2024年11月23日( 土 )

ロシアが進める極東の経済開発計画:領土問題の解決にも効果あり!

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、6月21日付の記事を紹介する。

 ロシアのプーチン大統領は北朝鮮とベトナムを訪問する直前の6月18日、「21世紀の極東開発計画」を大々的に発表しました。

 日本では全く報じられませんでしたが、そこには“終身皇帝”を目指すプーチン大統領にとって極東ロシアの占める重要性が余すところなく盛り込まれていたのです。

 プーチン大統領曰く「極東ロシアでは電力消費が1.8倍に、物資の輸送量が1.2倍に増加している。金の産出量は2倍に、石炭の産出量は3倍に拡大中だ。あらゆる分野で極東はロシアの未来を支える潜在力に満ちている」。

 実は、北朝鮮を訪問する直前、プーチン大統領は極東方面を視察しました。なかでもプーチン大統領が力を入れているのが造船業に他なりません。

 オホーツク海、日本海、そして太平洋にビジネスチャンスを拡大しようと目論んでいることは間違いないでしょう。

 ロシア造船会社(USC)の協力をテコに、プーチン大統領は極東方面に専門家を送り込み、新たな市場開発にまい進しようとしています。

 日本の造船業界にとってもチャンス到来となり得る話です。

 最近の中国や北朝鮮への訪問に際しても、習近平国家主席や金正恩総書記との間では極東地方の総合開発が大きなテーマになっていました。

 プーチン大統領の言葉を借りれば「ロシアの若者は極東方面への関心を高めており、移住を希望するケースが急拡大している」とのこと。

 これまでロシアの産業や経済活動はヨーロッパ正面に集中していました。

 しかし、ウクライナ戦争の影響で、ヨーロッパ諸国はロシアとの関係を見直す傾向にあります。

 そのため、ロシアは極東開発に新たな活路を見出そうとしているようです。

 確かに、この地域には未開発の天然資源が大量に眠っています。

国後島 イメージ    また、日本の固有の領土に他ならない北方領土には観光資源が、その周辺海域には漁業資源や海底資源も豊富であり、アメリカですら触手を伸ばそうと手ぐすねを引いている状況です。

 日本はアメリカの表向きの対ロ経済制裁に同調し、ロシアとの経済関係をほぼご破算にしてしまいました。

 ところが、当のアメリカは水面下でロシアとの経済通商関係に向け強かに布石を打ち、近未来の米ロ経済協力の可能性を探っているのです。

 その点、日本はロシアの極東開発計画に力を貸すことで、念願の北方領土問題にも打開の道筋が得られると思われます。

 そもそも、「もしトラ」「ほぼトラ」と呼ばれるトランプ前大統領は、「俺に任せれば、北方領土問題は一夜にして解決できる。俺はプーチンとはツーカーの間柄だ。北方領土やシベリア、極東方面の資源開発やリゾート開発はアメリカとロシアが協力する絶好の機会になるだろう。日本が望めば、いつでも歓迎する」という「ビジネス最優先」の路線を誇示しているほどです。

 もともと、不動産王と呼ばれたトランプ氏ですから、北方領土を国際的な観光リゾートに大変身させるという構想を以前から温めていました。

 要は、アメリカは表向きロシア批判を繰り返していますが、儲かる可能性さえあれば、いつでもロシアと手を握ることがあり得ると言っても過言ではないのです。

 そうしたアメリカの柔軟性というか自己中ぶりに対して、日本の政界も経済界も頑なな姿勢に凝り固まっているのは如何なものでしょうか。

 いくら中国や北朝鮮が土地や労働者を提供しても、ロシアが自国内の資源を有効活用するには限界があるというもの。

 例えば、ロシアは中国や北朝鮮の協力を得て、国後島や択捉島に観光客の受け入れ施設や魚介類の加工工場を建設しましたが、全くと言っていいほど上手く行っていません。

 これでは「宝の持ち腐れ」です。

 そうした問題はプーチン大統領も認識しています。

 ですから、本音の部分では、日本の協力が欲しいと「喉から手が出る」思いに駆られているに違いありません。

 日本とすれば、プーチン大統領の「極東開発計画」を利用しようと目論んでいるトランプ前大統領やアメリカの投資ファンドを上手く抱き込み、国際的なロシア極東開発プロジェクトを推進すべきではないでしょうか。


著者:浜田和幸
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