中国は果たして「生産過剰」なのか(前)
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このところ、中国の生産過剰問題が取りざたされている。アメリカのイエレン財務長官は、先ごろの訪中時に「中国は新興の業種で生産過剰の兆しがある」と述べた。これにより低価格な品物が大量に輸出され、アメリカの会社や労働者の利益が損なわれているほか、メキシコやインドなどの会社も影響を受けていると見ている。また、生産過剰によりサプライチェーンの偏りを招いて世界経済の回復に支障が出ているとも強調した。
EUもこのところ、中国製の電気自動車(EV)に対する補助金の調査を急いでいる。EU議会で示されたこの調査に関するレポートを見ると、中国の安価なEVは電池の供給や生産がだぶついていることの表れだ、と書かれている。
中国の自動車はアメリカではほとんど販売されていないが、中国製EVはEUが主要な輸出先となっているほか、東南アジアや南米などにも行き渡っている。
「中国は、政府の補助金に支えられた安値を売り物にして、EUにEVや電池を輸出するかたちで国内の生産過剰を転嫁している」という欧米の主張に対し、中国の王文濤商務大臣は4月7日、フランスのパリで行われたヨーロッパの中国EVメーカーによる会合で、「中国のEVメーカーの急成長は補助金のおかげではなく、技術革新やサプライチェーンの完備、市場競争によるものであり、中国のEVは生産過剰だという欧米の指摘は根拠がない」と反発した。
王大臣は、「エコ型経済について中国は『生産過剰』だ、という欧米の主張はまるで根拠がない。EUは世界的な発展やサプライチェーンの違いによる正常な輸出を 『生産過剰』などと見るべきでない。その論理でいうなら、EU各国の多くの優れた商品も生産過剰になってしまう」と強調した。
中国は「生産過剰」への指摘にかなり神経質になっているようだ。「人民日報」は、生産過剰は決して悪いことではないとコメントしている。「製品の質が良く競争が公平であれば、生産過剰は世界の経済や生活にプラスになる。中国は世界のためにより良質で価格も手ごろなものをつくる力があり、これは人類全体の利益にもなる。ところがアメリカは、生産過剰を利用して中国を締め付けている。これは事実上、自身の利益を守ろうとするがゆえに講じた手段だ」との主張である。
ただし、コロナ禍の影響で中国は輸出が落ち込み、国内需要も低迷して、各業種で生産過剰問題が顕在化してしまっている。中国の「第一財経日報」によると、EVメーカーについて、現在生産設備を有しているのは80社あるが、実際に製造しているのは15社にとどまり、中国全体で1,500万台分の設備が遊んでいるという。
長江証券のチーフエコノミストである伍戈氏は、雑誌「財新」の取材に対し、「今は、ハイテク製造業の稼働率の落ち込み幅が従来型の業種より大きくなっている」と述べている。つまり、ハイテク製造業における生産過剰問題は、現段階では従来型の産業よりもより深刻なものであり、こうした状態は過去にはなかったという。中国は新エネ車やリチウム電池、太陽光発電といった業種が急成長しており、これらは政府の取り組みや安定した産業体系による部分が大きい。ただし今は、深刻な生産過剰問題に注意しなくてはならないという。
(つづく)
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