『脊振の自然に魅せられて』「新緑のブナ林を歩く」(後)
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ここから金山山頂までは3分の距離である。登山道には比較的大きなブナの幹がたくさん自生している。
根本から枝分かれをし、仁王像と思えるほど見事なかたちのブナが1本ある。10年近く前、このブナが冬の強い季節風を受け、霧氷がエビの尻尾のようになった光景を見ることができた。標高の高い九重連山などで見ることができるが、脊振山系では初めて見る光景だった。
新緑のブナ林の縦走路を歩き始めるとウグイスの鳴き声が聞こえてきた。鳴き声は静かなブナ林に響き、しばらく続いていた。筆者は新緑のなかのウグイスの鳴き声を独り占めにしていた。
筆者にとって生命を感じる時でもある。新緑のなかで空気がうまい。樹木から芳香物質のフィトンチッドが発散され、副交感神経を刺激し、精神安定、ストレス解消の効果があるとされている。筆者は風邪を引いたときに山を歩くと風邪が治るが、おそらくこの効果だろう。
巨木のブナ林に近づいてきた。右手に脊振の自然を愛する会で取り付けた小型道標が見える。ここには大きな岩があり、ブナ林のなかに6月には白い花をたくさんつけるタンナサワフタギの灌木がある。この目印として付けたものである。
笹藪のなかに入り、タンナサワフタギの蕾の付き具合を確認する。例年通り蕾を付けていた。6月には花をたくさん咲かせるだろう。
佐賀県がリニューアルで取り付けたブナ林の表示板まで歩いた。この一体に脊振山系で最も大きなブナ林があり、「ブナが美しい場所」と表示されている。
一息ついて、金山の肩を回り込むエスケープルートを下った。小さな沢が登山道と並行して流れている。沢沿いに灌木のヤブデマリの純白の花がわずかに残っていた。幹回り20㎝、高さ3mほどのヤブデマリの灌木である。手を伸ばして届く高さに太陽の光を通して純白に花びらが輝いていた。ヤブデマリの花はいつ見ても愛らしい。
いつもは金山の登山道に回り込む山道へ入るのだが、笹藪に覆われた登山道の分岐を見落としまっすぐ別の登山道を下っているのに気がついた。たまには林道へ直進する山道を下るのもいいかと、そのまままっすぐ下っていった。
歩くこと30分で林道へ出た。スマホの地図アプリで確認すると車を停めた場所まで曲がりくねった林道歩きが20分と表示されていた。「よし歩くか」と気合が入る。舗装された広域林道の法面にはアザミの花がたくさん咲いていた。このアザミの花を求めてクロアゲハが乱舞していた。また、クロアゲハに混じってアサギマダラとジャコウアゲハが一匹ずつ舞っていた。
昆虫好きの筆者にとって蝶たちとの出会いはご褒美だった。クロアゲハの1匹は羽の一部がなくなっていた。それでもアザミの蜜を求めて花から花へと舞っていた。
蝶たちをカメラに納め、林道を歩き、やっと車を停めた場所に辿り着いた。地図アプリ・ヤマップのデータを見ると、歩いた時間は3時間56分、距離は6.2kmであった。6月8日(土)に開催した脊振サミット発表資料作成の山歩きでもあった。
(了)
脊振の自然を愛する会
代表 池田友行関連キーワード
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