山形屋の私的整理を受けて 現地レポート
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5月10日、鹿児島県の老舗百貨店「山形屋」が、私的整理の一種である「事業再生ADR」手続きを活用することを発表。鹿児島県民を震撼させた。
ADRに至った経緯に関して山形屋は、鹿児島に進出してきた大型商業施設などの台頭、耐震工事やフロアのリモデルを行った矢先の新型コロナウイルス感染拡大の影響などによるものだとした。実際、コロナ禍に入った2021年2月期の決算では、売上高が前期比で100億円以上落ち込み、大幅な経常赤字となった。以降も23年2月期まで、連続経常赤字となっている。
今後はメインバンクである鹿児島銀行を筆頭として再建に向けた取り組みを進める方針だ。5月28日に開催される債権者会議で、取引行の満場一致が得られれば、事業再生計画の実行となる。
今回の件について、鹿児島市民に話を聞いた。
50代女性「山形屋は鹿児島にあるべき存在。子どものころは、屋上にあった遊園地に行っており、思い出深い場所。山形屋のお歳暮やお中元などは喜ばれるので、今でも大事な節目には利用している」
50代女性「山形屋の包装紙に包まれたお祝いの品は、それだけで箔が付く。鹿児島唯一の百貨店なので、なくなったら困る」
山形屋への激励の声がある一方で、このような声も聞かれた。
50代男性「小さいころは親に連れられてよく行っていたが、最近ではほとんど行かない。行くとすれば地下の食品売場などだが、客層もどうしても50代以降で固まっているような印象」
10代女性「基本的に遊びや買い物などは、鹿児島中央駅周辺で行う。親に連れられて山形屋にいくことは少しあるけど、友達とは行かない」
50代女性「利用するのは手土産などを選ぶときぐらい。やはりアミュプラザやイオンができてから、衣料品などはそちらで買うようになってしまった」
山形屋は鹿児島県民にとって「当たり前にそこにあるもの」であるということは間違いないようだ。今回の私的整理についても、インタビューをした全員が知っていた。一方で山形屋も言及しているように、周辺の他商業施設の開業で多大なる影響を受けている。
しかしまた、山形屋が与える影響も大きい。取材当日は山形屋の店休日となっており、周辺の人通りはあまり多くなかった。周辺の店舗にとって、山形屋の来店客は自店舗の顧客になる可能性もあり、この話題に関してはデリケートになっている様子だった。
インタビューを行う中で、多くの人々が口をそろえるのが「大切なときには山形屋の贈り物を渡す」ということだった。100年以上にわたり地元民から愛され、圧倒的地位を築いてきた山形屋。その信頼を取り戻すべく、経営改善に取り組んでもらいたい。
【立野夏海】
法人名
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