株主総会風雲録(2)京成電鉄の変 「オリエンタルランド株」をめぐりファンドと大乱闘(前)
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「錦の御旗」とは、鎌倉時代以降、朝敵を征討する際に官軍が用いた旗印である。転じて、自己主張を権威づけるものとして掲げる名分に使われる。株主総会を書き入れ時とするアクティビスト(物言う株主)が掲げる「錦の御旗」の決まり文句は「株主還元」。今回のテーマは、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドの株をめぐるバトルだ。
新エリア
「ファンタジースプリングス」がオープン東京ディズニーランド(TDL)が生まれたのは1983年。2001年には、海をテーマにした世界で唯一のディズニーパーク、東京ディズニーシー(TDS)が誕生。そして、今年6月6日、TDSの新エリア「ファンタジースプリングス」がオープン。ディズニー映画「アナと雪の女王」「塔の上のラプンツェル」「ピーター・パン」の3つの物語がテーマで、エリア内のホテル「東京ディズニーシー・ファンタジースプリングスホテル」も開業した。
これら東京ディズニーリゾート(TDR)を運営するのがオリエンタルランド(千葉県浦安市、東証プライム、以下、OLC)。新エリアは19年5月の工事着手から5年の月日と総投資額約3,200億円をかけた。TDRのエリア拡張としては過去最大のプロジェクト。エリア面積は来園者が訪れるパークの部分だけで約10万平方mと、TDSの約6分の1を占める。
オリエンタルランド、
2期連続の最高益更新の見込みコロナ禍を抜け出したOLCの業績は好調だ。
25年3月期の連結決算の見通しは、売上高は前期比11%増の6,847億円、本業の儲けを示す営業利益は3%増の1,700億円、純利益は微増の1,205億円になる見込み。2期連続で過去最高益を更新する。
増収増益の要因は6月のTDSの新エリア開業やインバウンド(訪日観光客)の増加により客単価と入園者数の伸びだ。新エリア「ファンタジースプリングス」の増収効果は通年で750億円を見込む。TDR全体の年間入園者数は前期比5%増の2,900万人を予想。うちインバウンドは約400万人、全体に占める割合は約14%と予測している。
アクティビストが京成電鉄に
OLC株の一部売却を株主に提案絶好調のOLCの利益をいかにして取り込むか。アクティビストは舌なめずりして待ち構えている。
彼らの手法は「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」。大きなものを手に入れようとするとき、直接そのものを狙うより、その周囲にあるものを狙う。OLCの利益を取り込むために、OLC本体を攻めるのではなく、OLCの大株主を締め上げて吐き出させるという作戦だ。
英投資ファンドのパリサー・キャピタルは、千葉、東京東部を地盤とする京成電鉄をターゲットにした。パリサーは株式の1.6%を保有する京成電鉄に対して、OLC株の一部売却を求める株主提案を出した。
パリサーの創業者で最高投資責任者であるジェームズ・スミス氏は、エリオット・マネジメントの出身。米投資ファンドであるエリオットは「武闘派」のアクティビストとして知られる。
一方、京成電鉄は明治時代の1909年に、成田山新勝寺の参拝目的に設立された。観光客が映画「フーテンの寅さん」の聖地めぐりで訪れるときの電車の乗降駅が、京成電鉄葛飾柴又駅だ。
世界最強「武闘派」
アクティビストは三井不動産も狙う「武闘派」アクティビストが狙っているのは京成電鉄だけではない。
米投資ファンドのエリオット・マネジメントは株式の2%以上を保有している三井不動産に、OLCの株式5,000億円相当の売却と、1兆円の自社株を要求している。決め台詞は「株主還元」だ。
エリオットといえば、著名投資家のポール・シンガー氏が77年に設立し、投資先の企業や国に訴訟も辞さない強硬姿勢で臨む「最恐」投資家として知られる。
エリオット出身のスミス氏が率いるパリサーは京成電鉄を標的にし、エリオットは三井不動産をターゲットにした。世界最強の「武闘派」アクティビストが揃って、OLCの株式をカードに勝負に出た。
京成電鉄も三井不動産もOLCの大株主であるからだ。
(つづく)
【森村和男】
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