50年を経て新たなフェーズ 海外に打って出る林業・木材産業
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(株)豊後木材市場
代表取締役 安部 省祐 氏この50年、外国産材に押され続け停滞してきた日本の林業・木材産業。だが今、さまざまな要因から状況が変わり、国産材を海外へ輸出するなどという新たなフェーズに移行しつつある。全国木材組合連合会副理事長を務め、国内や九州の木材活用の状況に詳しい(株)豊後木材市場の安部省祐代表取締役にその事情について話を聞いた。
外材が普及した理由
日本では長く国産材の活用が滞り、林業・木材産業は厳しい環境下にあった。活用が進まなかった要因は、第二次世界大戦後の復興需要、とくに住宅建築需要を支えるだけの木材が、国内で確保できなかったことにある。建築用材としてのスギやヒノキなどが大量に植樹されたが、住宅難を解消するための旺盛な需要に追いつくことができず、1960年代頃からは外国産材の輸入量が増え、それを加工する製材所も増えた。
これにより、日本国内で使用される木材は、外国産材が多くを占め、加えて耐震強度を増すために集成材の活用も幅を利かせるようになり、製材と呼ばれる従来型の木材の活用は減少した。また、外国産材は無関税で輸入されたため、国産材は価格競争力を失い、結果として林業・木材産業は勢いを失った。
現在、戦後に植林されていたスギやヒノキなどの木は、建築用材として適齢期である樹齢50年に達するものが大半になっている。「大径木(たいけいぼく)」と呼ばれる、伐採や加工が難しく建築用材として扱いづらい木も増え、林業・木材産業の関係者にとって大きな課題の1つとなっている。
「この50年の間に苦境を強いられ続けてきた日本の林業、木材産業は今、大きな転換期を迎えようとしている」。そう語るのが、(株)豊後木材市場の代表取締役・安部省祐氏だ。
日本産材が争奪戦に!?
「現在、建築用材となる針葉樹を供給できるのは、日本とアメリカ、カナダ、ヨーロッパ、ニュージーランドに限られています。ただ、欧米各国では山火事が多発していることなどの影響もあり、環境保全の観点から森林伐採に制限がかかりつつあります。その結果、日本が注目され、国産材の争奪戦が始まっている状況なのです」
外国産材のなかでも熱帯地域にある広葉樹は建築用材に向かず、建築用では合板に利用されてきた。その合板もウッドショックによる価格高騰を受け、今では住宅用合板の多くが国産材へシフトしているという。日本には、樹齢50年程度の建築用材に適した木が手つかずのまま大量に存在しており、今後は日本が木材輸入国から輸出国へ、海外へ打って出る環境が出来上がろうとしているわけだ。
外国人材を労働力に
もちろん課題もある。林業は深刻な人手不足であり、伐採作業を行う人材の確保がままならない状況だ。安部氏はその点について、次のように指摘する。「外国人労働者を受け入れる特定技能について、政府は新たに運送、鉄道に加え、林業と木材産業も加える方針です。実現すれば、川上から川下まで一気通貫で外国人労働者が参入できることになり、これで人材不足はある程度解決できます。たとえばベトナムには林業大学がありますから、そうした国から専門家を連れてくることができようになります」。
加えて、「国産材の海外輸出が活発化すれば、これまで課題となっていた大径木の利用にもつながるはず」と話す。海外の富裕層が本格的な日本家屋の建築を求めているなどといった話が安部氏のもとに舞い込んでくるようにもなったという。その際に必要とされるのは、日本で普及している木造軸組(在来)工法であり、重厚感がある大径木は本物感を演出するために必要とされる素材となるからだ。「そうしたプロジェクトに対応する、大工や職人などの人材は、日本にまだ数多く存在します。何より、これまであまりにももったいなくて伐採してこなかったヒノキなどの立派な大木が、とくに九州にはまだまだ数多くあるのです」(安部氏)。
現在、高値が付きにくい状況にある大径木だが、海外では異なる評価が行われるケースも見られるのだという。いずれにせよ、国産材の海外輸出がより積極的に行われるようになれば、それは日本において長く育まれてきた建築文化を海外に輸出することにもつながる。こうしたことにより、林業・木材産業は充分成長産業として発展することができると安部氏は話す。また安部氏は、「そうした状況を理解し、林業・木材産業の関係者が同じベクトルで取り組んでいくことも大切」と語っていた。
【田中 直輝】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:安部 省祐
所在地:大分県由布市挾間町三船744-1
設 立:1968年9月
資本金:1,800万円
<PROFILE>
安部 省祐(あべ・せいゆう)氏
1959年生まれ。(一社)全国木材組合連合会副会長、全国木材協同組合連合会副会長、大分県木材協同組合連合会理事長。大分県議会議員に1991年に初当選し、2009年3月26日から11年3月10日まで県議会議長を務めた。在大分フィジー共和国名誉領事館の名誉領事。大分県中小企業団体中央会副会長、大分市工業連合会会長でもある。法人名
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