2024年12月22日( 日 )

AI時代の到来でもアップルは大丈夫か(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

自社株買いが株価上昇を牽引

 アップルの株価は過去39年間、年平均20%ほど上昇している。同じ期間中にS&P500は年平均8.7%上昇しているので、アップルは市場平均の2倍程度上昇したことになる。17年から19年までアップルの売上高と純利益は約5%伸長した。同期間の米GDPの成長率は4%でGDPより1%高くなっている。

 なぜアップルの株価が市場平均より2倍も成長したのかを理解するためには、自社株買いを理解する必要がある。自社株買いとは、自社の株を市場から買い戻すことを指す。自社株買いをする目的は、株主への利益還元や株価上昇につながるからである。自社株買いをすると、市場に出回る株式数が減少して1株あたりの純利益が増加し、その結果、1株あたりの利益配分が増えることになる。それだけでなく、PER(株価収益率)やROE(自己資本利益率)が改善され、結果的に株価上昇をもたらす。

 アップルは自社株買いと償却によって株価を上昇させてきた。アップルは毎年600億~800億ドルを自社株買いに使っていた。12年から22年まで10年間、自社株買いの金額は5,720億ドルに上る。相当な金額を自社株買いに使って株主に還元しているし、株価上昇に貢献している。今年も1,100億ドルという過去最高の自社株買いを発表し、株価は6%上昇した。

課題山積の前途は

iPhoneとAI イメージ    iPhoneの中国での販売台数は、今年最初の6週間に前年同期比で24%減少し、アップルの業績に影響している。 iPhoneの23年9月期第4四半期の売上高は438億500万ドルで、アップル全体売上高の50%程度を占める稼ぎ頭である。iPhoneの売上高を伸ばせないことが、アップル最大の課題であるといえるだろう。

 中国でアップルの売上高が大幅に減少した原因の1つは、「メイト60」シリーズで旋風を巻き起こしているファーウェイが原因である。米中衝突のなか、米国が中国の半導体産業を強くけん制したことで中国は半導体の輸入ができず、中国企業はスマホ市場で競争力を失うことになると予想していたが、中国は独自チップを開発して反撃の狼煙を上げ、米国を驚かせている。その結果、中国では同国製のスマホが販売量を伸ばし、アップルはシェアを大幅に落とすこととなった。これは一時的な現象ではないので、アップルにとっては頭が痛い。

 それに加えて、最大のライバルであるサムスンは、AI機能を搭載したスマホを世界で初めて発売し、アップルの革新性が色褪せる状況となった。それに、アップルは今年に入って悪材料が同時に発生している。期待をしていた高価の仮想現実ヘッドセットである「ビジョンプロ」の販売が芳しくない。また、数年間開発をしてきたアップルカーも開発中止を発表した。さらにアメリカ司法省は、アップルがiPhoneをめぐって、他社の製品との間でアプリ機能を制限するなどして市場で違法に独占的な地位を維持し、反トラスト法に違反したとしてニュージャージー州の連邦地方裁判所にアップルを提訴した。司法省は具体例として、iPhoneと他社の製品との間ではメッセージアプリなどの機能が制限され、こうしたことがスマートフォン市場への他社の参入を妨げ、結果的に消費者の不利益につながったと指摘している。ヨーロッパでも市場の支配力を乱用したということで、アップルはヨーロッパの規制当局から調査を受けることになった。

 このような一連の流れにアップルは今後どう対応するのか、世界の注目が集まっている。アップルは今回もAIで技術革新を起こし、第2の跳躍をするのか、今後の推移に関心が集まっている。

(了)

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