2024年12月22日( 日 )

外国人技能実習制度の見直し

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 少子高齢化の影響で若年労働人口も年々減少しているなか、外国人労働者の雇用により人手不足を解消しようとする企業が増えています。厚労省が公表している「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ」によると、2023年10月末時点で、外国人労働者数は約204万人で前年比約22万人増加し、届出が義務化された07年以降、過去最高を更新したとのことです。このうち、在留資格別では、「専門的・技術的分野の在留資格」が約59万人と最も大きく、次いで「技能実習」が約41万人です。

 今年2月9日、政府はこの技能実習制度を廃止して、新たに「育成就労制度」を設ける方針であることが報道されています。そこで本稿では、まずは現在の技能実習制度について解説いたします。

岡本弁護士
岡本弁護士

    そもそも技能実習制度は、日本の技能、技術、知識を開発途上地域などへ移転し、「人づくり」に寄与する国際協力の推進を目的として、1993年に創設され、17年からは新たな技能実習制度となっています。企業単独で受け入れる企業単独型もありますが、大半は事業(協同組合)や商工会等の営利を目的としない団体(監理団体)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等(実習実施者)で技能実習を実施する方式(団体監理型)です。

 入国後1年目の技能などを修得する活動(第1号技能実習)、2・3年目の技能などに習熟するための活動(第2号技能実習)、4年目・5年目の技能などに熟達する活動(第3号技能実習)の3つに分けられ、最長5年間の期間で、技能実習計画に基づいて技能等の修得が行われます。1号から2号へ、2号から3号へ移行するためには、技能実習生本人が所定の試験に合格していることが必要です。

 技能実習の対象職種は、90職種165作業(23年10月末時点)ですが、人手不足が深刻な①建設関係、②食品製造関係、③機械・金属関係が多くなっています。

 また、技能実習生を受け入れるには、監理団体に加入する必要があり、その入会金や年会費などが必要になります。また、初期費用として、採用のための現地渡航費や技能実習生の入国準備費用(ビザ費用、入国前講習費用、渡航費等)、入国後の研修費用などで50~100万円の費用がかかります。また、受け入れた後も、監理団体や送出機関に支払う管理費用、帰国渡航費、技能検定料、寮費などの費用が発生しますし、当然のことながら、最低賃金以上の賃金の支払い、社保などへの加入義務、割増賃金の支払いなども発生します。このように、日本人を雇用するのと変わらない程度の費用負担が発生しますので、決して「安い労働力」でもありません。

 もっとも、技能実習制度は国際貢献という目的ですが、実態は労働環境が厳しい業種を中心に人手を確保する手段になっており、そのためさまざまなひずみが生じているともいわれています。そこで、人材確保と人材育成を目的とする新制度として「育成就労制度」が創設されることになりました。


<INFORMATION>
岡本綜合法律事務所

所在地:福岡市中央区天神3-3-5 天神大産ビル6F
TEL:092-718-1580
URL: https://okamoto-law.com/


<プロフィール>
岡本  成史
(おかもと・しげふみ)
弁護士・税理士
岡本綜合法律事務所 代表
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。ケア・イノベーション事業協同組合理事。

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