能登半島地震による輪島市の復旧状況(3)
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運輸評論家 堀内 重人
元旦の午後4時10分に発生した直下型地震の能登半島地震。気象庁の発表では、この地震のマグニチュードは7.6であり、内陸部で発生する地震としては日本でも稀な大きさの地震であったという。3月10日時点の輪島市の交通インフラやライフラインの復旧状況を中心に、現状を報告したい。
交通インフラ(3)航空
能登半島地震の影響で、日本海側の主要空港では新潟空港が元旦の全便が欠航した。それ以外に能登空港、富山空港、小松空港、庄内空港などを発着する便に、欠航や遅延などが発生した。能登空港は、輪島市から車で30分ほどの場所にある空港である。地震により滑走路に深さ約10cm、長さ10m超の亀裂が4~5カ所発生した。
地震発生当初は、滑走路の使用を1月4日まで停止すると発表されていた。ところが、翌1月2日の午後5時47分頃に羽田空港C滑走路上で事故が発生した。能登半島地震への対応のため、能登空港が被災して使えないため、新潟航空基地へ物資を輸送した後、船などで能登半島へ物資を輸送する計画であった。
その任務を、海上保安庁の固定翼機「みずなぎ1号」(DHC-8型機)が担うことになった。滑走路での待機時に、着陸直後の日本航空の旅客機(新千歳空港発羽田空港行きA350-941)と同機が衝突し、炎上する事故が発生した。この事故で、海上保安庁機の乗員6人のうち、機長以外の5人が死亡し、機長も重傷を負ったが、一方の日本航空機側は子ども8人を含む乗客乗員379人全員が脱出したため、幸いにも死傷者などを出すことは無かった。
羽田空港での追突事故と、能登空港の滑走路の安全性、空港周辺の道路の被災状況などを検討した結果、救援物資を輸送するヘリコプターの運航を除き、1月24日まで閉鎖することが決定した。この結果、救援物資輸送は滑走路ヘリコプターで実施されることになった。1月11日に仮復旧が完了し、同日より自衛隊輸送機の発着が可能になった。これにより自衛隊が、災害復旧や被災者の救援などに従事しやすくなった。1月27日からは、全日空が能登~羽田間の定期航空便の運航を再開したが、当面の間は便数を削減した臨時ダイヤで運航となった(写真8)。
郵便・宅配便
地震後の郵便であるが、震源地に近い新潟県・富山県・石川県・福井県の全域で道路が寸断されていることから、集配達が機能しない状態になった。震源地から離れた北海道・山形県・兵庫県の一部地域でも、1月2日の羽田空港における事故の影響があり、郵便物・荷物・ゆうパックの配達に著しい遅延が生じた。
日本郵便は珠洲市・輪島市・七尾市・志賀町・穴水町・能登町・中能登町に合計100以上の郵便局があるが、それらすべてにおいて1月4日と5日の2日間、窓口業務を休止した。1月9日の時点でも97の郵便局で窓口業務が休止されていた。
一方、珠洲市・輪島市・穴水町・能登町の郵便局では、同23日になって地震前に受け付けた郵便物や荷物の引き渡しが再開された。新規の郵便物やゆうパックの受付は同31日になってから再開された。珠洲市・輪島市・穴水町・能登町を宛先とする郵便物の一部の受付は、2月15日になって再開された。そして同27日になって、珠洲市の大部分と能登町の全域で、郵便物の各戸への配達が再開された。
宅配便は地震の発生により、ヤマト運輸は石川県全域で、佐川急便は同県七尾市・輪島市・珠洲市・中能登町・能登町・穴水町・志賀町で、荷物の預かりを停止した。佐川急便では航空機事故の影響などから北海道、ヤマト運輸では北海道以外に道路などが被災した新潟県・富山県・福井県に関係する荷物の配達が遅延した。1月31日の段階でも、佐川急便が輪島市・珠洲市・穴水町で荷物の取り扱いを中止し、ヤマト運輸は能登町でも荷物の扱いを停止していた。
観光業
地震が発生すると、鉄道や航空機の運休以外に道路も被災する上、旅館(写真9)なども地震で損壊するなどの被害を受けるため、旅行どころではなくなる。北陸地方の宿泊施設は、宿泊予約のキャンセルが相次いだ。地震は自然現象であるから、旅行者自身には責任がないことから、キャンセルする際もキャンセル料などは徴収されない。
宿泊業界にとれば、新型コロナウイルス感染症が、23年5月に五類感染症に移行したため、インフルエンザのような扱いになったこともあり、宿泊業への影響も落ち着きつつあった。だが、能登半島がある石川県だけでなく、北陸地方全体が地震で被害を受けたとする風評被害が広まった。これは福島第一原発の事故の時も、東北地方全体が放射能で汚染されたと思う人が多くいたのと、結果的に同じである。
この地震では、能登半島を観光していた訪日外国人も被害に遭った。危うく脱出が困難に成りかけたグループもあり、そのことが大きく海外で報道された。そこで日本への旅行を委縮する外国人が増加するのではないかと懸念された。しかし1月全体の訪日外国人は、268万人とコロナ禍が始まる前年の19年の同月とほぼ同じ水準となり、地震の発生により外国人観光客が来なくなるという心配は杞憂に終わった。
(つづく)
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