日本の少子化問題に関する随想(中)
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元国連日本政府代表部大使
元国連事務次長
赤坂 清隆 氏NetIB-NEWSでも「BIS論壇」を掲載している日本ビジネスインテリジェンス協会(中川十郎理事長)より、元国連日本政府代表部大使や元国連事務次長を歴任した赤坂清隆氏による少子化問題に関する論考を共有していただいたので掲載する。
お見合い結婚というのもずいぶん減ったというデータがあります(下図)。男女共同参画局のデータによると、1940年代ごろまでは、お見合い結婚の割合が6~7割を占めていたのが、その後急速に減り始め、2010年代には5.3%にまで下がっています。団塊の世代に属する私の若いころは、お見合い結婚が盛んでした。オフィスでは、上役がニコニコしながら机の引き出しから若い女性の写真を取り出して、「どうだ、お見合いしてみないか?」とよく聞かされました。新幹線の後ろの席で、中年のおばさん2人が、恋愛結婚とお見合い結婚の優劣を語り合っていたのをよく覚えています。「恋愛結婚というのは、結婚が終着駅で、それから先は発展しようがないのに対して、お見合い結婚は、結婚が出発点だから、それから発展するのよ。断然、お見合いの方が長持ちするわよ」と1人のおばさんが熱を込めて話し、相方は相づちを打っていました。古き良き時代でありました。
ところで、フランスでは、両親が結婚はしていないという婚外子の割合が高いのですが、1997年には、事実婚も法律婚同様に社会保障を受けることができる制度ができました。そのような制度改革の結果、2006年には出生率が2.03にまで急上昇したのですが、そのフランスでも2014年を境に出生率は下がっており、2023年は1.68 となっています。私がフランスに住んでいた2000年代初めごろ、「フランス女性の多くは、子どもは欲しいが、ダンナはいらない」という話をよく聞きました。子どもは可愛いが、ダンナは面倒で、わずらわしいという女性の気持ち、フランス人女性でなくとも、「その気持ち、わからないではない」と、私もひそかに思った次第です。
次に晩婚化ですが、昔に比べて、初めて結婚する人の年齢が、平均をとると高くなりましたね(下図)。それでも、2022年の内閣府の調査では、初婚のピークは男女ともに27歳で、これは過去20年間ほどの間では、ほとんど変化していないようです。年齢層の高い人の初婚が増えて、平均値を高めているだけで、やはり一番多いのは、27歳あたりというのは変わらないようです。
第三に、晩産化ですが、年齢別の出生率を見てみましょう。25歳から30歳あたりを過ぎると、出生率が急速に減少しています。これはよく分かりますね。2022年の母親の出産時の平均年齢は、第1子が30.9歳、第2子が32.9歳、第3子が34.1歳となっています。過去に比べると、やはり晩産化の傾向は続いています。
非婚化、晩婚化、晩産化の傾向を見てきましたが、将来結婚はしても子どもは欲しくないという日本の若者が増えています。2024年3月7日付のニッポンドットコムの記事「未婚男女の過半数、『子どもほしくない』」がこの現象を伝えています。ロート製薬が公表した「妊活白書」2023年版で、18~29歳の未婚男女400人のうち、将来子どもは欲しくないと回答した割合が55.2%に上ったということです。女性よりも男性の方が多く、約6割が子どもを欲しくないと回答したとのことです。どうしてなのでしょうか?
これとは別のBIGLOBEによる「子育てに関するZ世代の意識調査、2023年」でも、45.7%が「将来子どもが欲しくない」と回答しているのですが、その理由は、「お金の問題(18%)」「お金の問題以外(42%)」「両方(40%)」という結果でした。お金以外の問題としては、育てる自信がない、子どもが好きではない、子どもが苦手、自由がなくなるから、といった事由が上位だったようです。
(つづく)
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