2024年11月21日( 木 )

円安のデメリット、本質的には何もない(後)

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 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
 今回は5月14日発刊の第353号「円安のデメリット、本質的には何もない~容認できない悪い円安論~」を紹介する。

為替は果ではなく因である

 市場関係者もエコノミストも為替に関する因果関係を逆転させるべきである。為替は短期的には経済実態を投影して動くこともあるが、より長期的には政策意図により突き動かされるものである。つまり為替は結果なのではなく、原因なのだということを知らなければならない。

 かつて円高は日本たたきの最有力の手段であった。当時日本はデフレで円の購買力が強まっているのだから円高は当然だ、円高という現実を受け入れるべきだと多くのエコノミストが主張していた。しかしその円高が日本の競争力を奪い、企業とビジネスチャンス、雇用、資本の海外流出を促進し、日本の内需を痛めつけ、賃金に下落圧力をかけたことでさらにデフレを進行させた。円高とデフレの悪循環を断ち切ったのは、円安誘導を起点にリフレを実現しようとしたアベノミクスと黒田異次元金融緩和によってであった。 

円安の先に日本大復活が見える 

 為替は将来の経済を決定する最も重要な手段である。日本の産業復興を切望する米国が、円安を誘導しているのだ。韓国が2008 年から13 年の著しいウォン安の過程で飛躍的に競争力を強め日本のハイテク企業をなぎ倒したが、円安の定着は日本の劇的再台頭を準備するだろう。この軌道上には製造業立国として、サービス(観光)立国としての日本再登場が見えている。

 円安は世界の需要を日本に集中させることで過去最高水準の設備投資の活況を引き起こしている。また高収益と内外賃金格差により、企業の賃上げモチベーションを高めデフレ脱却をたしかにしつつある。それにより長期的には日本の強い円が復活する。日本は今の円安の僥倖を享受すべきであり、間違っても円高誘導など、無駄な抵抗をすべきではない。 

世界最大債権国の日本通貨、投機売りに勝ち目はない、円高再燃こそ警戒せよ

 市場は投機を繰り返して落ち着きどころを探っているのではないかと考えられる。まず地政学の理由により長期円安との相場観が形成された。投機を繰り返して円の底値を探っていると思われる。

円安投機は終盤か

図表4: 世界最大、日本の米国国債保有/図表5:ダントツの日本の対外純資産

 日銀、政府は円売り投機に慌てふためく必要はない。日本はトルコなどの通貨脆弱国とは異なり、世界最大の3.1 兆ドルの対外純資国、米国国債を1.2 兆ドル保有する世界最大の対米資産保有国である。この巨額の海外資産がもたらす為替益は甚大、官民合わせれば100 兆円は優に上回るだろう。投機者も日本のこの懐の深さを知っている。円売り投機は終盤であるかもしれない。円安が日本の力強い回復を準備しつつある。その事実を図表6、7、8でご確認されたい。

図表6: 力強い回復、新たな成長軌道が見えた日本経済(1984年=100)/図表7: 懲罰的円高から恩典的円安へ 、円安が日本大復活の原動力

図表8:円高下コスト削減のしわ寄せを受けた賃金、今円安下で大幅上昇へ

(了)

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