に対する教育水準の低さが挙げられる。

 学生は教養教育、基礎医学教育、専門教育を6年で学ぶ。納付金は初年度に550万円(24年度、入学金や授業料などのトータル)、以降、6学年までに毎年435万円となっており、総額は2,725万円。このほかに教科書代と実習器具代で6年間合計約168万円(目安の金額)が必要で、6年間の総納入額は3,000万円近くになる。一方、同大学における歯科医師の国家試験合格率は23年度の第116回試験において全国最低クラスの39.3%(新卒・既卒)で、これは平均合格率63.5%を大きく下回る。

 現在、歯科系学部を有する大学は国公立を合わせ約30校あるが、そのなかのワースト2位だ。同試験での合格率最下位は奥羽大学歯学部(東北歯科大学を含む)の38.6%だが、福岡歯科大学は過去に同大学を下回る最下位となったこともある。国家試験合格率の低さは教育レベルを反映するが、これが新入学生が減少していることの理由の1つだ。なお、福岡歯科大学の偏差値は「ボーダーフリー」(河合塾の判定、偏差値が付かない状態)である。

飽和状態にある歯科医師・医院

 そして、同大学において新入学生が減少傾向にある理由として、歯学部自体の不人気さがある。日本国内の歯科医師や歯科医院の数は飽和状態にあるが、それは全国に歯科医院が約6万8,000軒あり、約5万6,000軒あるコンビニエンスストアよりも1万軒以上多い状態であることからも想像ができる。その結果、歯科医師の平均年収は約700万円台と、1,000万円台を超える他科の医師に比べて低い。これでは、3,000万円に近い学費を払ってまで歯科医師になろうという学生が少なくなってしまうのは致し方ないだろう。

 なお、系列の福岡看護大学は17年開学で、看護学部看護学科の単科大学。在校生は410人(4年制、23年4月時点)で、定員充足率は各学年の定員が100人であることから100%を超え、経営は安定しているといえそうだ。ただ、福岡医療短期大学は、主要学科である歯科衛生学科(3年制)の定員が240人であるのに対し、在学生は180人と定員割れしており、23年に共学化し学生の確保を強化しようとしている。

学生数回復へテコ入れ図るが

 福岡学園は、その存在意義について危機感をもち、そのため「超高齢社会を迎えたいま、身体の健康と深くつながっている歯科医療」という観点に立ち、「全身を診る口腔医学」へと教育内容を充実させるため、「歯学部歯学科」から13年に「口腔歯学部口腔歯学科」へ名称変更を行った。さらに、老朽化した施設の建替えなどキャンパス整備計画を推進することで教育環境の充実を図り、全体として学生数の回復に努めようとしている。

 しかし、言葉は悪いが、「出来の悪い歯科学生の受け入れ先」という巷の大学への評価を覆すにはほど遠い状況だ。これがさらに続けば、そう遠くない将来、経営が行き詰まる可能性が高い。「経営体力があるうちに」との判断で行われていると見られる数々のてこ入れ策は、福岡学園が今、経営の正念場、今後の生き残りに向けた分岐点にあることを示している。ただ、今後の少子化の流れを考えると思惑通りに進むとは限らない。現状の生き残り策に加え、他の学校法人との合併などといった策も考慮すべきではないか。

【田中】


理事長:水田 祥代
所在地:福岡市早良区田村2-15-1
設 立:1972年8月
基本金:60億6,923万円
業 種:学校・病院・高齢者介護施設運営
教育活動収入:(23/3)68億1,611万円


仕入先:アトル、モリタ、福岡デンタル販売
販売先:学生・園児、一般個人
取引行:西日本シティ(本店営業部)、福岡(本店営業部)

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