2024年12月21日( 土 )

自民党の政治資金パーティー“裏金事件”の本質と背景を考える(4)

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鹿児島大学名誉教授
ISF独立言論フォーラム編集長
木村 朗

 昨年から世間の注目を集めている自民党の「裏金」問題では、今年1月末に特捜部の追及がなぜかひと段落したように思われた後に、「派閥」解消や政治倫理審査会開催の問題に論議が絞られてきているようだ。しかし、この裏金問題はこれまで長年、自民党政権下で問題視されてきた「政治とカネ」の問題がまたしても浮上したものであり、かなり根深い問題であると言わざるを得ない。

4.今後の日本政治の課題と展望

裏金 イメージ    今回の自民党の裏金問題を派閥の会計責任者や政治家の秘書だけに責任を課し、派閥の解消や政治資金規正報告書の修正、そして見せかけだけの政治倫理審査会の開催だけで終わらせてならない。

 ここでこれ以上この問題を詳しく論じることはできないが、この問題の根本的解決には、連座制の導入や現金での還付金・寄付金のやり取りの禁止、企業・団体からの個人・派閥だけでなく政党(本部・支部)への献金・寄付の禁止などが必要である。検察当局や国税当局にも疑惑のさらなる真相解明と責任追及を改めて求めたい。

 さて、いまは確定申告の時期だが、国民・納税者の怒りと政治不信も頂点に達しようとしている。長年政権の座にいて裏金・汚職問題にどっぷりとつかってきた与党・自民党に自浄能力が欠けているのは明白だ。政府もまたしかりである。「収支報告書が訂正されれば、個別の議員たちも告発していく」という考えを上脇教授も表明しており、他の市民団体も検察審査会への告発を準備していると伝えられている。

 最後に注目していだきたいのは、平野貞夫氏の「しかし、今度のパーティー・キックバック裏金問題というのは、政治資金規正法の倫理、政治とカネの倫理に違反している部分もありますが、それだけじゃないわけでしょ。明確な法律違反、犯罪という部分がありますから、岸田さんも与党も政倫審で政治資金規正法の問題をやるということは、政治責任の問題にしようということでしょ。法的な違反の問題についてそれを決めるのは司直ですから。しかし、それをさせなくするために、あるいはそれを柔らかくするために政治倫理審査会を悪用するという企みがあるんじゃないかという問題が私はあると思う」という重要な証言である(前述の同番組より)。

 「政倫審が終われば一件落着」という政治家(与野党を問わず)側の思惑があるとするならば、それはとんだ思い違いである。そのような意識がもしあるならば近いうちに手痛いしっぺ返しが待っていることは違いない。これ以上国民をなめてはならない。

 最後に、「政治とカネの問題」を含む日本が直面する重要課題を解決するためには、1993年の細川政権、2009年の鳩山政権に次ぐ3度目の政権交代を実現するほか道はない。そのためにも、有権者・納税者だけでなく主権者でもある国民がその自覚をもって、いまの日本の政治状況を直視して問題の所在がどこになるかを本当に知ったうえで、来る総選挙・国政選挙において正しい選択をしていただくことを切に願っている。

(了)


<プロフィール>
木村 朗
(きむら・あきら)
1954年生まれ。北九州市出身。北九州工業高等専門学校を中退後、福岡県立小倉高校を卒業。九州大学法学部、同大学院法学研究科(博士課程在籍中に交換留学生としてベオグラード大学政治学部留学)、同法学部助手を経て、88年に鹿児島大学法文学部助教授、97年から同学部教授(20年まで)。専門は平和学、国際関係論。鹿児島大学名誉教授。日本平和学会理事、東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会共同代表、国際アジア共同体学会理事長、元九州平和教育研究協議会会長などを歴任。

■主な参考資料(記事・動画など)

※なお、その他の新聞各紙・インターネットなどの関連情報については省略させていただく。

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