曙氏が死去 外国人初の横綱の早逝に思うこと
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大相撲において、今や外国人力士は欠かせない存在だ。1972年7月場所で初優勝した、米国・ハワイ出身の高見山大五郎氏は、そのパイオニア的存在。相撲での取り組みはもちろんのこと、ユーモラスな「丸八真綿」のテレビCMなどでお茶の間の人気者になった。
以降、小錦八十吉氏、曙太郎氏らハワイ出身の力士が続き、ヨーロッパ出身力士、そして歴代最多優勝の白鳳翔氏をはじめとするモンゴル出身力士などが台頭し、今に至っている。
そうした外国人力士の一人である曙氏が54歳で亡くなったことが11日に分かった。心不全だったという。曙氏は外国人力士として初めての第64代横綱になった人物。外国人力士の地位を本格的に定着させた功労者といっていい存在だ。
現役時代は身長2m超、体重200kg超という体躯をベースとした突き押し相撲で、若乃花、貴乃花らと土俵上で熱戦を繰り広げ、衰退傾向にあった大相撲を盛り上げた。若貴兄弟との比較でヒール役ともみられたが、その木訥とした語り口に愛嬌があり多くのファンに愛された。
さて、相撲漫画の名作に「バチバチ」シリーズがある。佐藤タカヒロ氏によるもので、第1部「バチバチ」、第2部「バチバチ BURST」(バチバチ バースト)、最終章「鮫島、最後の十五日」で構成される。「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)で、2009年から18年まで掲載された。
主人公・鮫島鯉太郎が相撲部屋に入門後、部屋の親方や先輩、後輩力士、ライバル力士との交流と対戦を通じ、成長をしていくという物語。最終章では、鮫島が優勝に手が届くか…、というところでストーリーは終わっている。というのも、作者が18年7月3日に急逝してしまったからである。
鮫島は小柄な、業界用語でいう太りにくい体質の「ソップ体型」で、何度も休場を経験。最終章はタイトルにもあるように1場所15日間をフルに闘う内容で、連日の激しい取り組みもあり、命の危険を感じたことから、最後の場所として引退をかけて出場していた。
大相撲はつまり、常人では計り知れないほど、肉体的なダメージをともなう競技なのである。曙氏と鮫島は体型こそ対極にあるが、こと相撲への取り組み姿勢は共通するものがある。横綱には身体能力だけでなれるわけがなく。しかもその地位を守るのはよほどの努力がないと叶わないからだ。
力士は短命といわれるが…
ところで、力士は短命と目されている。読売新聞系のサイト「ヨミドクター」に、「どうして力士は短命なのか……歴代横綱の平均没年齢は62歳、相撲改革が必要!」(2021年7月7日)という記事があるほどだ。
おそらく近年は、医療や栄養学の進歩などから、より長寿命化の傾向にあると見られるが、昨年12月には元関脇・寺尾の錣山親方がうっ血性心不全により60歳で亡くなるなどしており、やはり力士は短命な傾向にあるという見方はぬぐえない。
もっとも、前述した高見山氏は79歳、小錦氏は60歳で存命だから、一概にそうとは決めつけられない部分もある。曙氏がこの両名と異なるのは力士引退後も、プロレスや総合格闘技の世界で活躍したことだ。
要するに、より強度の高い肉体的負担を受け続けてきたことが、同氏の54歳という年齢での死去につながったのではないか、と想像されるのだ。
調べてみると、曙氏の力士としての現役期間は13年と、高見山氏の20年、小錦氏の15年と比べ少ない。しかし、横綱としての重圧、他競技での活躍を考えると、より肉体をいじめ抜いてきた人物といえるだろう。
ご冥福を祈りたい。合掌。
【田中 直輝】
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